2章 9話(ファルネ視点)
「私の事……ですか?」
朝食後、軽く朝の散歩を終えたところで、わくわくした感じで聞いてくるリーゼにファルネは戸惑いの声をあげた。
「うんうん!サーシャさんとお話しているファルネ様のお話を聞いてて気づいたの。
私、ファルネ様の事詳しく知らない。いつも私がしゃべりたい事をしゃべっちゃってる!
この前ファルネ様との授業で習ったよ!ちゃんと人の話を聞きましょうって!」
言ってニコニコ笑うリーゼに、ファルネは微笑んだ。
前はおしゃべり出来るのが嬉しくて、伝える事だけに集中していたリーゼが人の話を聞きたいと言い出したのは成長の証でもある。
「人の話を聞きましょう」の意味を少しだけ勘違いしてはいるが……それでも成長は嬉しくあり、微笑ましくもある。
「そうですね。一体何から話したらいいものか」
言って、リーゼをベンチに座るようにエスコートして、その隣にファルネは座る。
自分の事を自分から話せというのは難しくも感じるが、リーゼが自分から興味をもって聞いてきたのだから、ファルネも真剣に答えるべきだろう。
「私が生まれたのはこの大陸ではありません。
授業でやったことを覚えていますか?この世界には大陸が5つあります」
ファルネが言えばリーゼがうんうん頷いて。
「覚えてる!覚えてるよ!私が住んでいる大陸がランバウディア大陸!」
「よく覚えていましたね。勉強を頑張っていて偉いですよ」
ファルネが褒めればリーゼは嬉しそうにえへへと微笑んで、その笑顔が幸せそうでファルネは胸をなでおろす。
過酷な過去を持ち、人並みの生活をおくるのもやっとのリーゼを聖女などという重圧のある職務につかせてしまった事を申し訳なく思う。
それでもリーゼはその純粋さで、聖女であることを受け入れて、勉強を頑張っていた。
ファルネはリーゼの頭をなでながら
「私はその中のトルネリア大陸にある聖樹タナトスさまの恩恵を受けている王国の都市カタールで生まれました」
と、説明した。
「他の大陸の神官様だったの?」
「タナトス王国とカルディナ王国では宗派が違います。
フォルシャ教を祀っているのはランバウディア大陸のみです。
私はフォルシャ教に入りたくて貴族を捨てこちらの大陸に船で渡ってきました」
「そうなの?そうなの?何か違うの?」
「そうですね。同じ聖樹をまつる宗教ではあるのですが、大陸が違うため考え方もだいぶ違います。聖樹を祭るのは一緒なのですが、フォルシャ教は聖樹様を頂点と祀り考える宗教です。
トルネリア大陸の聖樹は神の御使いであり祀っているのは、聖樹を人間にもたらした神々ですね。
私たちフォルシャ教は聖樹様に祈りを捧げ、トルネリア大陸では神々に祈りを捧げています」
「うーん。同じじゃないの?フォルシャ教でも神様は偉いって習ったよ?」
「はい。神は頂点にいる点は一緒なのですが、崇拝の割合が違うといいましょうか……」
「難しいね。同じなのに」
「そうですね。同じようでかなり考え方は異なります。
それゆえ、対立等しているわけではありませんが、フォルシャ教と良好な関係とも言えません」
「大人のじじょー?」
「ええ、そうです。大人の事情です」
言ってにっこり微笑めば嬉しそうな表情になる。
リーゼは肯定してあげれば、すぐに嬉しそうな顔をして。
それが可愛くもあるし、それだけいままで肯定されることが少なかったという事実に哀れに思ってしまう。。
「ファルネ様はフォルシャ教の方がよかったの?」
「……なんと説明したらいいか。これからは内緒のお話です。
誰にも言わないと約束できますか?」
ファルネが言えばリーゼは顔を真っ赤にして嬉しそうににっこり笑う。
「するよ!!するよ!!!ファルネ様との内緒のお話!!
二人の秘密!!!!」
「はい。二人の秘密です」
言って微笑んで手をとれば、顔を真っ赤にして「二人の秘密だねっ!」と嬉しそうにニコニコとしてその笑顔が可愛らしい。
「本当は神官になる前は神官の仕事に興味もありませんでした」
しーっといたずらっ子的笑みで言えばリーゼがびっくりした顔になって
「ええええ!?そうなの?そうなの??」
と、身を乗り出す。
「はい。私が興味を持っていたのはカルディアナ様の落とす聖樹の種です」
「知ってる!知ってる!ダイやレムやコロンの種!」
「私はあの種を芽吹かせて、聖樹を増やし豊穣の地を増やす事をしたくてこの地に来ました」
「ファルネ様ずっとその研究をしてんたんだものね!
……あれ、でもタナトス様は種を落とさないの?」
「はい。種を落とすのはカルディアナ様のみとなります」
「そうなんだ!よかったよかった!カルディアナ様が種を落としてくれたからファルネ様と会えたんだね!」
「そうですね。カルディアナ様のお導きに感謝いたしましょう」
「うんうん!ありがとう!ありがとうっていっぱい言うの!」
言ってリーゼが祈りのポーズをすればファルネもそれに倣って祈る。
どうかこの少女がこれから何不自由なく幸せに、暮らせていけますように……と。
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