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雨 のち 虹  作者: 華岡 玄白
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第2話 日常 のち非日常

第2話の投稿です。

今回は認知症の斎藤さんのお話です。

ゴールデンウィークも終わり少し肌寒いが日差しが暖かくなってきたが朝はまだ風が冷たいが上着一枚でも寒くはない程度だ。

こんな日は屋外に出て気分転換するのもいいだろうなと考えながら優は病室の女性患者にいつもの挨拶をした。


「斎藤さん、リハビリの時間ですよ。」

斎藤と呼ばれたこの小柄な女性は天井を見つめたまま何も喋らない。

優の方を見る事もない。

「斎藤さん、外は気持ちのいい天気だから今日は外に出て見ましょうか」

肩を軽く叩きながら耳元で喋りかけた。

天井を見たままの斎藤は優を見て

「助けてーな、ここから出して」と涙目になりながら訴えてきた。

優は「今日はどうしたんですか?何かあったんですか?」とこれもいつものことだ。

斎藤は重度の認知症を数年前から発症しており入院してから更に認知症が進行している。


認知症患者にはよく自分の現状が理解できず助けを求めたり誘拐されたと勘違いし警察に電話したりする。ちょっとでも気にくわないことがあると殴りかかるといった暴力行為もままある。

斎藤の認知症状は自分の現状が理解出来ていないために不安感が強いだけで暴力行為などがないだけまだマシだ。


説明しても理解はされないため、優はこの会話を毎日繰り返している。

優は斎藤を全介助で車椅子に乗せナースステーションの看護師に向かって

「今から斎藤さんのリハビリに行ってきます」

と伝えた。

「はーい、行ってらっしゃい、斎藤さん。頑張ってね」

と可愛らしい笑顔でこちらに手を振っている看護師は優と同期入職した橋本 舞だ。


患者さんからの評判も良く孫が来てくれたようだとよくお菓子を渡されそうになっているのを見たことがある。

基本的に患者さんから何かを貰うことはできないため、舞は困っていることが多い。

しかし、そんな笑顔の挨拶も

「いいから、はよ助けてーな」とご機嫌斜めだ。


「あー、おじさん先生がまたいじめてるー」

母親に車椅子を押され一人の少女が笑いながらこちらに向かって来た。

「ひどいな、真希ちゃん。いじめてるわけじゃないよ。」

と優は頭をかきながら真希に弁明し母親に会釈した。

「おばぁちゃん、おはようございます。おじちゃん先生から助けて欲しいの?真希が助けてあげるよ!」

と屈託のない笑顔で真希は優に向かってファイティングポーズを取った。

斎藤は目を大きく開け真希に話しかけた。

「助けてくれるんか、ありがとな。なら、はよあの子から遠ざけて!」

「あの子?おじちゃん先生の事?」

真希は不思議そうに斎藤に問いかけた。

「助けてくれるんやろ、あの子がご飯の時も寝る時も邪魔してくる!はよ助けて!」

斎藤は鬼気迫る顔で真希に訴えている。

真希と母親は優はそんな事をしないだろうと思い

誰の事かわからず困った様な顔をしこちらに助けを求めている。

「斎藤さん、その子はさっき追い払ったから大丈夫ですよ」と優は斎藤に話しかけた。

「よかったね、おばあちゃん!おじさん先生が追い払ってくれたって!」

と真希は斎藤に向かい笑いかけた。

「ほんまか、ありがとな!ありがと!」

斎藤は先ほどまでの鬼気迫る表情から一変し笑顔になった。

優は真希と母親に会釈し斎藤の機嫌が悪くならないうちにリハビリ室へ向かうことにした。

昔は痴呆症と言われていましたが、病名が問題となり認知症と変更になってから結構な時間が経ちました。

多くの方に知られ、書籍も色々な方面から出版されたり、テレビでどこかのドクターが話をしたりしてますよね。

斎藤の言うあの子って誰なんでしょうね。

昔何かあったのか、はたまたお見舞いに来た誰かなのか。

その辺のお話は次回更新で進めていこうと思います。

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