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2章 19話 おやすみなさい

「ファルネ様!!ファルネ様!!!」


 クレアのところから神殿に帰ったら私はまっ先にファルネ様の所に向かったの。

 パタパタパタ走っていけば、いつもなら私の部屋で待っててくれるファルネ様がいない。


 あれ?あれ?おかしいな?


 どこかなどこかな。ファルネ様どこかな?

 私のお部屋は広いからいっぱいいっぱい走り回って探すけどファルネ様がいない。

 ラーズ様とお仕事でもしてるのかな?


「おーいファルネ戻ったぞ」


 カイルさんも探してくれて、ガチャりとファルネ様のお部屋のドアをあけてみる。


「ああ、寝てるのか」


 カイルさんが呟いたので私もお部屋の中をのぞき込めば、椅子に座ったまま窓辺で寄りかかってスヤスヤと寝息をたてていた。

 久しぶりに見るファルネ様の寝顔。

 まつげが長くてとってもとっても綺麗なの。

 青い前髪が顔にかかって天使様みたい。


「おいお……」


 起こそうとしたカイルさんにしーっとして私は隣にちょこんと座るんだ。


「……起こさなくていいのですか?」


 カイルさんが聞くので私はコクコク頷いた。

 私はファルネ様のお部屋にあったお椅子をもってきて隣にちょこんと座れば、カイルさんは一礼してでていった。

 私はファルネ様の前に座って足をバタバタさせながらファルネ様の寝顔を見るの。

 なんだかこうしてるとね。

 昔を思い出すの。

 ファルネ様とまだ二人にいたときの事。


 まだ私もベッドの上から動けなくてずーっとベッドにいたときの頃。


 お仕事から帰ってきてご飯を作ってくれて。

 ふーふーしてくれて私にあーんしてくれた。

 ご飯を食べ終わると歯をぴかぴかしてくれて。

 お水を飲ませてくれたんだ。


 それで身体を拭いてくれて絵本を読んでくれるんだけど、時々先にファルネ様が寝ちゃうの。

 椅子に座ったまま絵本を手にスースーねちゃうんだ。


 あーあーあー。


 ってファルネ様に声をかけるんだけど、起きる時と起きない時があって。

 今思えばきっと仕事と私のお世話で疲れていたんだと思う。

 私は綺麗なファルネ様の寝顔を見ながら、心の中でいっぱいいっぱい話かけたんだ。


 あの時はファルネ様とおしゃべりできたらどんなに幸せだろうってずっと思ってた。


 大好き大好きって伝えて、あと「ありがとう」っていっぱい言いたかった。

 今はね言えるんだよ。お口で「大好き」も「ありがとう」も言えるんだ。


 だから伝えなくっちゃ。

 言いたい事が言葉にだせるって素敵。

 言葉が話せるって魔法みたい。


 ファルネ様が起きたらいっぱいいっぱい言うんだ。

 大好き大好きありがとうって。

 仕事と私のお世話で大変だったのに、それでもいつも私の事を優先してくれて。

 あの時はよくわからなかったけれど、今ならファルネ様がどんなに大変だったかわかるから。

 いっぱい、いっぱい恩返ししなきゃ。

 ファルネ様が自慢できるような立派な聖女になるからね。


 私は自分の中の手にまだファルネ様のクッキーがあることに気付く。

 舞踏会でクッキーも渡したら喜んでくれるかな?


 ファルネ様が寝ているうちに隠さなきゃ。

 自分のお部屋の引き出しにクッキーを隠してファルネ様の隣に座る。


 私はファルネ様の寝顔を見ながら幸せな気分になって微笑んだ。


 おやすみなさいファルネ様。


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