終
その後の彼らは・・・
「獄炎!」
術名呼称とともに、大地にいくつもの火柱が昇り立つ。
「行きます!」
大きな背中が、戦場に向かって進んでゆく。
火炎に巻かれ、右往左往するゴブリンたちを、片端から長剣で仕留めてゆく。
「ホブゴブリン、左から来ます!」
背後からの呼びかけに、頭を巡らす。
炎を物ともせず、蛮刀を振りかぶるホブゴブリンだが、それを振り下ろす前に、突進してきた盾に突き飛ばされる。
「ぐぅ・・・」
うめくホブゴブリンの首筋に、長剣が振り下ろされた。
「まだ、弓士がいます。
注意して!」
持ち上げる盾の、その表面で、鏃が弾ける。
「炎弾!」
降り注ぐ、火炎の飛礫。
「ぎあああッ!」
炎を纏い、短弓を投げ捨てて逃げ出そうとするゴブリンを、ナイフを投擲して倒す。
「残りはッ?」
「・・・大丈夫みたい。
でも、油断はしないで。」
「了解です。」
「復帰戦は、まぁまぁ上々の成果と言うところですね。」
戦場に似つかわしくない、リーリアの朗らかな語り口調に、
「やはり、攻撃魔法があると違いますね。
欲を言えば、弓士か、攻撃特化の剣士がいると、ありがたいですが。」
「でも、馬鹿力だけの、脳筋戦士なんてイヤですよ。
女性と見れば、誰かれ構わず口説いてくる輩も、お断りです。」
「そんなのがいるんだ。」
「シャーナさんも、気をつけてくださいね。」
「大丈夫よ、リーリア。
そういう人が近づいてきたら、きっちりお仕置きしてあげるから。」
そう言ってシャーナは、手の平に小さな炎を出して見せた。
「悪気のない相手には、くれぐれもお手柔らかに、お願いしますよ。」
「前から思ってたけど、ギルガとリーリアって、どういう関係?」
唐突なシャーナの問いかけに、ギルガとリーリアは顔を見合わせる。
「一緒に暮らしているわけでもないし、ただの仕事仲間にしては、妙に息が合ってるって言うか・・・」
「僕は、リーリアさんのこと、好きですよ。」
「えっ?
それなら、リーリアは?」
「わたしも、どっちかって言うと、好きですね。」
「それなら、どうして一緒にならないの?」
「それは・・・」
言いかけたギルガが、口をつぐんだ。
「近くにまだ、お仲間さんがいるようです。」
そう言うとリーリアが、すぐさま詠唱を始める。
「数は多くはないけど、囲まれてるわ。」
シャーナの杖が、紅い輝きを帯びてゆく。
「言うまでもないことですが、危ういと思ったら、すぐに逃げましょう。
生きていればこそ、雪辱の機会もあり得ます。
たった一つしかない、自分の命なのですから、長く大事に使いましょう。」
「それに、さっきの話の続きも聞きたいしね。」
「確かに。
わたしも、ギルガさんの答えを聞きたいです!」
すでに、リーリアの防御魔法は展開済みだ。
シャーナの火炎も、その威力を発揮する時を待っている。
ギルガの裡の魔力も、身体の隅々にまで行き渡っている。
「それでは、行きましょう!」
ギルガは、地を蹴って、敵の中に飛び込んでいった。
『デラとアルフのドラゴン退治』の、裏話的お話の続きです。
『駆け出し剣士の物語』に引き続き、ギルガとリーリアが登場してますが、当初の予定では、出番はなかったはずなんですが・・・
前作最終話の後書きで、短エピソード限定主人公って書いてましたが、この調子だと、まだまだ出番はありそうです。
それではまた、いつか、どこかで。