第七話=level:61
遅くなりましたぁ!!読んでくれてありがとうございます!あ、感想もありがとうございます!拙いですががんばりんす。
「父さん......俺にも上司ができたよ。これからは上司を立てていきたいな.....」
そう黄昏る俺は、白色で深い造りの台座の上で、しんみりと鎮座していた.....
いや、外見は豪華絢爛な箱だけどな。
聖剣が刺さってそうな台座の上に宝箱があるイメージだ。
俺が見つめるのは、この部屋唯一の出入り口だ。
丁度真正面だな。
数時間前に、アラームトラップを発動させたときは、四方から扉が突然現れたが、今現在は岩を綺麗に切り取ったような壁があるだけだ。
罠発動時に自動的に現れる、っていうところだろう。
自動ドアみたいなやつか?
ふむ、異世界だから自動ならぬ不思議システムと言えるだろう。
まぁ、今はそんなことより.....
「大丈夫かな.....さっき吐いてたよな?」
この部屋に突然乱入してきた上司を思い浮かべる。
段々と不安になってきたぞ.....まさか「あんた見ると吐き気がするのよ!」でクビ?
あり得るかもしれん.....
どうやって弁解しようか、急いで考えよう。
いや、手遅れか?
そもそも、そんな主観で辞めさせたりしないだろう?
あっちの世界でも......いや、ない、よな?
くっそ、前世で社会進出していれば!!ある程度の社会人マナーを学べたのに!!
でも、扉は繋がったままだし、すぐに来ないところを見るとチャンスはあるのか?
「ダンジョンなのに衛生管理で文句言われたりしてな!はっはっは.....ハッ!?」
俺は周りを『しっかり』と眺めた。
散らばっている臓物・死骸・腐肉・生首と、果ては全方位に飛び散る異臭と血痕。
やばい、正直その線しか無い気がしてきた。
「でも、手がない俺はどうやって片付ければいい?」
ーーーーーーーーーーーーーーーー。
数分後......
ー???の吐き気を催す空気を取り込みましたー
ー???の吐き気を催す空気を取り込みましたー
ー???の若干吐き気をする空気を取り込みましたー
「若干てなに!?」
それって結局薄れてるの?そうだよな!?
俺はせっせと宝物庫の空気を取り込みながら【サポート・アシスタント】の声と視界のログを見続けていた。
手がない俺が出した結論は、至って簡単だ。
金銀財宝が溢れ返った宝物庫だった俺の部屋は見る影もない。
あるのはそこら辺に転がるモンスターの残骸のみ
モンスターの残骸のみ......
モンスターの.....
「これ、レア素材じゃね?」
そう、俺は気づいてしまった。
唯一体外にて手の代わりが出来る舌を持ってしても、届く範囲は俺の台座周りの2mくらいだ。
つまり、片付けようとしても、届くわけがない。
無理だろ....ってね。
「無理ならば発想の転換だ!!」
もう、お分かりだろう。
「届かないなら放置するしかない!」
けしてめんどくさがりではない。
それにほら、ゲームとかの報酬とか素材だったりするじゃん!?
そ、それと一緒だから.....
「深層域のモンスター素材とか需要ありそうだけどな。実際はわからないが......」
というわけで、俺の宝物庫をとりあえず、『宝物は未知の素材の盛合せです』というコンセプトだ、と言うことにしてやり過ごそうと思う。
誰をって?
ああもちろん、上司さ。
来そうになったらアシストさんが教えてくれるから、今は『素材部屋』っぽくしないとな。
まずは......
