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アイス買いにいったら、知らないうちに人間辞めてました  作者: 森宮 桧
第一章 プロローグ 初代勇者様
2/57

試行錯誤

星河さんの物語は恐らく4話構成です

四ヶ月後。

少女は途方に暮れていた。

少女の周りには花が咲き乱れた美しい町並みがあった。


道はありとあらゆる裏通りまで白いタイルに覆われ、一つの噴水から道が放射状に伸びるスタイルをとっていた。

噴水からは小川に繋がり、そこから町の外の小規模な湖に繋がっている。


裏通りも何もないわけではなく、隠れスポットのように桜が咲いていたり、楓が植わっていたりする。


しかも道には劣化防止、破損禁止、妨汚等の術がかかり、町並みが崩れないようになっている。


町の周りも白樺や針葉樹が見事なバランスで植わり、もちろん道も完璧に整備してあった。

耳を済ませば小鳥の声が聞こえ、草原を探せば仲睦まじく暮らす兎の親子が見つかる。

まるでそこは地上の楽園とも言うべきなほど芸術的で、素晴らしい。



―ただし、人はいなかったが。



少女は悩んでいた。

人が作れない、ということに。

小鳥や兎、その他、昆虫や動物は生態系が乱れないように『生命創造クリエイト』で作り出した。

不思議なことに『生命創造クリエイト』は少女の知らない動物と昆虫を作り出した。少女はイメージに生態系しか思い浮かべなかったため、生命体にはこの世界の物が適用されたようだった。


その中でただ一つ、人間だけは作れなかった。


「生命倫理とかそういう問題なのかな?そんなことはないはず。リンとか合成したら出来るか?いやないか」


少女はぶつぶつ呟きながら歩き回る。

どうしても独り暮らしは独り言が増える。


「召喚術か?いややめよう。私みたいのが来るとめんどくさいし、それだけでどっかの国が滅びそう」


やはりあれか、神様的な奴の生き写しなのか人間は。劣化版なのか……と、少女は不敬ともとれるようなことを呟いた。

もちろん、神がいればの話であるが。


そして、ふわりと飛び上がり、周囲を見渡した。周囲といっても大陸全土だが。

遠視ファーラウェイ』を使用して、人が生きていけそうな川沿いを見ていく。

そして、少女は大陸の隅っこに集落を見つけた。


木切れではなく土で作ってある。当たり前だが、少女が復元したところいがいはまだ焦土である。つまり、まだ大陸の三分の二は何もない大地が広がっている。

ボロボロになって朽ちているような家に、同じく土で作ってある鍋がかかり、濁った水が貯まっていた。


そんなところでの生活がうまくいくはずがない。

少女が再び『遠視ファーラウェイ』を使用すると、住んでいるのは40人ほど。ほとんどがさっきの水のように濁った目をしている。

全体的に生気がない。自殺できないから生きてしまっていると言うような有り様だった。


それを見た少女は迷わなかった。

刹那、集落を魔方陣が包む。

瞬きしたあとには、人とその私物らしきものが適当な家に転移した。


また身勝手にやってしまったと少女は思っていた。

一応、食べ物や飲み物には困らないようにはなっているが、法整備やライフライン、まだまだ足りないものは多い。

トラブルも起きるだろう。


しかし、あのまま放置して全てが整ってから転移させたら何人残っているか分かったものではない。


ちなみに、少女の頭の中には『そもそも世界を滅ぼしたりしなければいい』や、『人口に見合わない街を与えない』といったまともな考えはない他、『自重』とか『偽善者』みたいな言葉も存在しない。


色々歪んでいる、壊れたと言えばそれまでである。


かくして、小さな限界集落は転移させられた。



        ☆



転移魔方陣の失敗がないことを確認した後、少女は眼下を見下ろした。


上空から大陸と街を眺め、少女は一つのことを思い付いた。

法律のことである。


「禁呪の『友情を越えた(オーバー)約束ウエディング』を使えば……法律が出来るや」


ちなみに、この恐ろしい名前の付いた禁呪は少女が作ったものである。結婚に対する少女の偏見がうかがえる一品だった。


効果は、魔力と思いが続く限り、対象に約束を守らせる、である。

少女はこの禁呪を作ったとき、思いに重きを置いた。つまりこの禁呪、魔力が扱えなくてもその分、思いが強ければ使えたりする。


少女は問題が一つ解決したことに顔をほころばせ、即座に実行した。

くどいようだが、少女に『自重』という言葉は存在しない。


「『友情を越えた(オーバー)約束ウエディング』……効果範囲、この街、禁止事項は……」


禁止事項にとりあえず少女は最低限のことを設定した。最初は『嫌なこと全部』にしようと思ったのだが、ギリギリで思い止まった。正義と悪の区別もつかないのにそんな曖昧なことを言えなかったのである。

罰は厳しめにした。即座に魔法で効果が出るため、裁判は省略し即座に実刑が下るシステムだ。その人の行動に罰が直結するため冤罪等はあり得ない。


その他、年齢制限も設けた。赤ちゃんとかがうっかり人の物を盗ったときに全神経硬直のような罰が下ると死にかねないためである。


「あとは………なんだろう?あ、人間に天敵がいない……」


相変わらず恐ろしいことを考える少女であった。

このままではまた人間が増えまくってしまう。


「かといって下手に魔王でも作ればまた私みたいなのが生まれる……」


悩む少女であった。

少女は一旦悩むのをやめた。

今は増えても問題ないからである。むしろ増えていただかねば滅亡してしまう。……少女のせいだが。

気まぐれに地上に降り、街を見に行った。

第一印象はなかなかうまくいっている、だった。

もう『友情を越えた(オーバー)約束ウエディング』の効力が出ているようで、盗みを働こうとした少年が電撃と共に吹き飛ばされていた。

少女はそれを見ながら、年齢制限も上手くいっていることを確認した。


「やっぱり、盗みは事前には防げないなあ……」


殺人はとりあえず即座にその場にいる全員が殺意の大きさに比例して硬直する。

リンチを避けるための方策であった。

実際には、襲われることに気づいていない一般市民には良策だろうが、常に殺意に満ちていたり、襲われる前から臨戦態勢だったりすると逃げたりできない。前者の場合はそもそも街に入れない。


中々いい出来―もとい、恐ろしい効果である。


少女は色々と生活環境を見ていく。

足りないものはあまりないようである。服が足りないと思っていたのだが、人々の私物に布がある他、糸を作る元となる羊……のようなもの(羊にしては色が黒い)や、アルパカ……のようなもの(アルパカの生存できる環境なのだろうか)を家畜にしていた結果だった。

家畜はどうやら町の外に広がる草原の一部を使用したようだ。


少女はそこまで自分の目論見が失敗しなかったことに安堵した。



「そこの恐ろしい嬢ちゃんや」


安心もつかの間、とんでもない言葉を老人にかけられた少女であった。


星河さんはどうやら結婚という言葉が苦手な様子。

でもこれは星河さんの偏見に過ぎません。


ちなみに、この世界には大陸が三つあります。

この時点では第一大陸に星河さんはいます。

世界崩壊騒動で、そのうちほぼ無事なのは第三大陸です。

食料補給のためだけに星河さんはこの大陸を残しました。

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