04 熱血教師
魔導学園の武闘場に待っていたのは・・・
「まだ、誰も来ていないようですね。」
学園の武闘場の、閑散とした景色を見ながら、ギルガがつぶやく。
「どうしましょう?
出直すのも・・・!」
言いかけたリーリアが、いや、ギルガさえも、不意に全身を包み込む恐怖に身を竦ませる。
「あ、あ、あ・・・。」
背後から聞こえてくる、シャーナの押し殺したようなうめき声に、二人が振り向くと、
「うむ、済まぬな。
寝起きゆえ、魔力が乱れておったようじゃ。」
ギルガよりも長身の女性が、ゆっくりと歩み寄る。
座り込んでいるシャーナは、まだガクガクと身を震わせている。
「そう、怯えぬでも、取って喰ったりはせぬぞ。
・・・うむ?
粗相をしておるのかの?」
そう言うと彼女は、シャーナの頭に手を置き、ムンと魔力を込めた。
シャーナの座っているところから光の粒が立ち昇り、空中に消えてゆく。
「『浄化』の術は、先日覚えたばかりじゃったが、按配はいかようかの?」
そう言って、彼女はシャーナを軽々と抱き上げる。
身長差も相まって、親子のような二人の姿だった。
「あ、あの・・・」
固まっていたリーリアが、二人に向かって足を踏み出す。
さっきまで震えていたシャーナは、今はくつろいだ表情で、女性の胸に顔を埋めていた。
「あなたは、もしかして・・・」
「うむ。
人の身でおる時には、リザと呼ばれておるがの。
お主らは、学園の者ではないようじゃが?」
「あ、はい。
わたしはリーリア、彼はギルガ、その子はシャーナです。
みんな、初級冒険者です。」
「ふむ。
学園の者たちは、まだ誰も来ておらぬようじゃが・・・」
「えっと、シャーナのことで、ご相談があったのですが・・・」
「相談とな?
どれどれ・・・」
リザはシャーナと額を合わせ、目を閉じる。
程なく、ふたたび紅い瞳を開いたリザが、
「ふむふむ。
お主、本来持っておる力を、ほとんど出し切れておらぬようじゃのう。」
圧倒的な魔力を持ちながらも、その言葉は見下すことも、憐れむこともなく、ただただ事実のみを語る態である。
真顔から一転、魅惑の笑みに転じた唇が、
「なに、わたしとていまだ、すべての力を己が物にしておらぬ。
じゃからこそ、人と交わり、互いに切磋琢磨しようというものじゃ。」
リザは、シャーナを地面に下ろした。
「力は、使わねば制御もできぬ。
そして、力を使い果たした後にこそ、その者の真価が問われるというもの。
まずはお主の持てる力のすべてを、このわたしにぶつけてみよ!」
暑苦しいまでに熱を帯びた言葉に、
「はいっ!」
と、シャーナは熱く応えた。
リザママ、意外と熱い・・・ま、火龍だし。
リザの、シャーナに対する熱い指導が始まったが・・・