2章 18話 自分の意志
「……はぁ」
ファルネは自室で本を閉じ、ため息をついた。
最近リーゼはカイルを連れて出かける事がおおく、ファルネは自室で待機している。
リーゼの隣に用意された自室は殺風景で本がいくつか置いてあるだけだ。
リーゼが起きてからずっと付き添っているため自室は寝るためにしか使ってなかったため私物がほとんどない。
ラーズがなぜあのような事を言ったのか。
心当たりがないわけではなかった。
500年以上前。神官と聖女の恋愛のもつれから神官が聖女に危害を加えてしまった事件があった。
それ故神官と聖女の恋愛は禁じられている。
聖女は本来聖樹から愛されている存在。
聖女が恋愛をすることを禁じられている地域もあるほどだ。
今回ファルネとリーゼが許されているのは、カルディアナの意思があるからにすぎない。
リーゼの記憶を覗いてしまってからというもの、必要以上にリーゼに肩入れしてしまっている自分がいるのは自覚している。
あれだけ好きだという気持ちを伝えられて。
どんなときも自分をまっすぐ信じてくれて。
いつも好きだと純粋に想ってくれるリーゼを愛おしく思うなというのは無理な話で。
一度彼女を裏切ってしまったため、もう二度と彼女を裏切ることはしたくはないと心から願う。
けれど――。
リーゼがファルネを慕っているのは虐待されていたがゆえに、初めて優しくしてくれた人間がファルネだったからにすぎない。
これからリーゼの世界は広がっていくだろう。
自分しか見てなかった彼女が、世界を経験し、触れ合い、人のぬくもりを知ることになる。
その時、ファルネが彼女の一番でいられるかはわからない。
時には――彼女の気持ちが離れてしまうこともあるかもしれない。
だからこそ、ラーズは一歩引けと自分を諭したのだろう。
今のままでは、リーゼがファルネに依存しているのか、それともファルネがリーゼに依存しているのかわからない状態だ。
リーゼの気持ちがファルネ以外にむいてしまった時を危惧されているのだろう。
一人になっても、目が自然にリーゼの姿を探してしまう自分にファルネは苦笑いを浮かべた。
離れている間のリーゼが心配で仕方ない。
精神の世界で。彼女を愛するという誓いを破る気はない。
けれど、その愛情に溺れて依存してしまってはリーゼを守れない。
彼女がどんな道を歩もうと、愛せる強さを。
何があっても見守れる、諭せる冷静さを。
愛情に溺れて、冷静さを失えば彼女を守る事は出来ない。
ファルネは久しぶりに手に入れた時間に、もう一度ため息をつく。
自分の夢は、カルディアナの実を芽吹かせ、荒野すら緑地かする事だった。
けれどカルディアナの話ではあの実は聖女と聖樹が力を行使するもので芽吹いたところで大地を緑地化するのは無理らしい。
それ故――現在のファルネには夢らしい夢も、目標らしい目標もないのだ。
だからこそリーゼに依存してしまっていると、ラーズに受け取られたのかもしれない。
自分をもたねばいけませんね。
ファルネは自室から見える外を眺め、ポツリと呟くのだった。








