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学園編 入学 (1)



小さい頃に交通事故にあった。家族で遠出していた際に高速道路での事故にあったのだ。相手の無謀な煽り運転で始まった事故は関係のない人達を巻き込んだ。

家族で助かったのは俺だけで、最近までその俺も寝たきりだったらしい。医療の格段の進歩とマナと呼ばれる人間が持つ力の発見により日本は何百年もの進化をすっ飛ばしたらしい。

その恩恵を受けたのはほぼ脳死状態だった俺、松崎海斗というわけだ。

マナという体内で精製されるエネルギーによってファンタジーの世界の魔法が世に現れた。このマナを使った回復により脳死と判定されていた俺への治療が行われ、目覚めた時には15歳になっていた。

リハビリなどは順調で、この春に日本政府が作った新しい学校である国立聖堂魔術高等学校へ入学することになったのだ。

ちなみに試験は受けていない。国からの援助を受けて治療を受けており、学費も全部無料だ。


「そろそろ起きるかな」


目覚まし時計は7時を指しており鳴り出す前にスイッチを切る。今日は入学式で初めての学校だ。学校自体も初めてなので緊張と期待で目が早く覚めてしまったのだ。


リビングへ降りていくとそこには俺が世話になってる女性が食事の用意をしてくれていた。


「おはようございます和美さん。いつもすみません」

「おはよう海斗君。今日は入学式だからね。高校生になったんだし私の役目も今日までだから」

「色々助かりました。俺も遅れていた分を取り戻せましたし、一人でもやっていけます」

「良かったわ。これからはたまにサポートに来るけど何かあったらすぐに連絡をしてね?特に身体の変化とかがあれば必ずよ」

「わかってます。もうすっかり元気ですよ」

「それじゃご飯用意してるから顔洗ってきなさい」


和美さんはそのままキッチンに引っ込むと料理の続きを始めた。海斗は洗面所へ向かい制服へと着替えると顔を洗い鏡で身嗜みをチェックする。


黒い髪は軽く金色が混じって降り茶色に全体的見える。これはマナの活性化によるものと事故の影響もあったようだ。

顔は多分平凡だと思われる。テレビで見た芸能人達がカッコイイのであれば俺の顔は平均的なはずだ。

学校の制服である紺色のブレザーは少し大きい気もするが、赤色のネクタイを締めたワイシャツの下の体はリハビリと筋力トレーニングにより引き締まっている。マナを使って体の筋肉を活性化させてトレーニングを行うと短期間での肉体向上が可能になったからだ。

用意が出来てリビングに戻るとテーブルに朝飯が並んでいた。


「海斗君座って」

「はい」


椅子に座るとご飯茶碗に山盛りに盛られた白飯が出てくる。それを受け取り早速頂くことにする。


「いただきます」

「どうぞ召し上がれ」


玉子焼きとウインナーにマヨネーズをかけてご飯と一緒にかきこむ。マジで美味い。別に特段何かしてるわけではないが、チューブでの栄養摂取で生きてきたから味わえることが嬉しいのだ。


「はいこれ。ちゃんと忘れずに飲むようにね」

「分かってますよ。朝晩に2回ずつですよね。忘れたことないですから安心して下さい」


テーブルに置かれた小さな容器には薬が入っている。1日2回、朝と夜に錠剤を飲まなければ俺の身体はマナの影響受け付けなくなり脳死状態に戻ることになるということだった。


「それならいいわ」


和美さんは俺の食べた食器を片付けながらスーツに手を通す。まだ20代と思われるが美人でスタイルがいい。


「ご馳走さまでした。俺も一緒に出ます」

「あら?ちょっと早いけどいいの?」

「はい。ゆっくり初登校を楽しもうと思って」


笑顔になった和美さんに今までのお礼をしっかりとする。


「今までお世話になりました。これからは自分で頑張って生活していきます。和美さんには感謝してます」

「ありがとう。これからは先生と生徒になるわけだから和美さんではダメよ?学校では先生と呼びなさい」


笑いながら話す和美さんは今日から入学する国立聖堂魔術高等学校の教師でもある。


「わかりました。白石和美先生」


海斗は恥ずかしそうに返事をして初登校へと家のドアを出るのだった。


和美さんはガレージに停めてあったポルシェに乗り込み颯爽と走り去っていった。


俺は家の前の川沿いに咲く桜を眺めながら山の上にある学校へ向かって上り坂をゆっくりと歩いていく。


桜は川沿いにどこまでも咲いておりとても気持ちがいい。学校までは10分程度だが校舎は山の中腹にある。家から歩いて川沿いを登ると山の麓に学校の校門があり、そこから校舎まで電車が敷かれてある。傾斜を垂直に登っていくタイプの電車で専用に作られたものらしい。


校門には自衛隊の詰所があり警備が敷かれている。この学校は世界初のマナを用いた魔術の学校であり、その技術は各国も注目している為、スパイなどによる情報漏洩はもちろんテロ対策や襲撃に備えての対策だということらしい。


