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2章 17話 クッキー

 こんがりと、とってもいい匂い。

 クッキーを焼いてしばらくしてから漂ってくる匂いは、香ばしくて。

 私はクレアのお店のオーブンの前でずっと待ってるの。

 あれから毎日クッキーの作り方を練習した。今日はね、はじめて最初から一人で作ったんだよ。

 クレアが一つ一つ全部指示してくれて、私が全部つくったの。

 粉をこねこねするところから、棒でのびのびしたり。

 びよーんってしたり折り畳んだり。クレアに教わった通りつくったんだ。

 伸ばしたあと型抜きしていまオーブンで焼いてるんだよ!


 ラーズ様に頼んだらクレアのお家にいくのはカイルさんともう一人別の神官さんが付いてきてくれることになったの。

 カイルさんはサーシャさんとおしゃべり。

 もう一人の神官さんの名前はイヴァンさん。赤い髪を後ろで束ねてる背の高い男の人。

 全然喋らないから何を考えてるかわからないけれど、でもすっごくオーラが青いからきっといい人。

 火を使うとき以外もずーっと私の側にいるから、クレアにちょっと話しにくいって言われちゃった。

 でもラーズ様は絶対側に置いてくださいって言ってたから、ずっと一緒なんだ。 

 だから今はクレアと私とイヴァンさんで料理!

 型をとってオーブンにセットしてオーブンの前でずっと待ってるといい匂い。

 クレアは厨房のお片付けだって。

 私はまだかな、まだかなってオーブンの前で焦げないように見張り番。

 出来たかな?美味しく出来たかな?


 上手にできてるといいなファルネ様のお顔のクッキー。

 リベルみたいなクマのクッキーも狼の形のクッキーもあるの。

 リベルとシリルにも届けてもらわなくちゃ。

 

「オーブンの側は危ないので近寄らないでください」


 ウロウロとオーブンの側にいけばイヴァンさんにひょいっと持ち上げられて、椅子に戻される。


 イヴァンさんはファルネ様より過保護。

 ちょっと危ないとすぐ私を椅子に戻すんだよ。

 熱いオーブンには触らないのに。

 

「そろそろ焼けたかな?」


 クレアがオーブンからクッキーを取り出せばこんがり膨らんでいい感じ。


「できた!できた!できた!!」


 クレアがもつクッキーの周りをくるくる回っていれば、「危ないです」とやっぱり持ち上げられちゃう。


「まだ待ってね。少し冷まさないと。

 冷ましたら可愛くラッピングしようね」


「する!するよ!!!」


 私はウンウン頷いた。


「いつ冷める!いつ冷める!?」


「うーん。もうちょっとかかるかな。

 それまでファルネ様達のラッピング決めようか?」


「うん!決める決める!決める!」


 言ってクレアが取り出してくれた可愛い包とリボンに私は目を輝かせるのだった。



 ■□■



「出来たよ!出来たよ!」


 可愛くラッピングされたクッキーに私は目を輝かせた。

 

 あれからクッキーの味見をしたの。

 中にカナッツをちょっと入れたから噛むと甘い味とカナッツの味がひろがって美味しかった。

 それにサクサク。これならファルネ様達に渡しても大丈夫!


 ファルネ様のクッキーは青い袋に緑のリボン。

 ファルネ様の綺麗な綺麗な髪の色と瞳の色と一緒なの。

 

 ラーズ様は紫の袋に茶色のリボン、カイルさんは黄色と青ラッピング。

 シリルは白で銀色のリボン、リベルはね、可愛いモノが好きでピンクのものが大好きだから袋もリボンもピンクのラッピングなんだ。イヴァンさんも黒と赤のラッピング。

 私がさっそくはいってカイルさんとイヴァンさんに渡せば、イヴァンさんが滅相もないって受け取ってくれないの。

 

 なんでかな?なんでかな?嫌だったのかな?私の事嫌い?

 私がしょぼんとすれば


「イヴァン」ってカイルさんが睨んでイヴァンさんがはっとして


「あ、ありがたく頂戴いたします」

 って、受け取って。カイルさんも「ありがとうございます」って微笑んで受け取ってくれるんだ。

 カイルさんが言うにはイヴァンさんは恥ずかしくてもらえなかったんだって。

 私の事が嫌いなわけじゃなくて、男の人は女の人からお菓子を貰うのを恥ずかしいって思う人もいるんだって丁寧に教えてくれた。

 私は今もそういうのがよくわからない。人間ってやっぱり難しいね。

 早く私も「空気」がわかるようにならないと。


「ファルネ様は喜ぶかな?」


「あいつの事だから感動して喜びますよ」


 ってカイルさんが言ってくれて、私は嬉しくなって顔がぽっぽってなるの。

 嬉しいな嬉しいな。


「はやく帰って渡さなきゃ!!」


「あれ、リーゼちゃんは豊穣祭の舞踏会でないの?」


「舞踏会?」


「そう。貴族や商家の子は10歳から18歳の子が参加するんだよ。

 私も一応貴族の子供扱いだから、一度くらいは参加しなきゃいけなくて。

 今年で最後だから参加しなきゃ。

 お菓子もその時好きな人に渡す予定なの。

 舞踏会の日に渡すと恋が実るって言われてるんだ」


「何をするの?」


「リーゼちゃん行った事ないの?

 皆で踊ったり、ピエロさんが歌ったり踊ったりしてたりかな?」


「皆で踊るの?」


「そう。男女のペアで踊るの。

 その日に会場でアルベルト様に会う約束をしてるの。

 そこでクッキーを渡して想いを伝えるつもり」


 踊るの?踊るの?パレードみたいに?

 絵本で王子様とお姫様が踊るシーンみたいなのかな?

 すごいすごい。私もそれ見てみたい。


 それにイベントの時の告白って素敵!

 絵本の中の王子様とお姫様みたい!


「行く!!私もそれ行く!!」


 私が言えばクレアが嬉しそうに微笑んで。


「よかった一人でちょっと心細かったんだ」


 と笑を浮かべてくれた。


 楽しみ!楽しみ!私もそれに参加するんだ!


 私がにっこりと微笑んでカイルさんとイヴァンさんを見れば……何故か頭を抱えてた。

 あれ?何かいけないことだったのかな?


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