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2章 15話 大好き!

「ファルネ様大好き!!!」


 ラーズ様が帰った後。

 ラーズ様と入れ違いに戻ってきたファルネ様に私は抱きついた。

 よかったよかったよかった。

 やっぱり大好きって言いたかった。


「ええ、私も大好きですよ」


 言ってファルネ様が頭を撫でてくれるのが嬉しくて、私はそのまま抱きつく。

 やっぱり大好きって言えるのは嬉しい。

 だって、大好きって言うとファルネ様も大好きって返してくれる。

 それが嬉しくてやっぱり大好き大好きって言葉にして言うの。

 前はね。シリルが思った事をファルネ様に伝わるようにしてくれてたから、言わなくても伝わったの。

 でもね今は思ってるだけじゃ伝わらない。

 私は知ってるんだ。

 しゃべれなかった時は言いたいことが伝わらなかったから。


 ちゃんと口にだして言わなきゃダメって。


 それにね。叔母さんたちに虐められていたときは喋ると五月蝿いってぶたれたから全然しゃべれなかったの。

 いっぱいおしゃべりしたくても、声を出すと怒られたから、いつからか喋らなくなっちゃった。

 いつも頭の中にいるパパとママとおしゃべりしてたけど、パパとママもいつからか返事をしてくれなくなっちゃって。

 私はずーっとご飯とお風呂とふかふかのベッドの夢を見てた。

 夢の中のベッドはフワフワだったけど、今のベッドはもっともっとフワフワ。

 ぼすんって飛び込むとぼふんってなるんだよ!!

 この神殿に暮らすようになって最初の日は嬉しくて、リベルとよく遊んでたの。

 リベルもヌイグルミくらいの大きさだから二人でぽんぽんしてたら綺麗な鳥の羽がでてきちゃって、ラーズ様にめって注意されちゃった。


 ラーズ様にめってされた時ちょっと嬉しかったんだ。


 パパにも昔ベッドの上で遊んでて怒られてたのを思い出したの。

 ちょっとだけラーズ様とパパが重なって、パパの輪郭を思い出して。


「リーゼ?」


 急に昔の事を思い出してちょっと泣きそうになって、ファルネ様が私の名を呼んだ。


「ないよ!ないよ!何でもないよ!」


 私はそう言ってファルネ様にぎゅーーーとする。


 最近全然関係ないのに急に昔を思い出して泣きそうになる事が多くなっちゃった。

 何でだろう。

 前はなんでも幸せで嬉しくてワクワクしたのに。

 最近ね嬉しい事があると、何であの時は辛かったんだろうって思うことの方が多くなっちゃったの。


 今が幸せすぎて。幸せが当たり前になっちゃったからかな。


 毎日がとっても幸せで。

 ファルネ様に好きなだけぎゅーーと出来て、ファルネ様も優しくて。

 お顔を見上げれば、ファルネ様が微笑んで背中を撫で撫でしてくれる。

 それだけで幸せなはずなのに。

 だから辛かった時の事は思い出しちゃだめ。

 ずーっとゴツゴツのお部屋に閉じ込められていたときは出来たはずだのもの。

 誰にもいじめられない時間は幸せな事をずっとずっと考えてた。

 だから今もそうしよう。


 泣いたらファルネ様を困らせちゃうから。

 ニコニコしてないとママとの約束を破っちゃうから。


 胸に湧き上がってくるモヤモヤには蓋をするの。

 出てきちゃダメって。


 出てきそうになったらいっぱいっぱい重りをのせて出てこないようにしておかなきゃ。

 

「大好き大好きファルネ様」


「私もですよ。リーゼ。大好きです」


 耳元で囁いてくれる言葉が嬉しくて私はにっこり微笑むのだった。



 ■□■


「リーゼちゃんは豊穣際のお菓子は誰に渡すの?」


 クレアのお家に遊びにいったら、クレアに聞かれたの。

 ファルネ様は少し離れた場所でサーシャさんとお茶を飲んでいる。


「お菓子?」


 私が不思議に思って聞けば。


「女の子はね。豊穣祭の期間中、好きな人に手作りお菓子をプレゼントするのが慣わしなの」


「そうなの!じゃあ私もファルネ様にあげる!!私も作りたい!」


「じゃあ、少し練習しないとね。

 まだ日数あるから」


 うんうん。豊穣祭は確か一ケ月間だもんね!まだ日にちは大丈夫!


「うんうん。作るよ!練習する!!」


「了解。でもこの事はファルネ様には内緒にしようね。

 その日に驚かせなきゃ」


「するよ!するよ!内緒にする!!」


「……あ、でも火を使うときはファルネ様に声をかけないといけないって言われてたかも」


 クレアが思い出したのかアハハと苦笑いを浮かべた。

 そっか、火を使うときはなにかあるといけないからファルネ様が側で見てるって言ってた!

 でもそれじゃあ、内緒にならない。

 美味しい美味しいお菓子を作ってファルネ様を驚かせたいのに。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。


 あ、そうだ!

 ラーズ様に頼めばいいんだ!


「クレア!いいこと思いついた!」


「うん?」


 私はクレアにニッコリ微笑むのだった。


■□■


「明日から街にでるのはカイルとですか?」


 オヤツを一緒に食べに来たラーズ様に私は相談した。

 そうなの!ファルネ様にクレアとお菓子を作ってるのをばれちゃうとダメだからカイルさんと行くの!


 私が一生懸命うんうん頷けば、ラーズ様はふむとお茶を飲む手をとめ。


「わかりました。明日からはカイルをつけましょう。

 護衛の方は引き続き、つけさせていただきます」


 言ってニッコリと微笑んでくれる。


「ありがとう!ラーズ様!」


 私は嬉しくてニコニコ微笑んだ。

 クレアのお店で売る分のパン作りが終わったらお菓子の作り方を教えてもらうんだ。

 まだ熊さんケーキは無理だから美味しい美味しいクッキーの作り方を教えてくれるって言ってた。

 楽しみだな楽しみだな楽しみだな。

 シリルとリベルの分も作るんだ!

 もちろんラーズ様やカイルさんの分も作るよ!

 でも一番作りたいのはファルネ様のお顔のクッキー。

 クレアが型を作ってくれるんだって。


 ファルネ様喜んでくれるかな。美味しいって言ってくれるかな?

 

「リーゼ様」


「はい!」


「お茶に砂糖をいれすぎです」


「あああ!!」


 ファルネ様が美味しい美味しいって食べてくれる姿を想像してたらいつのまにか砂糖を一杯お茶にいれてた。


 お茶が砂糖でコップから溢れだして受け皿の方に溢れてる。

 どうしようどうしよう。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


 私が慌ててハンカチでふこうとすれば


「かまいませんよ。新しいのをお持ちしますからおまちください」


 言ってラーズ様がお茶がこぼれないように器用にもっていってくれる。


 いいな。私もあれできるようになりたい。

 あとでこっそり練習しようっと!


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