1/7
序章
暗い、本当に暗い道を光を灯したものが高速で飛んでいく。
細長いそれにまたがり乗っているのは、一組の男女。
「追っては?」
男が女に尋ねる。
彼らは、ある巨大な組織から逃げてきたのだ。
女は後ろを振り向き、目を細めて遠くまで見渡す。
「大丈夫、いないわ」
「そうか」
頷きながらも男に安心した様子はなく、焦りを表すような舌打ちをした。
「くそっ、まだ着かないのか!」
「もう少しのはずだけど……トロッキー、もうちょっとだからがんばって」
自分がまたいでいるそれの背中部分をさすり檄を飛ばす。
するとそれに答えるかのようにスピードが上がった。
「いい子ね、ありがとう」
「光だ!」
待ち望んでいた出口に近づき、鼓動が高まる二人。
次第に光が大きくなっていく。
あと少し、あと少しで夢にまで見た世界へ飛び出せる。
未知なる期待に胸が弾み、彼らはその境界線を越えた。
――大地という名の境界線を――