第二話―聖&コメット&リフレク side 2『現状』―
お久しぶりです。
仕事が落ち着きまして、ええやっとです。
再開しますよ!
ごめんなさい遅れました。
ちょいちょいupします。
ちょっとした出来事
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リフレクは次の対戦相手に一喜一憂しつつ、その結果を伝えようと聖達の元に向かった。
リフ「まったく、対戦相手に興味を持たないなんてもう!」
リフ「そうだ、なにか買っていきましょうか!?」
リフ「メンバーで暖かいモノを一緒に……えへへへ」
リフ「いえいえ、これはそう、補給のためです次の対戦のために!!」
リフ「さ、早く戻りましょうか!」
そうして会場を駆けていく
*****
控え室に隣接する治療室。
下着姿になり簡易なベッドに腰掛ける黒木聖は、自らの体にうっすらと残る傷に触れた。
肩から腰元に斜めに入る赤いライン。
「もはや痛みは感じないが、これ消えないのか?」
聖の問いかけに、先程まで傷の状態を触診していたコメットがため息を吐く。
『残念ながら、私には治すことは出来ませんでした』
「そうか……普通の傷とは違うのか?」
『私にもどうなっているのか……』
「ふーん」
コメットは申し訳なさそうにしていた。
先程の試合で怪我を負ったのは戦っていた聖のみだが、他の傷はコメットの手によって完治したが、対戦相手の侍によってつけられた傷だけは治すことが出来なかった。
傷を触っている聖だがあまり気にしてないように見える。
「まぁ、水無月に頼めば、何か万能薬とかくれるかもしれないな! 」
結局あの謎の宝箱だよりになってしまうのか……とちょっと寂しいコメットであった。
この部屋に時おり大きな揺れや、歓声が響いてきていた。
他の試合をしているのだろう。
対戦相手にあまり興味がない聖とコメットは、この部屋で聖の治療をして状態を確認していた。
あまり興味を示さない二人に、『そんなんで出たんですか!?』『実は勝ち残る気ゼロ!?』と驚いた後、魔女のリフレクは試合を見に会場に飛び出していった。
聖は飛び出したリフレクに『誰が相手でも全力だ!』と言うが、リフレクはもうその場にいない。
きっと聞いていたなら、『やっぱり脳筋なんですね!?』と言われそうである。
コメットから渡された予備の服を着ている聖。
コメットは聖のカードを眺め、眉を寄せる。
カードは、スマホの大きさで厚みもそこそこあった。
そこには、所有者の名前、性別、種族、特性、固有魔法、保有スキル、発動スキル、など現在のステータスが書かれているモノだ。
これはこの世界の住まう殆どのものが持つものである。
本来は他人に見られるのはかなり危険なことだ。
聖のステータスを見ていたコメットは、顔をあげた。
そこには袴から着替えた聖がいた。
『もう棄権しませんか?』
「むっ……嫌だ」
着替え終わった聖は、今とても不機嫌ですという顔を作る。
せっかく勝ったのに危険なんて御免だ、それに目的の上質な転移結晶を手に入れるのに最短はこれに勝ち上がることだ。それを分かっていないコメットではないが、しかしコメットは不安だった。
聖一人で相手を倒してしまったが、二回戦もそう行くとは限らないし、侍みたいに特殊な技を持つヤツもいるかもしれない。
いや、きっといるのだろう。
そんな中を勝ち上がってくる連中と、戦うことになればどうなるか予想がつかない。
「ん? もしや、私の武装のせいか?」
そういう聖は、手を剣と盾に伸ばして引き寄せる。
『聖ちゃんは分かっていると思いますけど、聖ちゃんは武具によって強さが左右されるのですよ?
もしこのまま出るなら装備は取り替えるべきですね』
コメットの視線先にある聖の愛剣と盾は、試合前とはうって変わって輝きがなかった。
そんな台詞に物凄く嫌そうな顔をする聖。
「む、そんなに性能は落ちていないぞ!!」
愛剣と盾を抱き締め抗議していた。
『自分で鑑定して見てください、それでも言いますか?』
コメットに叱るように言われ、聖は鑑定した。
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銘:ネビリス・聖
付与スキル:【不//壊】【闇属性//強化(低)】
銘:ルーサルファ・聖
盾形状:六角型ベース
付与スキル:【魔法//吸収(中)】【魔法//反射(中)】【闇属性//強化(低)】
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「…………」
鑑定を終えた聖はコメットに真剣な目を向ける。
「なんか、スキルがバグった……」
『バグった?? えっ、ちょっと見せてください』
コメットが鑑定を発動する。
『…………なんでしょう?』
しばらくして、顔を聖に向け―――。
コメットもわからなかった。
武具の輝きが失われていたことは気づいていたが、内情まで理解していなかったコメット。
きっと侍の攻撃によるものだろう。
すると切られた聖はどうなる?
『黒騎士の護符』によって身代わり効果が発動したが、消えない傷から嫌な予感がする。
(まさか!?)
