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1章 4話 天使様

 ウトウトと、目を開けたらまだ部屋は薄暗い。

 まだ夜なのかな?とキョロキョロすればカーテンの隙間から日差しが見えた。

 もしかして寝てたからカーテンを閉めてくれたのかな?

 前だったら寝ていたらお水の中か明るい所に放り出されたのに。

 

 ぼんやりとベッドの中でふわふわしながら私は寝っ転がった。


 よくわからないけれど。

 私は天国みたいな場所にいる。


 ふわふわのベッドで誰も私を起こしにこない。

 冷たい水で起きることも。

 頭をいきなり蹴られる事も。

 寝ないようにと、ずっと立っていろと言われる事もない。


 硬い床で寝ていたから、こんなふわふわの場所で寝られるなんて夢みたい。

 ちょっとふわふわすぎて違和感があるくらい。


 ふわふわふわ。気持ちいいなぁ。

 でもずっと寝てたら怒られちゃうかな?


 起き上がろうとするけれど、身体がうまく動かない。


 何でだろう。

 手を一生懸命あげて見てみれば、痛みはないけれど青痣だらけだ。

 馬車から落とされた時の傷がまだ癒えてないからかな?


 どうしよう。起き上がりたいのに起き上がれないよ。


 もそもそと起き上がろうとすれば


「ああ、起きましたか。よく眠れましたか?」


 ファルネ様が部屋にはいってきた。

 手には水差しをもっている。


 ファルネ様は水差しを私の隣に置くと、カーテンを開けて、微笑んだ。

 起き上がろうともがくけれどベッドから立ち上がる事すらできない。


「ああ、無理をしないでください。

 そのような華奢な身体で動くなど無謀です。

 痛みは魔法でなくしましたが、身体が回復したわけではないのですから」


 そう言ってファルネ様は私の手をとった。


「これだけ細いと、いきなり食事もかえって身体に毒になります。

 きょうは水を少しずつ飲んでいきましょう。

 少し薬を混ぜましたから、甘いかもしれませんが飲めますか?」


 言うファルネ様の言葉に私はこくこく頷いた。

 綺麗なお水。いつも濁った水を飲んでいたからこんな綺麗なお水ははじめて。

 パパとママがいたときはどうだったのかも忘れちゃった。

 私がお水を見ていればファルネ様が私の身体を起こしてくれる。


 そしてコップに少しだけお水を入れると、私に飲ませてくれた。


 口の中に広がる不思議な味。


 甘くてとても美味しい。

 思い出した。むかーしママにもらったはちみつの味に似ている。

 美味しくてごくごく飲んでしまえば、急に喉に違和感を覚え、ゲホゲホと咳がでてしまう。


 ああ、どうしよう!?

 お水をちょっとこぼしちゃった!!

 怒られるかな!?


 怖くなってファルネ様を見れば


「喉が乾いていたのはわかりますが、いきなり全部飲もうとしてはだめですよ?

 少しずつ口に含ませてください。

 ……コップはいきなりすぎましたか。

 待っていてください。スプーンを持ってきます」


 言って、私をまたベッドに寝かせるとどこかへ行ってしまう。


 ……怒られなかった。


 ファルネ様の背中を見つめ、戸惑った。

 なんで私にこんなに優しいのだろう。

 見ず知らずの赤の他人で。私は卑しい下賎の身で。

 汚らしい子供なのに。


 やっぱり神様に祈る人は違うのかな?


 それともここは本当に天国なのかもしれない。


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