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それならわざわざ他の人と別に呼んだりする必要はないんじゃないか?

余計に怪しまれそうな。


「実は、これから大規模な作戦があって、ほとんどの人員はこの本部を離れるんです」

「どんな作戦だ?」

「それは教えられません。アージェンタム君には作戦の間、本部に残ってもらって戻ってくる人に警戒してください」


こいつが俺に情報を出し惜しみするなんて初めてじゃないか?

まあ、何か理由があるんだろう。


「戻ってくる人?本部を襲う人じゃなくてか?」

「はい。この本部は巧妙に隠されていますので、場所がバレることはありませんし、もし誰かに襲われたとしたらアージェンタム君が一人で迎え撃つこと出来ますか?」

「確かに厳しいかもしれない」


一応鍛錬を積んだから、タイマンで戦えば何とかなるが、敵対勢力の本部を襲うときに一人しか送り込まないような組織はないだろう。


「はい。対して、戻ってきた人は恐らく何の警戒もしていません。そこで攻撃すれば完全な不意打ちとなるので勝ち目も見えるはずです」

「その戻ってきた人に何で警戒しないといけないんだ」

「今回の作戦では、アナキアを構成する全てのメンバーを目的地に向かわせます。つまり、そこから離れて本部に帰った人がいるならば、内部からの瓦解を試みるスパイに他なりません」

「あの、潜入ミッションだよな」


むしろスパイだったら積極的に協力した方が良いんじゃないだろうか。


「敵の敵は味方、と言う言葉はありますが、ほとんどの場合それは通用しません。アナキア以外にも少数ですが反体制派の組織は存在しており、組織間で覇権を争っています」

「覇権って・・」

「最下層では政府の目はほとんど行き届いていませんから。アナキアのような組織が物流などを裏から支配しているんです」

「政府が潰したりしないのか?」

「物流も手がける他業種会社というくくりになっていまして、権利違反をしているとは見なされないんです。そうなると、私たちには手も足も出ません」

「なるほど」


うまく権利の隙間をかいくぐっていると言うわけか。


「というわけで、戻ってくる人は他組織のメンバーである可能性が高いので十分注意してください」

「わかった。潜伏するのは俺一人だけなのか?」

「はい。人数を増やせば増やすほどスパイに情報が漏洩するリスクが高まりますから」


では、任せましたよ!という言葉とともにあいつは部屋を出て行った。

あいつの部屋を物色する趣味もないので、俺もとりあえず自室へ戻ることにした。

あいつによると作戦決行は翌日。それまでは俺も普通に過ごして言いとのことだが、何の仕事を任されたのか聞かれたら他の人と同じと答えろとのことだ。


だが、多くの人はあいつに飛びかかった新米Aに気を取られて俺のことは覚えていなかったらしい。

特に何か聞かれることもなく夜が更け、そして夜が明けた。


目が覚め、食堂に降りると既に人影はない。


大規模作戦とやらの開始である。


ーー


「・・・暇だ」


もう昼過ぎ。食堂にも人がいないから、朝飯と昼飯はしょうが無く厨房に入り込んで自分でこしらえた。

といっても、肉を焼いて調味料をかけただけなんだが。

料理スキルなんて無いからな。


それにしても暇すぎる。


結局、今までで誰も来なかったし。というか、作戦っていうのはいつまでなんだ?俺はいつまでここにいなきゃ行けないんだろうか?


なんてことを食堂でだらけながら考えていると、噂をすれば影とでも言うのか、建物の出入り口から物音が聞こえた。


この建物の入り口は、入るとすぐに巨大なホールというかドームがあるので、物音が建物中に響くのだ。

だから、こちらが何か物音を立ててしまったとしても侵入してきた人に聞こえることはない。

それでも念のため物音を立てないようにそろそろとホールへ向かう。


食堂は二階にあり、入り口前のホールは建物の最上階まで吹き抜けとなっている。

つまり、二階にいる状態で上から確認が出来るというわけだ。


吹き抜けまで到達した俺は、手すりからそっと顔をのぞかせてみた。

下を見ると、銀白色のローブを身にまとった何者かが辺りをゆっくりと見回しながら歩いていた。

そいつが着ているローブにはフードが付いており、フードを目深にかぶっているため人相まではわからない。


そして今の俺が持っている武器は、近接戦闘用のスタンガンのみ。まあ、代行者が持っているような武器を持たされても困るんだが。


二階なら、飛び降りても何のダメージも受けないだろう。

一番良いのは上からの奇襲。飛び降りて、その勢いでスタンガンを相手に押しつけ無力化する。

これでいこう。


相手はちょうどホールの三分の二程度のところを歩いている。

ジャンプも併用すれば攻撃が届く距離だ。

よし、行くぞ!



俺は斜め前に向かってジャンプした。

風を切る音は若干聞こえてしまうだろうが、気付いた頃にはもう避けきれないだろう。

あと、一メートル・・・もらったっ!


「・・まさか、近接戦に持ち込もうとするなんて」


・・なに?


直後、俺の体は紙のように軽々と投げ飛ばされた。

相手と強制的に距離が開いたが、体のダメージ自体はない。

ただ投げただけなのか?


「おや、あなたは、最近城に来た人ですか?」


鈴の鳴るような美しい女性の声。

そう思ったのも束の間、その人は不意にかぶっていたフードを脱いだ。


「・・あんたは」


銀白色の髪をしたその女性ほど美しい人を俺は見たことがなかった。


「私はコンフィアンザと言います。皇帝陛下の妃です」

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