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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第六章『迷宮最寄りのクラレント』
56/75

第一話―斜めに全力―5

遅れました!


ちょっとした出来事。


188層『妖精ヴェルイット』の領域にて。


宝箱を渡し、微笑むダルフにビックリ戸惑うヴェルイット。


ヴェ「え? ダルフが私にプレゼントなんて……」

ダル「いいからいいから!出来(いりょく)を知りたいのよ」


ニッコリ笑うダルフ。

顔を赤くしつつ、宝箱に手を掛けるヴェルイット。


ヴェ「で、でもなんか照れるわね」

ダル「………いつでも良いわよ!さぁ!!」

ヴェ「……なんで離れるの?」

ダル「……え? と、とくにイミハナイデスヨ」

ヴェ「……ッ」

ダル「……ッ!?」


―――ダッ!!


という音と共に、異種族による人の身を超えたチェイスが始まった。

宝箱を抱え走るヴェルイットと逃げるダルフ。

俺の宝物庫の魔素が60%回復したところで、台座の正面にある転移魔法陣が再起動できた。

この転移魔法陣は、俺の宝物庫の4つある移動手段のうちの一つだ。

一つ目は、階層主の部屋の後にある宝物庫への入り口。

二つ目は、ここで気絶や死亡による、強制転移魔法の発動。別名『魔精のいたずら』。

三つ目は、宝物庫に鎮座する俺の真後ろにある扉。基本的にダルフの部屋に繋がっている。

四つ目が、俺の真正面にある魔方陣のことだ。


今回、宝物庫の魔力が消失してから、魔力が充填するまで結構時間が掛かり、やっと使えるようになったのがその魔方陣である。

他の移動手段は今のところ不能だった。


一つ目の宝物庫の入り口は、そもそも部屋の魔力が消失したことで、部屋と部屋を繋ぐリンクが切れていて、どうしようもないし、こっちからどこかの階層に繋ぐことは出来ない。


二つ目の『魔精のいたずら』も同じく魔力が無さすぎて発動しないし、発動できたとしても、身体しか送れないので却下である。


三つ目は、………………繋がってはいるが、あえていこうという奴もいまい。


そこで、かろうじで復旧した転移魔方陣を使っての移動をしてもらうことにしたのだが……


「じゃあ、ちゃんと俺からの【クエスト】も忘れずにクリアしといてくれよ」

「ああ、任せろ、上質な転移結晶だな!」

「転移結晶は、確かギルド近くの宝石店で買えましたね」


俺には、実は在庫があるが、ここは【クエスト】を出すことで、ちゃんとパーティーとしてやっていけるのか試すことにした。

自信満々に返事をする聖に、ある場所を頭に思い浮かべる新しいメンバーのリフレク。


「因みに金の調達からだからな? 俺は出さんぞ」


金を渡すと、買ってきて終わりだからな。


『…………?』

「ん? そういえばそうだな!」

「なんだ? なんかあるのか?」

「ああ、なんで必要なのかって言ってるぞ」


聖を通訳に当てて、コメットが質問してきた。


「そりゃあ、簡単だ。俺は別に必要ではないが、魔力が消失したことで聖用の設置陣の転移結晶が壊れちゃって、聖のリスタート地点が、一階層の門番【リザード・バイパー】の正面に変更になったからだ」


『……(コクコク)』

「へ? なんです、『りすたーと』???」


コメットは、なるほどと首を縦に振って、リフレクは訳が分からないという顔をしていた。

リフレクが分からないのはしょうがないことだ、【魔】に連なるものの蘇生サイクルな訳だし、誤魔化して伝えておこう。


「あ~簡単に言うと、聖用の『魔精のいたずら』の飛ばされる先が、ここから、一階になったということだな」

「な!? つまり、黒木さんは死んでも、死なない?」

「ああ、生き返るぞ!!って、あれ?ということは………」


すごいだろ、と言い、何かに気づく聖。


「そ、そんな、ズルいですよ……死んでも死なないなんて!」

「いや、死んで生き返るんだが……」


迫るリフレクにちょっと引き気味の俺。


リフレクが混乱しているようだが、まぁ、間違いはないだろう。

というか、聖は【モンスター】なんだけど、気づいてなさそうだ。

ダークエルフだと思っているのではないだろうか?