コメットは聖のカードを一文字も見逃さないように真剣に見る。
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【魔(中)】
名:黒木聖
MP:3200 / 21300
種族:ブラックパラディン
タイプ:人系
固有魔法:【黒白の波動】…光と闇属性の魔法を無効にして吸収する常時発動魔法。
発動スキル:『【剣身一体】【魔法無効(中)】【魔法剣技】【盾心一体】』
保有スキル:【偽宝箱の恩恵】【身体強化(中)】
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特に異常は見つからなかった。
コメットはホッとしていた。
となると侍の剣技によって効果が及んだのは【剣身一体】と【盾心一体】の影響下にあった剣と盾だけということになる。
もし身代わり効果がなかったからどうなっていたことか、
コメットはヒヤッと背中に感じながら、やはり提案をする。
『こんな状態の武具ではこれからの戦闘では役にたちませんよ?』
そういうコメットに部屋の入り口から援護があった。
「そうそう、スキル斬られたんでしょう?
やめといた方が良いけどなぁ、あとそれもう性能は木の盾とか木刀並みまで落ちちゃってるからねぇ」
パタンと入り口を閉め入ってきたのは、先程まで会場で実況と審判をしていた198層を守護する迷宮幹部のコカトリアだった。
「………何しに来たんだ?」
「いや、ちょっとね?」
顔をそらし、何かを隠すコカトリア。
(様子見てこいって頼まれただけなんだけど………)
「ふーん、まぁいいか」
追求してこない聖にほっとする。
「それで、『スキルを斬る』ってどういうことだ?」
「そのまんまの意味よ? 因みに斬られるとそのスキルが使えなくなる強力な剣技ね」
眼を見開く聖とコメット。
「じゃ、じゃあ、この武具はもう………」
「そっ、役に立たない」
「っ!?」
そう言われた聖は無意識に今まで使っていた剣と盾をぎゅっと抱き締めていた。
眼に見えるほど落ち込む聖にコカトリアは、
「まぁ………その、あれよ? それのお陰で自身のスキルとか失わずに済んだからいいじゃない?」
なぜかフォローをしていた。
目の前で落ち込んでいる人がいれば、何かして上げたくなるのは転生しても変わらないらしいと、コカトリアは自分で納得してた。
俯く聖に掛ける言葉が出てこないコカトリアはコメットをチラッと見るが、コメットは聖に身振り手振りで何かをしていた。
残念なことにコメットの声はコカトリアには聞こえなかった。
「だが……」
『……っ』
「いいんだ、もう」
『……………?』
「それは嫌だ」
というようにコカトリアには二人が何を話しているのか分からないが、コメットが説得しようとして聖が駄々をこねていることは理解できた。
(よくわかりませんけど、コメットちゃんに協力すればいいんですかねぇ?)
コカトリアの目には出場を嫌がっているように映っていた。
「そういえば、審判して気づいたんですけど、勝ち上がった殆どの選手があの宝箱産の武器やアイテム使ってましたよ? いやぁ、結構なチート性能ですよねあれはまったく。 私でも手を焼きそうなものが何個か有りましたし、正直対戦する前に賭けでも吹っ掛けて勝負後に頂きたいくらいですけどねぇ! まぁ、そんなことは出来ないでしょうけど、所持者と対戦できるなんて物凄い経験じゃないんかと思うんですよね! そんな使い方もあった的な!?」
(さぁさぁ、どうです?)
「あの宝箱産のアイテムだから奇想天外な効果とか体験できるとおもうんですけど…………」
チラッとコメットと聖の方を見るコカトリア。
聖の瞳がキラキラしている。
(よしよし、あの顔……成功でしょうね、これでコメットちゃんに感謝され、お近づきに!!)
「ほら見ろ! アイツもああ言ってるんだ、棄権なんて誰がするか!
そうだ、まだ、他の試合はやっているのか?」
ワクワクうきうきの聖。
「さ、最後の試合がやってますけど、聖騎士同士のバトルだったと思いますよ?」
(あれ? なんか違うような……)
と思いつつ外に急いで飛び出す聖を手を振りながら見送った。
「はぁい、いってらっしゃい?
コメットちゃっ、ヒッ!?」
『………(ニコニコ)』
そうして、説得がもしや逆なのでは? と気付き始めたコカトリアの前を、張り付けた笑みを浮かべるコメットが通りすぎていった。
しばらく動けなかったコカトリア。
「めっちゃ、怒ってましたよ!? あれ? てへぺろじゃすまなそうな予感!?」
そうしてその場を後にした。
数分後、誰もいなくなったこの個室に駆け込んでくる人物がいた。
片手に湯気が昇る包みを持ち、反対側に飲み物を3つ持っていた。
「次の対戦相手はなんと王女さ…………っていないじゃないですか!?
あ~のぉ~、興味ないとか言ってたのに! どこにいったんですか!?」
魔女リフレクは、ドアを蹴飛ばしそのまま走り出していった。
魔女リフレクが観客席で二人を見つけたときには、コメットの足元に飲み食いした痕跡があり、
ショックを隠せないリフレクに、申し訳なさそうにコメットと聖が受けとった。
聖とコメットは、
「……つめたいな」
『……連絡用の魔導石がほしいですね』
完全に冷えたこの町の名物を咀嚼していた。
二人の隣には、膝を抱え頭を埋めて器用に椅子に座るリフレクがいた。




