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アイス買いにいったら、知らないうちに人間辞めてました  作者: 森宮 桧
第二章 人間辞めても心は人
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第四話 アントワネット理論

レポートを読みます。


いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

次の日、僕は体調を崩した。




―意図的に。



でなければあの冊子を読むことなどできないからだ。かなりの量があり、しかも内容的に流し読みするわけにいかない。というわけで、僕には時間が必要だった。


そこで思い付いたのは昨日学んだ魔力の強制循環だった。

この世界では全ての生命体に魔力が循環しており、治癒魔法で治らない病はそれの乱れだと言われている。

魔力循環はそういう病に効果的だと習ったのである。

ならば魔力を強制的に循環させたならどうなるか……というわけで。


僕は午前中のお婆様ズ・ブートキャンプを終わらせると、魔力を全身にめちゃくちゃに循環させリバースしたのだ。

そのまま昼食を辞退、自室で寝込んだのである。


……実際、魔力の強制循環は辛かった。寝込んだのも半分は本当だ。

胃がひっくり返ったと思った。

これ冗談抜きで全力でやったら体爆発するや。なんか体全体が脈打ったからね。

もう二度とやらない、と心に誓う。


それはともあれ、今僕はジンさんのレポートを読んでいた。


それによると、

この世界は一度滅びかけたらしく、その原因は初代勇者であること。

また初代勇者はどういうわけかこの街を作り上げ、大陸の人々をまとめたこと。

そのお陰で街を中心にグリュナー聖王国が誕生。

この辺りで初代勇者の記述がなくなるため、帰還したのではないかと言われている。

初代女王はこの街で犯罪を犯せないことをいいことに、法律に触れない最低限の善政をしいたあとは自身の趣味に没頭した。それが勇者召喚だったのだ。

勇者召喚は何回か成功した。しかし、帰還法がないことを知った勇者がキレて国を出た。


そして一部住民を引き連れて決起、街を出て隣に『ガーシュウェル大帝国』建国。

政治は上手く行き、そこそこの繁栄を見せたが、グリュナー聖王国は召喚主の女王に従えと宣戦布告。


そうしてグリュナー聖王国は次々と勇者を召喚、大戦争に踏み切った。

ガーシュウェル大帝国はそんな勇者達を唆したり、素直に倒したりしながら奮戦。停戦条約を結んだ。


と、まあこの後は小競り合いを繰り返したのだが、グリュナー聖王国は煮え切らない戦いに痺れを切らして外道な実験を開始。


目的は表向きが『圧倒的戦力で帝国を排除すること』で、

裏向き(女王的)には『マンネリ化した勇者召喚の研究発展』である。


肉体改造や投薬を繰り返し、多大な犠牲を払って狂戦士のような勇者を作り出した。

壊れた勇者の処理に困り、その際に送還陣ができたという。

ここまでが三代目の女王達がしたことだった。

逆に四代目、五代目(当代)は


『人で強くなれないなら種族を変えればいいじゃない』


の、どこかのアントワネットさん真っ青の理論を元に、召喚陣に手を加えての種族転換に実験方針を変えて勇者召喚を行ったようだ。


で、結果が僕や今現在生きている四人というわけである。

無論いきなり成功したわけではなく、最初の方は召喚時に負担がかかり発狂、その場で処分……となったとのこと(多分これが女王に歯向かったという解釈なのだろう。アムリーさん優しい)。


女王の性格については絶望することしか書いていなかった。

男性が全く信用できず、勇者召喚でも男性は少しの疑いで捨て駒にされ、女性は全員、意思を奪う『隷属の首輪』を付けて愛玩奴隷に成り果てるというのだ。それに『隷属の首輪』は、自害を許さず、意思はなくなれど記憶は残ると言う鬼畜仕様。


この事実を読んで僕の心には怒りを通り越して冷静さが表れた。

あまりにもバカらしい。

しかも結局これ全部、理由が『趣味』なんだろ?

救いようがない。


さらにこれ、そろそろ戦い始まるよね?僕らの試験運用成功したら全面戦争じゃないか。


時間制限、絶体絶命、疑心暗鬼!


はい、思った以上にハードモード!


キャラ変わるくらい呆れるよ。


「……ん、そろそろ終わりか……」


レポートの最後の方は城の警備と女王の目たちの説明だった。


そして最後のページ、ここには召喚された勇者の名前が書き連ねてあった。

死んだ勇者には斜線が引いてある。

自分を含む、最後の5人を見て僕は固まった。


「………おい、嘘だろ」


吉野忠洋よしのただひろ 『ナイトメア』

鬼庭亮おににわりょう  『鬼』

愛川仄あいかわほのか  『九尾』

八都涼風やとすずか 『兎』



そこには、『五銃士』……もとい、友人たちの名前があった。


「そんな、………まさか」



血の気の引く、音がした。



        ☆



それからのことはよく覚えていない。

ただ僕は、感情的に女王を殺しはいかなかった。


本当は今すぐ対策をとって四人を助け出したい。


多分、一日目にこのレポートを見ていたら殺しに行っていただろう。そしてきっと死んでいた。

しかし、一つの存在が僕の足を止め、思考を強制的に止めた。

お婆様である。

あの人には絶対に勝てない。

女王を殺す上で少なくともスルーできる存在では、到底ないはずだ。


ならどうするか。


そこで僕の頭をよぎったのは、ジンさんの言っていた『本にいる子』だった。

味方につけろ、といわれた以上は味方にするメリット―つまり、強みか強さを持っていると考えてしかるべきだ。


幸い、夕食まではまだ時間がある。


僕はアムリーさんからもらった地図を片手に、部屋の窓に足を掛けた。



「もう少しだけ……待っててくれ」


まさに、パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。の考え方ですね。


日本人風に言うならなんでしょうか。


ご飯がなければ漬け物を食べればいいじゃない、でしょうかね?


なんか違う気がします(。・д・。)

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