「おはようございます」


声を掛けて学生証IDカードを認証システムの機械へと当てる。網膜スキャンと指紋照合を一瞬で済ませると中に入る。ちなみに自衛隊員から朝の挨拶の返事はなかった。


自動運行システムの電車に乗ると先客が1人窓際に座っていた。ネクタイの色からすると同じ入学生だと思われる。


短く揃えられた髪に切れ長の目は可愛いよりも綺麗のタイプの美少女だ。胸はないが背は高く座席に弓が布に包まれて置かれている。弓道部に入るのだろう。もしかしたら学校推薦枠のスカウトされた生徒かもしれない。


美少女は一瞬こちらを見てから窓の景色に目を戻す。海斗も反対側に座ると窓の外へと意識を追いやった。


海斗が乗ってすぐにアラームがなりドアが閉められて電車は動き出した。スピードはそんなに早くないが校舎まで3分ほどとパンフレットには書いてあった。


国立聖堂魔術高等学校

2年前に発表されたマナというエネルギーの使い方などを研究する政府機関を上に持つ高校であり、一般試験には学力テストと面接、マナ測定テストをクリアした生徒たちと国がスカウトで推薦した生徒で構成される。

今年で初めて3学年が揃うことになり、卒業後は国に所属する事が入学の際の条件になっている。特例はあるらしいがその辺はパンフレットには書かれていない。

在校生は新入生が92名、2年生が67名、3年生は24名という構成だ。

授業は一般の高校で行う教科にマナの基本を学び魔術を使うための授業などが増える。体育も普通の授業ではなく身体強化などになると説明書きがあった。

敷地は広大で実験が行えるように各研究所もあるらしい。校庭と体育館の他に武道場なども充実とあり、学費も半端じゃないらしい。免除じゃなかったら一般家庭だと入れる金額ではないと和美さんが言ってたな。


ぼんやりと考えていたらどうやら着いたようだ。弓道美少女が出口で既に立っておりドアが開いたら颯爽と歩いて行った。


クラス分けはまだわからないので駅から大きな道の先にある校舎らしき建物へ向かって歩く。さっきの少女は迷う事なく歩いて行ったが来た事があるのだろうか。


たくさんの生徒が横に並んで歩いても平気であろう校舎への道を暫く進むとどこにでもある学校と同じガラスの入口のドアを潜る。

そこには1年生から3年生までのクラス分けが貼ってあった。


3年生は人数が少ない1クラスしかない。2年生は2クラスでA、Bに分かれている。俺のクラス分けは3クラスに分かれていた。

S、A、BとなっていたがSクラスだけ10人しかいない。自分の名前である松崎海斗を探すとBクラスに名前があった。


ご丁寧にクラスまでの道のりは案内の矢印を見れば簡単に行くことができた。教室に入り自分の席を黒板に張り出されている席割り表で確認してみる。


「お!窓側じゃん!」


特に意味はないがなんとなく得した気分になり席に着く。モニターを起動して生徒に配布されているIDを翳して認証を済ませて今日の時間割を確認していく。今日の予定は入学式だけだが、入学式ではマナを持つ人間に15歳で発現する能力を検査する儀式があるらしい。


ガラララララ!!!


クラブ活動などの内容や成績などを確認していると教室の扉が勢いよく開いた。


「あれ!?先越されてる!?」


眼鏡の小さい女の子が驚いた表情でこっちを指差している。


「おい!翠!指差したらだめだろ」

「ああ!?ごめんごめん!」


小さい女の子の後ろからひょっこり顔を出したのはこちらもまた眼鏡を掛けた少年だった。身長は頭2個分は違うだろう。2人は教室に入って来ると小さい女の子ん方は一直線で海斗のところまで来る。男の子は席表を確認しているところから性格が伺える。


「おはよう!?私は桂翠!よろしくね!」

「ああ、俺は松崎海斗だ。よろしく」

「おい翠!ごめんね、こいつ落ち着きなくてさ。俺は桂蒼太だ。よろしく」

「こちらこそよろしく。2人は同じ苗字だけど?」

「私たち双子なんだよ!」

「おー初めて双子にあったけど似てないんだな」

「僕たちは一卵性じゃないからさ。俺は父親似で翠は母親似ってわけさ」

「ねえねえ!海斗くんはマナ持ちなんでしょ?どれくらい使えるの?得意な魔法とかある?」

「こら!そういうのは秘匿しろって言われてるだろ!」

「ははは。まぁこの学校はマナ使えないと入れないから秘匿する必要もないかもね。俺はまだ自分のマナは使い切れてないし魔法もまだわからない」

「そっか〜マナ持ちって珍しいからつい!ごめんなさい」


話をしていると教室に生徒が続々と登校してきた。もうそんな時間になっていたらしい。


「じゃ海斗、これからよろしくな」

「またねー」


2人は手を振りながら自分の席に戻って行く。登校してきた生徒たちも席を確認して自分のモニターを起動して確認作業をしているようだ。


「これから楽しくなりそうだな」


海斗は新生活に胸躍らせるのだった。



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