2章 3話 豊穣祭
「明日から一ヶ月間。広場で豊穣祭があります」
あれから、季節は巡り。私は私用に用意された神殿の中庭でファルネ様と並んでご飯を食べていた。
ぽかぽかと日差しが気持ちいいから、今日は中庭の椅子に二人で並んでサンドイッチを食べてるの。
私はエルディアの森で過ごした期間よりも神殿での暮らしの方が長くなったんだ。
神殿も大分なれてラーズ様やカイルさん以外の神殿の人とも話せるようになったんだよ。
女の神官さんとも話せるようになって、少し神殿の外も出歩けるようになった頃、ファルネ様が嬉しそうに微笑みながら言うの。
「豊穣祭?」
「はい。一年の豊穣をカルディアナ様に感謝し、祝うお祭りですよ。
街に出店が立ち並び、パレードが連日行われます」
パレード!?
知ってる!私それ知ってるよ!絵本で見たことがあるの!
カルディアナのお祭りは絵本にでてくることが多いんだ。
「私知ってる!!絵本で見た事ある!
ピエロさんがボールを投げながら玉乗りをして街を歩き回るの!
あと象さんも!!可愛いおっきいウサギも!!」
絵本の中のパレードはお花がいっぱい空を舞ってて綺麗ないっぱいのいろんな色の紙が舞ってる。
いつもそのページを開くたび、色とりどりの紙吹雪が散ってて、たくさんの動物がいて、ピエロさんがいてわくわくしたんだ。
「リーゼは物知りですね。その豊穣祭のパレードですよ。
明日から街の広場で執り行われます」
すごいね。絵本の中の世界が、現実であるなんて夢みたい。
見に行きたいな。見に行きたいな。馬車の中からでもいいから見てみたいな。
でも聖女だからダメなのかな?聖女って大変。あまり街にでちゃ行けないんだよ。
聖女は外を出歩いたらダメだから、いつも平民の格好をして変装していくの。
髪も金髪から茶髪にかえるんだ。髪の色は聖女の力で変えられるようにカルディアナ様がしてくれたんだ。
変装すれば連れていってくれるのかな?
私がソワソワしていれば
「行ってみますか?」
と、ニッコリ笑ってくれる。
「いいの?私も行っていい?」
「はい。勿論ですよ。
変装をしてからですが。
無理のない範囲で行ってみましょう」
うんうん!行くよ!ファルネ様と一緒に豊穣祭行きたい。
凄いな。凄いな。絵本の世界を本当に観れるなんて夢みたい。
絵本の中はいつもふわふわキラキラしていて、夢の世界だと思っていたのに。
本当に見ることができるんだ!
嬉しくてほっぺをつねってみる。
「リーゼ?」
「あのね。夢じゃないか つねってみたの!
シリルが教えてくれたんだ!
痛いから夢じゃないよ!」
言って私は微笑んだ。
今はとっても幸せで、大好きな人といつも一緒にいられてご飯も好きなだけ食べられる。
いっぱい寝る事もできて、友達とも遊べる。
お勉強も大好き。
閉じ込められてた時に望んだことが全部叶って。
そして今度は絵本の世界を実際に観れる事になるなんて。
夢なんじゃないかと時々不安になるんだ。
しかも大好きなファルネ様と一緒だよ?
夢みたい。夢みたい。
嬉しいな。嬉しいな。嬉しいな。
私がいつ行くの?って聞けば「明日からならリーゼの好きな日でいいですよ」って言ってくれた。
本当?嬉しいな。本当なら今すぐにでも行きたいけれどぐっと我慢するの。
だってお祭りは明日からだもの。
ワガママは言っちゃ駄目だから。だから明日!!
「じゃあ明日がいい!!」
って言えばファルネ様が「ええ、では明日にしましょうね」ってにっこり微笑んでくれる。
楽しみ楽しみ楽しみ。
「ファルネ様!はやく明日になるように今日はもう寝るね!」
私が元気よく言えば
「リーゼ、まだ朝ですから。
それにお勉強はちゃんとしないとダメですよ?」
と怒られちゃった。
うんうん。するよ、いっぱいする!
ファルネ様のお膝で本を読んでもらうんだ。
でも、楽しみだな。はやく明日にならないかな。
「はやくご飯をたべきって、お勉強して寝なきゃ!」
私がサンドイッチをパクパク食べれば、ファルネ様が
「はやく食べても経過する時間の速度はかわりません。
ゆっくりよく噛んで食べてくださいね」
と、頭をナデナデしてくれる。
そっか!そうだよね。はやく食べても時間はかわらなかった!
ちゃんと噛んで食べないと。
私はウンウンうなずいて、口をなるべくおおきく開かないようにしてサンドイッチを食べる。ちゃんと上品に食事をしないと。
最近は礼儀作法も習い始めたんだ。
立派な聖女になるための修行だってファルネ様が言っていたの。
聖女って覚えなきゃいけない事が多くて大変。
はやく明日になりますよーに。