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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第六章『迷宮最寄りのクラレント』
55/75

第一話―斜めに全力―4

遅れました!

ごめんなさい。


その後のちょっとした展開。


ミミック水無月のマナー講座が開かれた。


水「いいか聖、まずテーブルクロスっていうのはだな……」

聖「ああ、知っているぞ!『こうして』飛び道具を弾くんだろう!!」

水「………………………………………ふっ、知っていたのか聖」


リフ「っ!? 諦めないでください、常識を常識を!!」







「うーん?」


魔女リフレクが、俺の身体(宝箱)をペタペタと触っていた。

聖が、コメットに怒られた拍子に口を滑らしたとはいえ、まさか、そんなバレ方をするとは思ってもいなかった。


「宝箱にしか見えませんけど…」


コンコンと杖で叩いたり、台座に固定される俺を揺らそうとしていた。

残念ながら、木材の軽快な良い音と、うんともすんとも動かない俺に、気になるところは感じなかったようだ。

それはそうだろう。

これでも『偽装宝箱』として、只の冒険者相手にバレずに過ごしてきたのだ。

簡単に解るようなペーペーな宝箱と、比べないで貰おう。


「ン? 水無月は宝箱だぞ? 」

「まぁ、そうなんですけど

ミミックならもっと存在感とか、体内の余剰魔力の露出とかあると思ったんですけど」

「存在感ならあるだろ! 見ろ

この白い台座に偉そうに構える宝箱を…な?」

「…そういう意味ではなくて、ですね

まぁ、目立ってはいますけど」


リフレクの触診が終わり、見抜けないことに唸るリフレクに、自慢するように話す聖。

だがどうしてだろうか……貶してるように聞こえるのは気のせいか?

聖いつもそんな眼で見ていたのか?

それとも、反抗期か?


因みに、リフレクが言うように、魔力の漏れや、危険察知系のスキルによる感知なんかは対策済だ。

昔は、【居留守】スキルで探知を逃れていたが、今現在は、【エニート(複合)】スキルによって、今挙げられた微細な魔力漏れや、同じく【居留守】スキルと同じ効果を発揮したり、さらには、攻撃をされても、異常状態にされても、防御はバッチリである。

さすがエニートだ。

エニートまじチート。


「で、どうだった? 」


俺は、声を出してリフレクに話し掛けた。


「あ、はい、ありがとうございます

というか、なんですか、貴方は…」


お礼を言った後、訝しげに俺を半眼で睨み付けるリフレク。


「何って、『ミミック』ですけど? 」

「ッ! なんで【アイオロスの魔導書】を持っていたり、こんな高性能な財宝を作ったり出来るんですか! 」


俺は、当たり前に返しただけだが、お気に召さなかったようだ。

指をさして憤慨していた。

財宝と言われても、俺的には、そこらにあるのはガラクタなんだが。

確かに、今現在俺の体内に保有している武具は二桁しかないが、魔力があれば、元の膨大な数にすることなど【コード解析】とか色々取り込んだ【サポート・アシスタント(AA)】に頼めば一瞬である。

今は魔力が無くてできない。

それに気になる事を言っていたので聞いてみると、


「魔導書の原典なら返したぞ?

あと宝物を作れるのか、って『ミミック系』なら出来るだろ? 」

「で、出来るわけ無いじゃ無いですか!

あと、魔導書が手元にないのにどうやって魔法使ったんですか!?」

「そうなの?

あ、『写本』があるから」

「しゃ、しゃほん…魔女の一生が―――ぶつぶつぶつ」


そうか、俺はそうだと思っていたんだが、違うのか。

しかし、【サポート・アシスタント(AA)】が言うには、ある程度は出来るって言ってるんだけど。

リフレクは呆気に取られた後、呟いている。


「今のは聞かなかったことにします! 」


顔を挙げて指を突き付けた後、呆れた顔をした。


「はぁ、いいですか?

私が生きてきた中で会ったことがある『擬態者(ミミック)』は、開けようとすると宝箱から身体が生えて襲いかかってくる奴とか――」


お、おう。

魔導書についてはスルーするようだ。

しかし、聞いているとなんだ?


「おい待てこら、それミミックか?

もうエイリアンじゃないか!!」


リフレク、なんて恐ろしい体験をしてるんだ。

その時は、ダッシュで逃げたらしいが、速度は恐ろしく速かったと言っていた。


「えいりあん?

なんですか、その未知な響き、探求心が疼きます」

「さらっと流せ、それだけなら、まだアイテム作成出来たかもしれないだろ?

