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アイス買いにいったら、知らないうちに人間辞めてました  作者: 森宮 桧
第一章 プロローグ 初代勇者様
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思いつきで世界崩壊

この度は「アイス買いにいったら知らないうちに人間辞めてました」を読んでいただきありがとうございますm(_ _)m



プロローグは初代勇者のお話です。

ある日あるところに一人の少女がいた。

両親は海外を飛び回っていたので、叔母の家で暮らしていた。


つまりはまあまあ普通の一般家庭で暮らしていた。


しかし幸せではなかった。

少女の価値はいつも誰か、または何かの意思ひとつで変わると少女が強く感じていたからだ。

叔母は優しいが叔父は優しくなかったし、叔母もただ同情のみで自分に優しいと子供ながらに見抜いていたからだ。


両手で掲げられた陶器のカップのように、不安定だった。

いつ手を離されるかわからない。

手を離されれば、割れてしまう。

ほぼ全ての人の顔色、態度を伺い、言葉の一つ一つに気を使い、成績や素行までも完璧に操作した。

歳を追うごとにその術は完璧になっていった。

 

全て少女の思い込みかもしれなかった。

しかし絶対に確認できない、悪魔の証明に近かった。

友達はたくさんいても、誰も彼も何かあればすぐに遠く離れてしまう。

自分に陰口を叩く存在を確かに把握していた。そして理不尽とも思わず、当然と思っていた。




そんな少女は、ある日突然異世界に喚ばれた。




「世界を救ってくれ!」


小太りの王に叫ばれた。

人とは信じられないほどのスペックをなぜか与えられ、偉そうな人々に頭を下げられた。

少女は考える時間として二日を要求し、その間に情報収集に勤しんだ。

そして、国内外にたくさんの問題を抱える王やその側近の黒い内感情を察した。

世界だかを救って共通敵がいなくなったあとはあとは戦争で使い潰されると。


だから少女は二日後、にっこり笑った。

そしてその笑みで世界を救ってもらえると思い込んだ王と重臣共に言ってやった。


「お断りいたします。

凍結タイムオブ時間レクイエム』」


与えられた2日の間に確認した、魔術やらスキルやらの中で今使える最も強い物、つまりチートを行使した。


その名も『創作魔法』。文字どおりどんな魔法でも作れるスキルだった。


それにより創られた魔法、『凍結タイムオブ時間レクイエム』の効果は、「本人の精神力と魔力の消費に比例して周囲を凍結させる」である。


結果は、大陸の半分より少し少ないくらいの面積が凍土に包まれた。

王宮も例外ではなく、少女の前には驚いた顔や、無表情の氷像が立ち並んだ。


精神力と魔力を使い果たした少女はたまらず倒れこむ。

凍った床に寝転び、壮麗な天井を見上げた。


「あぁ…………これか」


冷えて澄みきった空気を吸って、ぽつりと呟いた。

息は上がり、魔力とやらを使い果たした代償か胸が痛く、目の前は霞んでいた。

でも確かに感じる、今まで心を押し潰していた重圧が軽くなっている。

今なら本音も言えそうだ。


「……………これが、自由かぁ」


もう誰の顔も、顔色も、態度も、見なくていいんだ。

気持ちも考えなくていいんだ。


突然の重圧からの解放に少女の頭はちょっとネジが緩んだ。

ネジが緩んだというか―少女にとって今まで一番したかったことの我慢が効かなくなった。


即ち。


「何で皆こんな自由をいつもではないにせよ味わってるの?許せないんだけど。時間返せよ」


理不尽に怒ったのである。


確かに少女はかなり他人に気を使って生きている。かといって全て他人に合わせるでもなく、見事にバランスをとって生きていた。

皆に好かれるしっかり者として。


困ったこともたくさんあった。

わがままもたくさん聞いてきた。

愚痴だって聞いた。

かわりに少女はみんなの言ってたこと、やってたこと、なにもしていない。

聞き分けも物わかりもいい人として。

確かに貧乏クジを進んで引いたのは自分だ。

でも、だけど、と、少女の中にやり場のない怒りが渦巻いた。


