第1話 仕事 のち再開
医療もののミステリーが書いてみたくて、医者や看護師などではなく、あまりぱっとしない(失礼)主人公にはならなさそうな(更に失礼)理学療法士を選んで見ました。
序章という事で話は特に進展しませんが、これから少しずつ主人公優の周りで人の死なない事件が降りかかってきます。
難しい密室トリックなんかは出てこないので肩透かしに合うかもしれませんが、楽しんでもらえれば幸いです。
「さて、掃除も終わったしそろそろ帰るかな」
そうひとりごちた男の名は忠野 優。
ここは400床を超える救急病院のリハビリテーション科。優は入職してから3年目の理学療法士だ。
理学療法士はよくマッサージする人、介護してくれる人と勘違いされがちだが、本来はその人にあったADL 日常生活動作の改善や家族への介助指導、更には住宅改修などその人のQOL 生活の質の向上を目指しリハビリを行う職である。
そんな彼の前に1人の女子が車椅子を母親に押されながら優の前にやって来た。クリクリとした犬のような目でニコニコと笑顔が印象的なこの女の子は来月10歳の誕生日を迎える長谷川 真希だ。
「リハのおじさん先生、お久しぶり!また怪我しちゃったから今度こそ元どおりにしてね!」
なぜ、‘今度こそ’と言われるかと言うと優が何度も担当している患者だからだ。入職して初めて担当してからこれで5回目の担当となる。
「真希ちゃん、僕はこれでもまだ24歳だよ。まだおじさんって歳じゃ無いんだからせめてお兄さんって言って欲しいな。っていうか今度はどうしたの?」
「今回は階段から落ちて足首の骨を折っちゃったの」
笑顔で言うことでは無いなと思いながら優は依頼箋を確認しないとなと考えていると
「またお世話になります忠野先生。私が見てないと娘はまだまだ危なっかしくて。もっと女の子らしくなって欲しいんですけど…」
母親の静枝はため息ながらに娘の頭を撫でた。
「もう、お母さん!どうせ私はすぐに怪我しますよー」と頬を膨らませている。
静枝は一人娘ということもあり心配で仕方ないらしく、入院の度に率先して身の回りの世話をしてくれる。
看護師さんからも‘よく働くお母さん’と評判も上々だ。
それにしても、以前入院した時も玄関の上がり框から落ちて左足関節骨折を受傷したし、バランス能力に問題があるのだろうか?
退院後も外来でリハビリは続けたけど問題はなさそうだったんだけどなぁ。
まぁ、ギプス固定されているから当分は完全免荷だろうから患側の評価は3週間後くらいからかなと優は今後の計画を考え
「じゃぁ、明日からリハビリになるだろうから今日はゆっくりしてね」と笑顔をこぼす。
「うん、よろしくね、おじ…じゃなかった、おにいちゃん先生!!」と無邪気に元気よく手を振る。
静枝も「忠野先生、色々ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」と頭を下げてから失礼します。とその場を去った。
明日からリハビリ室も賑やかになるなと微笑みながら
「さて、明日から真希ちゃんもいることだし帰って英気を養うかな」
と不謹慎ながら明日が楽しみになる優であった。
序章なので主人公紹介程度にしようと思ったのですが、ストーリーが進んだ時に「アレはこれだったのか」とか「だからか」とか思ってもらえるような話にできればと思い書きました。
更新は不定期になると思いますが、今後も御一読頂ければと思います