リフレクが逃げるから、分からなかっただけじゃないか?」

「うっ、確かに確かめてませんけど」


俺の異世界言語に疑問符を浮かべながら、更なる例を挙げてくれた。


「もう、一体の方は間違いなく作ってないですよ! 」

「ほうほう、どんなヤツだ」


リフレクは息荒く語り出した。

ちょっと離れたところにいる、コメットと聖は、俺の宝物庫を物色し出しているが、今は放置だ。


「人に擬態してました」

「はぁ? 」


一年前そいつに会っている気がするんだが、まさかそいつか?

しかし、あれは確かに『擬態者』だが、似て非なる存在じゃないだろうか?


「『擬態影人(ドッペルゲンガー)』……」




つい、口から声が漏れてしまった。

リフレクは、ソイツのと出会いを話していたが、出会ったのは、2年くらい前に最北端のこの街ではなく、西大陸へ行き来する港街だそうだ。

時期的にそいつである可能性が高い。

港によった後に、ここまで来て、『攻略本』をばら蒔いていたのか。

そういえば、どうやって『攻略本』なんか作れたんだ?

未来予知に類似する能力者でも補食したのかもしれない。

俺が考え事をしていると、リフレクが、


――以上です。


といった。

話は終わったようだ。


なるほど、すべての『擬態者』が同じことを出来るわけではない、ということなのか?

基本となるのは、擬態能力で、それ以外は全然違うのかもしれない。

推測の域をでないな。


俺は、自分の身体(本体)を自由に動かせない欠点がある。

その変わりに、膨大なアイテム貯蔵と、作成が出来る。


と言うように、あったことはないが、他の同族もそれぞれ長所と短所があるのだろう。


そして俺は、リフレクの話から、ちゃんと同族が存在することを、やった突き止めた。

なぜ今さらなのかと言うと、【サポート・アシスタント(AA)】が、


―同種個体はこの世界に存在しません―


と言ったからだ。

しかし、これは俺の聞き方が悪かったようだ。

俺と同じ『偽宝箱(トレジャー・ミミック)』はいない。

と言っていただけで、『擬態者(ミミック)』はそれなりにいるらしい。


―――――――


しばらく経った。



聖、コメット、リフレクは何やら作戦会議をしているようだ。


「迷宮内での戦闘は、どういう組み立てなんですか?」

「組み立て? 私がこうパッて行って、ずばっ、ブシャ、とか……する! 」


空間魔法で異次元からノートを取り出して、メモをとろうとするリフレクに、聖が慎ましい胸を張りながら答えていた。

答えになっているのだろうか?甚だ疑問だ。


「え、えっとぉ~」


困った顔をするリフレクはコメットを見るが、残念ながらコメットはニッコリ笑って拍手しているだけだ。

ご機嫌な聖の様子を見ていた俺は、なんだろうか、この異様な恥ずかしさは。

くっ! 聖、ホントに成長しているのだろうか?

口許をひきつらせて、『はやまったかも』という顔をしているリフレクの耳元で、コメットが囁いている。


『………(ヒソヒソ)』

「……な、なるほど」


しかしさすがはコメット。

迷宮でどのように立ち回っていたか、伝えたようだ。

聖を見て頷くリフレク。


「つまり、フィーリングで」

『………(コクコク)』

「……気を逸らした隙に」

『……!…(グッ!)』


両手に握りこぶしを作り胸の前で、頑張ります!的なポーズのコメットと、

それを見てリフレクも、


「よ、よし気合いです! 」


と同じポーズをしていた。


一体全体どんな感じなんだ?

こいつらの迷宮攻略を一回監視していたい気がする。

今度、ダルフに頼んでみるか?


最後に聖を見ると、


「相手Aをこう、ブシャっとしたら、そのままBに……って何こそこそしてるんだ? 」


俺は、動きが止まって不思議そうにしている聖に無性に声を掛けたくなった。


「聖……その、なんだ」

「ん? 」

「がんばれ、何をってわけじゃないけど、アレな感じだ! 」


自分で言っていてよく分からなくなった声援に、俺の方に振り向いていた聖は、眼を爛々と輝かせていた。


「ああ! 任せろ!

今なら、門番にも勝てそうな気がしてきた」

「ふぁぁ!?

無理です無理です!!」


聖の肩を揺さぶるリフレク。

コメットは無表情ながら遠くを見詰めている。


あれ?おれ余計なことした!?




















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