あと、【魔】と【魔族】とはちょっとちがうらしい。

って、【サポート・アシスタント(AA)】が言っていたことを思い出す。

今はどうでもいいか。


「なんで、自分の居住を攻略しようとしてるんでしょうか……」


頭に疑問符を浮かべ混乱するリフレク。

それについては、色々あるだよ。

いろいろ。


聖に視線を向けると聖は、―――プルプル震えていた。

おや、気づいたらしい。


「ひ、非常事態じゃないか!!ふざけるな!なに呑気にしてるんだ!!

わ、わたしの、どうやって私の家に戻って来ればいいんだ!」

「いま、俺のことはっきりと『家』っていったか?」

「……言ってない」


そっぽを向く聖。


聖が地団駄を踏み憤慨しているが、まぁ、俺は困らないしなぁ。

というか、聖も俺の中に住むんじゃなく、一人立ちして欲しいもんだな。

けして、そうなれば使えるフレームが30は増えるな……とは思っていない。


「まぁ平気、平気じゃない?

転移結晶って街で売ってるんだろう? 買えば良いだけださ。

そうして、買って持ってきてくれれば、ちゃんと設置しよう」

「本当だな!絶対だぞ!」


聖は力強く答えた。

おれも同じく返事を返す。


「もちろん!」


(買えればな……)


誰にもばれないようにボソリと呟く。


「う、うむ、そう、だな!買えばいいのさ! 」

「あれ?ですが『上質』って値段が……」

「急いでいくぞ!私が帰れなくなる!!」


値段も思い出したのか、リフレクが何か言おうとする前に、転移魔方陣が水色の光を発して、空間を埋め尽くした。

最後に聖が、


「まずはギルドだな!」


そういって、この宝物庫から消えていった。


ギルド?

新しく入ったリフレクのパーティー登録でもするのかもしれない。

確か、メンバーが加入したらギルドに報告して……どうとか言っていたな。

ということは、一階層に飛んでクラレントの冒険者ギルドに向かったのだろう。

まずは、お試しパーティーだし、連携とか色々確かめるのだろうか?

となると、上層域で練習してから、迷宮攻略に乗り出すのか。

リフレクがパーティーとはいえ100層を超えてる深層域のベテラン冒険者だから、指示とか出来るとしたら、効率よく進みそうだな。

だがしかし、『上質な転移結晶』を買うまでに、何日掛かるのか楽しみでもある。

心残りがあるとすれば、聖の驚く顔が見れないのが残念だ。



―――――――――――――――



そうして、俺は、久々の一人になったわけだ。

迷宮への宝物庫ローテに復帰までどれくらいなんだろうか?

視界に表示されるログを確認する。


―迷宮機能復帰まで残り(10%)―


ちょっと進んでいた。

この進み具合だと、あと3日は掛かりそうだ。

その間の俺の予定は……


「さて、久々の『NEW』を解析するか!」


俺の視界に表示されるアイテムフォルダに『NEW』と出ているモノを参照する。


【モンスター・エッグ】……『反射』の魔女リフレクが、魔女集会(ミサ)で『飛翔』の魔女に押し付けられた謎の卵。


そうこれだ。

もう、ワクワクだね!

なんだい? 『謎の卵』って!

こうなれば、【サポート・アシスタント(AA)】に【コード化】してもらって、好きなモンスターを産み出そうじゃないか!


そうだ!ダルフが、ここにはドラゴンがいないと言っていたな。

ダンジョンといえば、ドラゴンが宝を守らないとね!


俺はその思想のもと、【モンスター・エッグ】を【魔改造】していった。

しかし、その時の俺は気付かなかった。


もしドラゴンや新たな番人を産み出して配置してしまった場合。


迷宮階層≫階層主≫宝物の番人≫宝物の罠≫宝箱。


という鬼畜しようになってしまうことに。


そうして、2日後。

迷宮機能が完全に復旧した。













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