「うん、匂いをなんとかしようか.....」
と言うわけで。空気を取り込んでいたのだ。
数十分続けることで無くなすことに成功した。
ー???のちょっと気になる臭いの空気を取り込みましたー
ー???の空気がなくなりましたー
ー現在、室内が真空になったことをお知らせしますー
「やべぇ、やり過ぎたわ」
即座に取り込むのを辞める。あとは自動でやってくれるのを待つだけだ。
そうプログラム(命令)したからな。
ー室内に存在する水分が数%以下に低下ー
ー解析が終わったため匂いの因子を特定ー
ーこれより『新鮮な空気』のコードの特定に入るため【検証】及び【トライ&エラー】をフル回転で起動させますー
ー解析終了.....コード取得ー
ー『新鮮で浄化作用と癒しのある空気』のコードを実行ー
ー体外にジェネレート完了ー
ー???の宝物庫に充填まであと15秒ー
15分くらいで、室内に新鮮な空気が充満したようだ。
もし、アラームトラップを発動させたら片付けは俺がするのか.....そう思うと、そういう罠を仕掛けたくなくなってくるな.....
冒険者にとったら最悪のトラップ。
俺にとっても片付けが最悪の仕掛け。
「あれ?メリットどうした!?」
思考の流砂にハマりそうになったとき、【サポート・アシスタント】のメッセージが入った。
俺は上司がついにくるのか!とドキドキしたが......
ーフレーム内で【ダーク・ナイト(F)】の進化の開始を確認ー
ーフレーム内の速度を通常に切り替えるために【時間は有限にして無限】を解除ー
ー【ダーク・ナイト(F)】のマトリクスコードを参照し最適な魔素濃度を算出ー
ー魔素コードを【ダーク・ナイト(F)】のフレームにジェネレート完了ー
ー略ー
というアシストログが目まぐるしく流れていく。
俺をおいてけぼりで、まったく困るぜ。
「おい、進化っていうと、ジョグレス進化か!?それともワープ進化か!?」
バカなことを言っている内に進化が完了したらしい。
これにより、意識の覚醒が始まるから外に出した方が良いですよ。
と言われたため体外に『ぐうぇっ』っとした。
取り込むときも大変だったが、吐き出す方もめっちゃ大変だ。
そして、俺が取り出したのはフレームに【ブラック・パラディン(F)】という名前とアイコンがついたヤツだ。
「超・魔・覇・導!!」
とか技あるのかもしれん....期待したい。
吐き出された超魔導聖....違った。
吐き出された【ブラック・パラディン】の見た目は......ありがとうございます!!
生まれたままの姿だった!!
なにこれ?お預けからの、焦らしプレイで最後にどんと来る展開!
やべーよ、今うつ伏せで転ばしてるけど.....ここまで来ると仰向けにさせてもいいんじゃねーの?
童貞な俺には後ろ姿から見えるホッソリとした腰とかキュートなお尻とか、美脚でも満足だけどさ!
添え膳て言うじゃん?
大丈夫、ここはダンジョン誰もいないさ
ちょっとだけだよ?
顔見るだけそれだけだよ?
そろーりと舌を伸ばし腰をクルッと反転させようとしたときーーー。
俺はてっきり忘れていたぜ。
この部屋は今繋がっている部屋があったことを......
「ここまで防臭魔法壁張れば......は?」
「......マジかよ!?」
どん!という音で開き放たれたドアの向こうには8つの魔方陣を自身を中心に回転させて侵入してくる褐色の肌に銀色の髪の上司が立っていた。
あ、めっちゃボインですね。
伸ばした舌をのそのそと体に格納した後、俺の行動は迅速だった。
とりあえずスキル欄に【居留守】はセットした。
無理か?
段々と近づいてくる足跡。
のし掛かる精神的圧力。
【対精神的圧力】もセット。
何を言われるかビクビクしていると、上司の魔精ダルフ・レファンシアは真剣な顔で、意外なことを聞いてきた。
「ねぇ、この子どうやって進化させたの?あんた何モン?」
あれ?と思う。
俺は女の子にしたセクハラで怒られるかと思ったに、早とちりだったようだ。
「俺は偽宝箱の水無月だ」
キリッと答えるとダルフは口元をヒクヒクさせていた。
あれ?なんか間違ったか?
「ねぇ?無視とはいい度胸じゃない?ここの迷宮の主は私なのに!!」
あっ、これあれだ!
聞こえていなパターンか.....
どうする俺。