「…………そっか」


少女は思い込む中で閃いた、というか、気付いた。

この世界に私を呼んだ、王にそうさせた奴の意図に。

そう、神様的な何かの意思に。


「私がここに来たのって、自由になんでも、今までできなかったことをするためか」


残念なことに少女の頭をはたいて「調子に乗るな」とか、「落ち着け」言ってくれる優しい大人はいなかった。皆凍っていた。


瞳に狂喜が宿った。

神様的な何かに感謝した。

少女はふらつきながらも立ち上がる。

そして自分と、世界に向かって宣誓した。


「この世界………滅ぼそう!」




三ヶ月後、世界の生命、その約97%が死滅した。


理不尽に。



        ☆



焦土と化した地に少女はいた。

青い空、白い雲、遥か彼方には海も見える。そんな平和な世界の一部を見て少女は微笑んだ。

笑顔は召喚当時とまったく変わらない。

ここは少女が召喚された王宮跡地である。もっとも、王宮どころか周りの町もなにもかもなくなっているが……。


「そういえば」


少女はふと、王の言葉を思い出した。


「『この世界を救ってくれ』……ある意味達成したと言えるのかもね?」


返事はない。

生命の気配すらない。


「懐かしいなあ」


少女は決意したあとのパワーレベリングを思い出した。

意外かもしれないが少女は怒りのまま全てを滅ぼしたのではない。

いくら『凍結タイムオブ時間レクイエム』が強くともレベルは低かった上に、魔術や武器も心もとなかったからだ。

いちいち倒れていては戦えない。

まず少女は王宮の武器庫や書庫に向かい、そこでありとあらゆる知識や武器を見繕った、もとい、強奪したのである。

そうして手に入れた魔導書を必死で読み込み、暗記し、武器を持って必死に独学と本を用いて練習した。

氷像もいっぱい壊した。

綿密な計画の上で街を焼き払った。


実のところ世界滅亡はかなり計画的に行われていた。


「でも、これでやりたいことは終わったや」


少女はかなり勝手なことをほざいた。

この世界の住人からしてみれば憤死してしまいそうな台詞だ。

実際少女に人の命がなんたらとか営みがどうとか、そんな殊勝な考えはない。

禁呪レベルの魔術を放った結果、程度にしか思っていない。

きっとこの場で人殺しは罪だということを少女に言ったら、きっと少女はこう言うであろう。

「罪なのは知ってるけど、だからなあに?」

と。

物事の優先順位がめちゃくちゃなのだ。ネジが緩んでいるといえば、そうであろう。亡くなったら作ればいい。なくなったら、探せばいい―そんなおぞましいことを考えてさえいた。


「次はなにしようかなあ」


少女はしばし考えたあと、自分のしたいことがもうなくなっていることに気がついた。

そして、つまらなさそうに地面を蹴る。


「もうしたいこととか、ないかも」


もとからしたいこともなにもかもほとんど他人に抑制されてきた少女である。


溜まったストレスを発散することいがいしたいことなどないかもしれなかった。

自覚するために声に出した。


ふらふらと少女は座り込んだ。

なにもない赤茶けた土地。

少女は王宮を凍結させたあの日のようにごろりと寝転がった。

ぼんやりと思い出すのは学校のことだった。

笑っている自分の周りにいるのは朧気にしか覚えていないクラスメイト。


「あんな日々でも……楽しかったかもね」


少女はぼうっとし始め……いつのまにか眠ってしまった。


少女は夢を見た。なんだか楽しかった、そんな夢だった。起きたあとはすっきりとした気分で……しかも、やりたいことが見つかっていた。



「もう一度……作り直そう!」




世界を、作り直そう。



酷く自分勝手に、適当に、また世界が生まれた。





少女の苗字は星河さんです。

ちょっとネタバレになるので名前は伏せます。


星河さん、かなりの被害妄想ですね!胃が痛くならないんでしょうか。作者はこんな生活したらきっと一週間で胃に穴が空いてしまいます。いてて。


星河さんは召喚されたとき、固有スキルとして『創作魔法』を獲得しました。

それを使って魔法を沢山創り、戦力としたのです。

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