2章 7話 魔法の手
「ありがとうございました。助かりました」
気がついたら。私は男の人を聖女の力で吹き飛ばしていた。
目を廻して転がってる男の人を私服の神殿の人が連れていってる。
殺してはいないみたい。よかった。カルディアナ様に聖女の力を制御する呪文をかけてもらったおかげだね。
私がファルネ様にしがみついていて隠れていたら女の人からお礼を言われちゃう。
ありがとうって私にかな?
知らない人にお礼を言われるのははじめてかもしれない。
ファルネ様の後ろに隠れて見ていれば
「あ、あの?」
私が何も言わなかったからな?不思議そうに女の人が聞いてきた。
「ああ、すみません、人見知りの激しい子でして」
ファルネ様が私の頭を撫で撫でしながら言うの。
ごめんね。ごめんね。はじめての女の人はやっぱり怖い。
この人のオーラは青いけど。
どうしても従姉のシャーラを思い出しちゃう。
「ああ、よかった何か粗相をしてしまったのかと。
魔法が使えるって凄いですね!
魔法なんて初めて見ました!!」
女の人が私に言ってくる。
凄いの?凄いの?リーゼ凄い?
ちょっと嬉しくなって顔が赤くなっちゃうからファルネ様の後ろに隠れる。
はじめてはじめて。神殿の人以外に褒められるのはじめて。
恥ずかしい。恥ずかしい。
「大丈夫ですか?クレア様」
私がファルネ様の後ろに隠れていれば、後ろからまた知らないおばさんがでてくるの。
「あ、サーシャさん。今この人たちに助けていただきました」
クレアがそう言えば、サーシャさんと呼ばれた女の人のオーラが緑色だったのが青色になる。
人間は不思議。認識したとたん色がかわるもの。
「ありがとうございます。宜しければお礼にうちの店でお茶でも。
美味しいケーキもありますよ」
サーシャさんに言われてファルネ様は困ったように微笑んだ。
「どうしますか?無理そうなら断りますが」
耳元で囁いて聞いてくる。
どうしよう。どうしよう。同じくらいの女の子。
もしかしたら人間で初めてのお友達ができるかも?
■□■
「これは……セルティナ産のお茶ですか。珍しいですね」
結局私達はお茶とケーキをご馳走してもらうことになったの。
すごく綺麗で大きなお店。
店員さんも何人かいて商品がいくつも並んでる。
私はファルネ様にぴったりくっついて店内の机と椅子でお茶とケーキをもらってる。
「ええ、東の大陸から仕入れたんですよ。
あまりこちらでは飲めない味でしょう?」
「はい。風味があって美味しいです。昔はよく飲んでいました。懐かしいですね」
「あら、お兄さんもしかして東の大陸の出身なの?」
「ええ。出身はタナトスのカテールですから」
「あら奇遇。私もカテールよ」
と、サーシャさんとファルネ様の会話がはずんでる。
おばさんの名前はサーシャさん。
ファルネ様と同じ大陸の出身地なんだって。
カテールってどこだろう?
よく考えたら、私ファルネ様の事あまりよく知らない。
いつも自分の事ばかりファルネ様に話してる気がする。
うん!今度二人の時はファルネ様の事をいっぱい聞きたい。
私知らないのはちょっと悔しい。
ファルネ様の事いっぱいいっぱい聞くんだ。
ファルネ様とサーシャさんの女の人が会話を私が聞いていると、
「はい。ケーキです。リーゼさんはこっちでも大丈夫?」
クレアがファルネ様と私に別々のケーキをもってきてくれた。
ファルネ様は白いケーキ。私のケーキは可愛い可愛いリベルのお顔みたいな形のケーキ。
凄い!可愛い!可愛い!可愛い!!ケーキが熊さんの形しているよ!!!
「ファルネ様!!凄い凄い!熊さん!ケーキが熊さん!!!」
私がファルネ様に見せれば
「ええ、凄いですね。私も初めて見ました。
こちらで作っているのですか?」
「クレア様が作ったんですよ。この若さでお店の事を任されているんです」
と、サーシャさんが胸をはるの。
「凄いですね。このお店の商品もすべてクレアさんが?」
「いえ、メインはちゃんとした専門のパティシエです。
私は経理の担当です。料理は趣味みたいなもので隅に置かせてもらってます」
「でも凄い凄い!クレア凄い!」
言って私はじっとクレアの手をとって見つめてみる。
絵本で見たの。料理のとっても上手な女の子は妖精さんから魔法をもらってたんだって。クレアも何か魔法がかかってるのかと思ったけど普通の手。ぽわって光ってない。
「り、リーゼさん?」
「クレア凄い!こんな凄い物をつくれるなんてクレアの手は魔法の手?」
私が聞けばクレアの顔が真っ赤になる。
私変な事聞いちゃったかな?
■□■
今日は本当に楽しかった。
あれから私はクレアと仲良くなったの。
ケーキの作り方とかいろいろ教えてもらったの。
見ていて楽しかったんだ。
ファルネ様と凄いね凄いねって見ていて私もクッキーの生地をコネコネさせてもらったんだよ。
また今度遊びに行っていいって言われた。
はじめて。はじめて。はじめての人間のお友達。
「嬉しそうですね」
「うん!初めての人間のお友達!」
クレアに貰ったクッキーを見ながら私は椅子で足をパタパタさせる。
凄いな凄いな。
私が型をとって焼いたクッキー。
こー、「ぽんっ」として「ぺんっ」として「ぽんっ」として型をとったんだよ!
それからオーブンに入れようねってオーブンで焼いてもらったの。
綺麗に焼けてる。食べるのがもったいないくらい。
いつか私も一人で作れるようになるかな?
そしたらファルネ様にリベルにシリルに食べさせてあげるんだ。
神殿の人にも配りたい。
ラーズ様もカイルさんも喜ぶかなぁ。
いつかは熊さんのケーキも作れるといいな。
リベルが凄く喜びそう。
今日はね、いっぱいいろいろな事があったよ。
パレードを見たりお友達が出来たり。
「ファルネ様。ファルネ様。いつか私もお菓子作れるようになる?」
広場から神殿に帰る馬車の中で。
隣に座ったファルネ様に聞いてみる。
私もいつか一人で作れるようになりたいな。
「ええ、リーゼが作りたいなら厨房も用意しましょう。
今度一緒に作りましょう」
「本当!?本当!?そしたらリベルも呼びたいな!
リベルお料理大好きだから!お菓子つくれるって知ったら喜ぶよ!
ありがとうファルネ様!!」
大好き大好きと抱きつけばファルネ様が受け止めてくれる。
ファルネ様の腕の中はあったかいから大好き。
すごく安心するから大好き。
あとね、私は明日からファルネ様の事をちゃんと聞くんだよ。
サーシャさんと話してるファルネ様とのお話を聞いて気づいたの。
私は大好きなファルネ様の事を全然知らない。
私よりサーシャさんの方が知ってるってちょっとヤダ。
今度いっぱいファルネ様の事教えてね。
大好きなファルネ様。
ポイント&ブクマ&誤字脱字報告ありがとうございました!!多謝!











