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アイス買いにいったら、知らないうちに人間辞めてました  作者: 森宮 桧
第一章 プロローグ 初代勇者様
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 決着

タイトル通り決着です!


いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

なんの因果か少女に与えられるはずだった本に封じられることが決定したことも知らず、少女は今日の寝床を探していた。



「うーん、野宿か家を借りるか……悩み所だなぁ」



家は有り余っているうえ、作製者は少女である。本来は迷うはずはないのだが、少女は寝ている間の襲撃について懸念していた。



「突撃!隣のスーパーお爺ちゃん……冗談にもなってないわ」



少女は呟きつつ路地裏をうろうろしていた。そしてため息をつく。

逃げられるビジョンが浮かばないためだ。少女が考える限り、あのスーパーお爺ちゃんと精霊のコンビからは逃げられる予感がしないのである。



「どうしよう……」



少女はふと上を見上げた。

そこには少女が植えた美しい桜が咲いており、少女に日本での数少ない記憶を甦らせた。



「花見……楽しかったなあ」



少女は桜の木の根本に座り込んだ。

そしてうとうとと、なぜか無防備に眠り込んでしまったのである。




三十分後。

物陰から老人と精霊が出てきた。


「嬢ちゃんにはすまないことしたかの?」


『あの桜はあまりに美しい。それに見とれる彼女自体が邪悪だということはないだろう』


「そうさのう。しかし、わざわざこの路地一体に睡眠魔法を掛けて正解だったかの」


『……そうだな。ではいくぞ』



精霊は、白く装丁された本を取り出した。それなりの大きさであり、表紙等には軽く装飾があった。


この本は魔道具『知恵の遺物(インテリジェンス)』である。代々、特別な精霊が一生を懸けて作り出す本であり、所持者の血液を垂らすとその者の知識を全て記すという効果を持つ。


そのため魔導書などはほとんどがこの書物でできている。

更に、血を垂らしたことで本が所持者を体現する装丁に変化するようにもできているので、同じ本は一つとしてない。


精霊はそれをこっそり少女の足元に置く。

また、老人は少女に悟られぬため、小さな声で詠唱を開始した。

精霊はそれにあわせてハミングする。

こうすることで魔力を同調させ、またタイミングを測りやすくするのだ。


少女は気付かず眠り込んでいる。いくら世界を滅ぼしかけた少女でも、戦闘経験は少ない。故に気配とか、そういうものは読み取れないのだ。



「……唯、潰えるほどに永き時、沈めるは海底の王の如し。唯、消えるほどに永き罰、与ふるは時間の王。叡知を代償として、遥かなる眠りに誘い給え。」


『精霊とその神名を以て我は命ず』


「人の代行者としてこの世に頼む」


「『絡繰時計(ヘブンズドア)』」



少女の足元に大型魔方陣が展開する。

それと同時に本にも多数の魔方陣が重なり、控えめであるが輝きを放つ。


老人と精霊は術の成功を疑わなかった。ぼほ魔術は完成していたのだ。


しかし、魔術はあとほんの少しのところで激しい抵抗に会った。


少女が自身の力の流出に気づき、睡眠魔法を破ったのだ。

そして封印魔法は知らずとも、本能の伝達する危機に全力で抗っていた。


そして老人と精霊にとって不利なことは更にあった。

そもそも少女はこの街全てに禁呪を掛けている。つまり、この街は少女の魔力に包まれているのだ。そこにいくら上書きしても、抗えるだけの魔力はあったし、封印魔法を内側と外側から突破しようともしていた。



「ぐっ………」



老人は自身の魔力がガリガリ削られていることを自覚した。全身から嫌な汗が吹き出す。でもここで逃したら次死ぬのは自分達だと言い聞かせ、老骨に鞭打った。


精霊は内側から物凄い力で押されているのを必死に食い止めていた。もうすぐで食い潰されてしまいそうだった。


そこで、老人は精霊に提案した。


全員を包むように遮断魔法か封印魔法を掛けろと。


精霊は承諾せざるを得なかった。

このまま魔神ではないにせよ、悪魔に等しい存在が野に放たれるのを見過ごすわけにはいかなかった。


精霊は簡易的な封印魔法を多重化し、裏路地全体を覆った。これで少しは少女の魔力を遮断できるはずである。

精霊に内側からの圧力と、更に外側からの抵抗が襲いかかった。

人間であれば一瞬で紙のように圧縮されてしまう圧力に、魔力体である精霊ならば耐えられる。

それでも擬似的な圧迫感があった。

精霊は密かに決意した。これで押さえきれなかったら……自分達の命を懸けるしかないと。



「どうして………また縛るの」



少女はこちらを強く睨みながら、苛立ちを隠せない表情でぽつりと言った。

その言葉は、精霊の逆鱗に触れる。



『私達を滅ぼしておいてなんて言い草だっ!』



精霊は怒りのあまりハミングも忘れ、叫んでいた。

精霊の故郷は焼き滅ぼされ、同族は数えるほどしかもういない。第三の大陸にいるのを除けば、もう彼以外の生存は絶望的だった。自然発生するにしても、あと何年かかるかわかったものではない。


思い出せば今でも目の前には焼け爛れた妖精達に、昏い瞳を俯かせて倒れる精霊の光景が目に浮かぶ。

精霊は涙を流し、そして怒りに呼応して体が輝いた。姿の維持に使っている魔力も封印魔法に注いだのだ。


精霊の怒りは少女の魔力に勝った。


少女が一瞬、目を見開く。


「そんな……嘘」


そう一言残し、次の瞬間には足元の本に吸い込まれていった。


それと同時に本にも変化が現れた。

白い表紙は群青色に染まり、白い花の模様ができる。上品で美しいそのデザインに老人は意表を突かれた。


本のデザインはその人の心を表す。

こんな清楚なデザインは意外という他なかった。世界を滅亡させた張本人のこと、もっと邪悪な心の持ち主でもおかしくないためである。


そして、封印魔法の証として銀色の鎖が本を縛った。これを破るのは並大抵では不可能だと精霊は確信する。

精霊も最後の攻撃のせいで足を構成する魔力がなくなり、足が霞んでいる。

それでも悔いなく笑う精霊の頬を涙が再び伝った。


『エミルリア、ナイトカース、ユカリス……お前たちの仇は討ってやれないけど……もうこんなことは……っ、させないから………うっ、うっ』


そのまま精霊は泣き崩れ、その背中を老人がさする。


かくいう老人も何人もの友人を失っているため、喜んでいないわけではない。むしろ喜ばしく、誇らしい気分だった。



「帰るぞ。仕事は始まったばかりじゃ」


『………はいっ!』



老人は最後の魔力を振り絞り、この裏路地を封印する。誰もここに来たいとは思わせないという、無意識を封じる魔法である。

そして老人は精霊に呼び掛け、裏路地をあとにする。

精霊は涙をぬぐい、老人に続いた。




こうして、自由を求めた少女は封印された。



老人と精霊は知らない。


少女を封印した本の《裏表紙》に何が書いてあるかなんて。


その本は封じられし者の本質を現す。

裏表のある少女ならどうなるだろうか?


裏表紙にかかれた一つの呪文。


それは約束と言う名の隷属。


友情を越えた約束(オーバーウエディング)


―と。




この後、お爺ちゃんはこのことを隠蔽します。


悪人に封印を解かれることを恐れたためです。


お爺ちゃんはこのまま新しい国作りにせいを出し、初代宮廷魔術師に就任します。


さて、時代は大きく変わって500年後。


遂に主人公登場!

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