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革命 (1)

創成期640年水無の月、勇者リオンは魔王ゼルフォローとの魔族と人間の長い戦いに終止符を打つべく総攻撃に出ていた。


ベル村という田舎出身で何も特産物のないありふれた地方平民の農家の次男として生まれたリオンは12歳の頃に神託を受けて勇者として見出されて以来、戦いを続け仲間を集めて今に至っている。


修行も兼ねての魔物や魔族たちとの連戦を重ね、剣の振り方から魔法の使い方、伝説の武具の探索を仲間たちと続けてきた。


失った仲間や戦えずに去った仲間たちは片手では数えきれなかった。激しい激戦を終え、その度に強くなることを心に誓い新しい仲間を迎え入れて前に進んできたのだ。


そして今15歳になったリオンは3年かけて到達した魔王城の王の間にて魔王ゼルフォローと向かい合っている。


傍らには最初から旅を一緒に続けてきたリンク国の皇子のバン、魔物に襲われているところを救い出し仲間になった妖精族のヒルダ、各国から出された代表の強者たちで連合国を率いてきた獣人族の姫のアンク、その各国の連合の兵たちだ。


「これで最後だ魔王ゼルフォロー!今ここに平和を勝ち取る!」

「小癪な!!人間ごときが!!」


魔王とその護衛の魔族の兵たちと勇者の連合軍が入り乱れての戦いはまさに総力戦だった。ほとんどの兵たちは倒れ、一緒に戦ってきた仲間たちも辛うじて立っている状態は魔王を追い詰めている。後ろに引いたリオンは最後の大技に打って出る。彼にのみ許された超神威魔法リロードオブビッグバン。この世界で最も威力の高い魔法ビッグバンと勇者スキルの無銘剣の融合技であり、勇者にしか発現しない奥義の1つでもある。発動した魔法を聖剣に纏わせて大きく跳躍し魔王へと斬りかかる。


「うぉおおおおおおお!!!!」


上段に振りかぶった聖剣が目も開けられないほどの輝きと共に放たれる。魔王ゼルフォローは障壁を幾重にも張り出すがそれを切り裂きながらゼルフォローに迫る。


「クソガァああああ!!!人間ごときに!!!!!」


一気に振り抜かれた聖剣はそのまま魔王ごと切り裂き魔王城の王の間をも吹き飛ばす。


「グゥうううわああああ!!!!」


凄まじい爆発音と光が輝きヒルダたちは床に一斉に伏せる。連合の兵士たちも爆風に巻き込まれるものもいたが咄嗟に身体を丸めてやり過ごす。



どれくらいの時が経っただろう。一瞬だったかもしれないが、目を開けたバンたちの目の前には塵になった魔王の影だけが大理石の床石に残されていた。




「オオオオオ!!!!!やったぞ!!!俺たちの勝利だ!!!!!」

「あああああやったあぁああああ!!!!!」


バンの雄叫びで魔王の戦いが見えていなかった兵たちに伝わっていき一気に勝鬨が上がる。抱き合って涙を流す者もいれば笑いあったり、亡くした友を思い涙する者もいる。


「やったわね!ヒルダ!バン!」


獣人族の姫のアンクが涙を浮かべながら飛びついて来る。ヒルダも嬉しそうに苦笑いしながら勇者リオンを探す。


「リオン!どこなの!?リオン!」


創世記455年魔族の王は勇者により滅ぼされ人族を中心とした世界となった。しかし魔王を激戦の末に打ち倒した勇者リオン・フィルティモアの姿はどこにも見つからなかったと歴史書には記されている。







+++++++++++++++++++




「ハァハァハァ………」




ガチャンと音をたてて膝をついたリオンは失われたマナと体力の限界に達していた。


しかし手に残る感触から手応えは十分あり、魔王ゼルフォローは倒したと確信している。あまりの急激な力の放出により意識は奪われていくが、このまま倒れても後はバンたちがきっとうまくやってくれると信じている。


(これで誰もが安心して暮らせる世界になる)


そう思った瞬間リオンの意識は闇へと吸い込まれていった。







あれからどれくらい経っただろうか。リオンは身体のマナの回復と共に目を覚ました。


「ん。。。ここは?」


当然魔王城の王の間で意識を失ったのだから見たことのない場所にいるのは仕方ない。首を上げて見渡してみるが周りには誰もいない。リオン自身は白い簡易なベッドに寝かされており、鎧などは脱がされているようだが、怪我の治療はされていないようだ。

部屋にはポツンとベッドだけがありそこにリオンは白い服を着て横になっていたのだ。


「おーい!バン!ヒルダ!アンク!」



「どこに居るんだ!誰かいないか!」


見張りの兵か医者がいるだろうと、リオンは起き上がり唯一の出入り口の扉に向かって声を掛けながら近寄っていく。ドアノブを回して扉を開けようとしたが鍵がかかっており押しても引いても開かなかった。


「どうなってる?まさか魔王か!?」


装備も奪われており見たこともない真っ白なこの部屋は魔王城の牢獄なのかもしれない。魔王は確実に葬ったと勝手に思っていたが、もしかしたらあの後に他の魔族に攻撃され仲間たちがやられてしまったのかもしれない。


「マナがまだ足りないか!クソ!」


咄嗟に魔法を放とうとしたが超神位魔法を放ったマナは回復していないようだ。普段であればある程度回復していてもおかしくないのだが回復が遅く全然足りていなかった。


それならばと扉を殴って壊そうと思い振りかぶる。殴る程度で壊れるとは思えないがそれしか方法がない。モンクのスキルである体術や気功術なども旅の中でもちろんカンストしているLV10だ。


「古呼気波動拳!」


ドゴォオオオオオオオオン!!!!!!!!


爆発と土煙が舞い上がりあっさりと扉とその周りの壁が吹っ飛んだ。


(まさかそんな簡単に?嘘だろ?)


そのまま正拳突きのような体制で固まったリオンは土煙の中でびっくりした顔をした人間と目があった。


「あ」

「あ」


壁が吹き飛んだ先には人間が何人もいた。中には女もおり武装などはしていない。目があった男は見たこともない服を着ているが白い服を着ているのでリオンと同じ捕虜かもしれない。


「すいません。鍵が開かなくて。。。つい」

「いえ。。。。こっちこそすいません。。。」


お互いにかなり気まずい空気が流れていると奥にいた女性が気を取り直したように前に出てくるとリオンに声を掛けた。




「ゴホン。。。。。ようこそ地球へ。えーっと異世界の勇者様」


どのくらいの沈黙があったかはわからないがゆっくりとその女性が赤面して来るのがわかる。ちょっと泣きそうだ。そこでリオンもさっきの言葉が脳に伝わった。




「………………え???はい????」




そうリオンは召喚されたのである。





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