1章 12話 裏切り
冒険者の人と一緒に旅をして、ファルネ様以外でも、優しい人は一杯いて。
外の世界は怖くない。
とてもいいところだと思い始めていた。
外の世界はわたしにずっと暴力をふるっていた、嫌な叔母やいとこみたいな子がいっぱいいて私を虐める世界だと思っていたから。
でもそれは間違いだったのかな?なんて思い始めてもいた。
なのに。
「がはっ!!!」
ファルネ様が苦しそうにおなかを押さえて血を吐き倒れた。
エルディアの森についた途端。
ラムデムさんにちょっといいですかね?と言われ馬車を降りたファルネ様が後ろから何かで刺された。
リッケさんに。
何?何で?何がおきてるの?
私が這ってファルネ様の近くにいこうとすれば
「な、何を……」
ファルネ様が地面に伏せたままラムデムさんを睨んだ。
「なーに、簡単なことさ。ここであんたを殺してくれって頼まれてたんだよ」
「だ、誰にそのような事を!!」
「知らねーよ。神殿の上の方とは言ってたけどお前の方が誰かわかるんじゃねーの?
恨むならそいつらを恨んでくれ、オレらを恨むなよ」
言って剣をぽんぽんと手に取る。
「なぁ、こっちの女はどうするんだ?」
言われて私はリッケさんに馬車から引きずり下ろされた。
「邪魔だから、この神官の前で殺しておけよ」
ゼーンさんがニタニタ笑いながら言う。
「や、やめなさいっ!!!!」
ファルネ様が必死に起き上がろうとして
「ぐあっ!!!!!」
思いっきりラムデムに踏みつけられた。
「面白い見世物をみせてやるから黙ってみてろよ」
と、ニタニタ笑いながら言う。
ファルネ様は傷口を踏まれたのか物凄く苦しそうにうめいているけれど、私を助けようと必死にもがいてまた蹴りつけられていた。
やめて!!やめて!!ファルネ様が死んでしまう!!!
「あーあーあー!!!」
私が必死に手を伸ばすけれど、無理矢理リッケさんに身体を押さえ込まれた。
「さっさとすませてよ」
ペーネが面倒そうに言う。
「やめなさいっ!!貴方たちは良心が痛ま……ぐがっ!!!」
ごすりと鈍い音が聞こえて叫んでいたファルネ様の声が悲鳴に変わる。
やめてやめてやめて。
ファルネ様を虐めないで。
口から血を吐いて、ファルネ様が必死に私に手を伸ばしていたけれど、もう一度上から踏まれてファルネ様の手がばたりと力なく地面に落ちた。
血がファルネ様の周りに広がっている。
死んじゃう死んじゃう死んじゃう。
ああ、同じだ。この人も私を虐めた人と。
やっぱり間違ってた。
人間は信じちゃいけなかったんだ。
人間は皆いじめっ子で私は虐められるために生まれたんだ。
お願い神様。私はいいからファルネ様を助けて。
ファルネ様は天使なの。
私は死んでも平気。
だって本当ならあのまま森で死ぬはずだったんだもの。
これから痛い事をされるかもしれないけれど。
今までいっぱい痛い事をされてきたから慣れている。
ファルネ様と幸せな時間があっただけ私は嬉しかった。
虐められる為に生まれてきたなら受け入れるから。
でも、お願い。
神様。お願いします。
ファルネ様は私を助けてくれただけ。
虐められるのは私でいいの。
だからファルネ様だけでも助けてっ!!!
私にリッケが剣を振り上げて……
「ひひぃぃぃん!!!!!」
リッケを止めようと、パトリシアが馬車のまま突っ込んできた。
パトリシア!??
私がそちらに視線を向けた途端――
ざんっ!!!
パトリシアの身体が何かに貫かれた。
ゼーンが槍を投げたみたいで、パトリシアの身体が槍で貫かれた。
「ちょっと!???何で馬を殺してるのよ!??帰りどうするつもり!??」
ペーネがゼーンに文句を言って。
「くっそっ!!なんだよイラつく馬だな!!」
リッケがパトリシアにけりを入れる。
やめて。やめて。やめて。
パトリシアは私を助けようとしただけだよ?
なのに何でこんなひどい事をするの?
パトリシアと目があった気がした。
助けられなくてごめんねって、言っている気がしたの。
違うよ。違うよ。 パトリシアは悪くない。
悪いのは虐められるために生まれた私がここにいたからだよ。
私は一生懸命、パトリシアに近づこうとするけれど、ずーっと寝ていたからか力が入らない。
這って一生懸命行こうとするけれど全然届かないの。
そしてーーパトリシアの目から光が消えた。
私は知っているよ。
お目目に光がなくなったのは死んだって事だよ。
死んじゃった。死んじゃった。死んじゃった。
パトリシアが死んじゃった。
許さない。許さない。許さない。
ファルネ様を傷つける事もーーパトリシアを殺しちゃった事も。
私は絶対許さない!!!!!
思った瞬間。
ぐががががががががががが。
ものすごい音が馬車の荷台から響いた。
「な、なんだ!?」
冒険者たちが驚いた瞬間。
と、物凄い音をだして馬車を壊して出てきたのは……全身が木でできた巨大なお人形みたいな何かだった。











