1章 10話 パトリシア
「さて、今日はお外にでてみましょう」
そう言ってファルネ様が私に手を差し伸べてくれた。
お引越しの話をしてからファルネ様は私とお外にいく練習のためにお休みをいっぱい貰ったって言っていたの。
今日からはずっと私と一緒に居てくれるって言っていた。
お仕事に行かないでずーーっとずーーーと一緒なんだって。
嬉しい、嬉しい。ファルネ様とずっと一緒。
差し伸べてくれた手を取って、一生懸命私は歩いた。
あれから大分歩けるようになったんだよ。
少しなら掴まらなくても歩けるの。
ファルネ様に大分体力がつきましたねって褒めてもらった。
ファルネ様とお手手を繋いでトコトコ歩いて頑張って玄関まで歩いて、私はお庭にでる。
最近お庭をファルネ様と歩けるようになったんだ。
毎日体力をつくようにファルネ様がいないときに、いっぱい歩く練習したもん。
ファルネ様に褒めてもらいたいから。
お庭はやっぱりお花がいっぱいで、綺麗な光が嬉しそうに飛んでいる。
みんなファルネ様が大好き。
とっても嬉しそうに飛んでいるの。
ふよふよとファルネ様の周りを嬉しそうに光が飛び回っているその中を、私とファルネ様は手をつないでトコトコトコって歩くんだ。
私が嬉しくて「あー」とファルネ様を見上げれば、「頑張りましたね」と、頭を撫でてくれた。
それが嬉しくて、私はファルネ様に抱きついた。
そこからファルネ様は私を抱っこしてくれて、そのまま御花畑を歩いて行く。
「今日は馬車を見てみましょう」
馬車?
お馬さんの声が聞こえる乗り物?
確か森に捨てられた時に乗った気がするよ。
袋の中に無理やり詰め込まれて運ばれて、景色は見えなかったけれど何かに乗せられたの。
その後、ヒヒーんって鳴き声が聞こえて。
ガラガラガラガラ。
すごい揺れて、乗っているとき凄く怖かった。
あれがたぶん馬車だと思う。
馬車が止まったら、私はそこから投げられた。
その時すごく痛かった。
ずっと暗い袋の中に入れられて。
ぐいっと持ち上げられたと思ったら袋から放り出されたの。
馬車の中はガタゴト痛くて。
男の人の怖い声がずっと聞こえていた。
またあれに乗らないといけないの?
身体を無理矢理袋の中にいれられて、何も見えない中ガタガタと身体を打ち付けられて放りだされるの?
怖い。怖い。怖い。
身体が震えてきちゃうのが自分でもわかった。
ファルネ様はリーゼの事袋の中に入れないよね?
怖くなってファルネ様を見ればいい子いい子と頭を撫でてくれた。
「外は怖くありませんよ。大丈夫です」
ファルネ様はお外が怖いと勘違いしたみたいで、私をいい子いい子してくれるけれど。
違うよ。私はお馬さんに乗るのが怖い。
リーゼは袋の中は嫌い。だってお外がどうなっているかわからないから。
ガタガタガタって怖い音だけが響いて、どうなるかわからなくて。
思い出して涙が出てくる。
「リーゼ?」
「あーあーあー」
馬車怖い。私は馬車嫌い。
「いきなりお外は無理でしたか?」
ファルネ様が聞くから首を横にふる。私が怖いのは馬車。
袋の中は嫌だ。袋の中にいれられて、お外が見えないように袋を結ばれて。
ついたぞって声が聞こえたら、袋から放り出されて痛かった。
「……もしかして、馬車の方ですか?」
うんうんと頷いて、私がファルネ様に抱きつけばファルネ様は優しく微笑んで背中を撫で撫でしてくれる。
「怖くありませんよ。私も一緒です。
リーゼはずっと私と一緒で抱っこして乗りましょう」
抱っこ?抱っこ?ずっと一緒?
私を袋の中に入れたりしない?
「頑張れますか?」
私はウンウンうなずいた。
袋の中にファルネ様も一緒なら怖くない。
ファルネ様がぎゅっとしてくれるなら大丈夫。
私は嬉しくて微笑めば、ファルネ様も微笑んでくれた。
「今日は馬車を見るだけでも構いません。
少しだけ頑張ってみましょう」
ファルネ様に言われて私は頷く。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
ファルネ様が一緒だもの。
私たちが馬車の前にたどり着けば。
そこには優しいお目目をしたお馬さんがいた。
白いお馬さんで金色の髪の毛なの。
「この子が今回私たちと旅をするパトリシアですよ」
言ってファルネ様が遠くからお馬さんを指さしてくれる。
白いかわいいお馬さん。ものすごく体が大きいの。足はものすごく太い。
すごいよ。すごいよ。絵本にでてくるお馬さんが目の前にいるの。
そういえば前に馬車に連れられた時は、袋につめられちゃったからお馬さんは見えなかった。
おっきいね。おっきいね。
「あーあーあー」
私がファルネ様にいうと、ファルネ様は微笑んで「側にいけそうですか?」と聞くからコクコク頷くの。
馬車は怖いけれど、お馬さんは怖くないよ。
ファルネ様に近くに連れてってもらえば、パトリシアが嬉しそうに私にすりすりしてくれた。
嬉しくて私もナデナデするの。
この子はとっても優しい子だよ。
私にはわかるんだ。
だって周りの光がお馬さんの周りを嬉しそうに飛んでいるもの。
私の見える不思議な光はね。
動物の周りをいつも嬉しそうに飛んでいるんだ。
光が教えてくれる気がするの。
この子はいい子だよって。
だからきっとこの子はいい子。
よろしくねパトリシア。
私が心の中で呟けば、パトリシアがヒヒヒーンって嬉しそうに言ってくれた。











