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1章 プロローグ

 気持ちの悪い娘だった。


 殴っても蹴飛ばしても痛めつけても。

 なぜかその娘は笑っていた。

 殴られて痛いはずの頬を押さえてずっとこちらを見てへらへらしているのだ。


 その笑顔が、優遇されつづけた姉を彷彿させて、テンシア・ドルトーナは余計怒りを募らせた。


 姉夫婦が死んで、姉夫婦の子供を引き取るかわりにテンシアは商家を継いだ。

 元々姉ばかり優遇されていた恨みをもつテンシアは姉の子ソニアを好きではなかった。

 姉夫婦の子供は地下室の薄暗い部屋に閉じ込めていたが、見るたびにイライラし、娘といつも気晴らしにその子に暴力を振るうようになっていく。


 テンシアの夫ヘンケルはやめるように言うのだけれど。

 浮気をした手前そう強くでてくることもない。


 姉夫婦の子供は本当に気持ち悪い。

 ぶっても叩いても水をかけても、熱い鉄の棒を押しつけてもヘラヘラと笑っているだけなのだ。

 痛そうな顔もせずただただヘラヘラ笑っているのが気持ち悪くて暴力はエスカレートしていった。


 食事も与えず、睡眠も与えず、もちろん外に出すこともないため教育も受けさせない。

 そんな事が続くうち城からお触れがあった。

 うちの領地に聖女がいる。


 聖女を探しに神官達がやってくるだろうと。


 テンシアはもちろん夫も娘シャーラも慌てた。

 神官達は奴隷や平民問わず聖女を探すため年頃の娘を鑑定すると言っている。

 姉夫婦の子供を見られれば、本来保護するはずだった娘を虐待していたとして商家の財産全てを没収されかねない。


 そして何より、聖都カルディアナに住む者は7歳になったら『成人の儀』に参加させなければならない。

 それに参加させていなければ、重い刑罰があるのだ。


 ごまかそうにも少女は15歳。

 それなのに食事を与えていなかったせいでどう見ても10歳のガリガリの少女にしか見えないのだ。

 不審に思われ過去まで調べられたら、テンシア達に未来はないだろう。


「どうするんだ!!こんな事を神官に知られたら我らもただではすまないぞ!!

 だからあれほどやめろと言ったのに!!!」


 今になってヘンケルがテンシアを責めるが現在になってはどうしようもない。

 このようなガリガリの少女をたった10日のうちにふくよかな少女に戻せというのは無理なのだ。


 小さい頃から虐待と閉じ込めることしかしていなかったため、言葉すら上手くしゃべれない。


 そして。夫婦が出した結論は――少女ソニアを魔物の徘徊する森の中に捨てる事だった。


 こうして物語は動きだす。



 これは

 虐待されていた少女が聖女となり――無自覚に過剰ザマァをし。

 虐待していた側は聖女でないのに聖女と間違われどんどん墓穴を掘り自滅してく物語。


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