第四十話 『終局①』
遅れました。ごめんなさい。
先週は会社の旅行。
今週は詰め詰めお仕事で暇がとれませんでした。
これからは頑張りますよ。
よみに来てくれたからありがとうございます。
気軽に暇潰しにしてくれたら幸いです。
ここまでの話は、一話を作っているときから考えていた書きたいことでして、これからノープランでぇす。
つまり、たぶん、きっと、この話の後はストーリーより、サ○エさん方式のほうで書いていくと思われます。大体3話2話完結系?
これからも気が向いたらどうぞよろしく。
黒と白の閃光が断続的に発生し、その度に地面を揺るがした。
神殿から結構離れた位置にいた魔精のダルフとその配下のベルベット、そして先程までダルフと戦っていたエルフィが、神殿への道のりを駆けていく。
エルフィとダルフは旧知の中で、今回の騒動では『ユエリエの樹海迷宮』の主であるエルフィが突如現れた存在に捕まったことから始まった。
しかし、エルフィは魔精であり、精霊種の上位クラス並みの実力を持っている。そんな彼女を捕まえることは一握りの勇者または、同クラス以上の魔精に準じる実力を持っていないと出来ることではない。
つまり、突然現れた存在が、同クラスの実力者と考えられる。
「うひゃぁ、いま神殿の壁が爆発しましたよぉ」
「誰が戦ってるのよ、偽宝箱は戦えないし、コメットは―――」
小宮殿を一つ抜けながら、再び響く爆音にベルベットとダルフは視線を向けると白刃が遥か遠くの雲まで貫いていた。
ダルフはその光景を見ながら考え込む。
「コメットは無理です、私と同じく魔力中和で無効化されますので相手になりません」
ダルフの台詞に被さる声。
一番最後に小宮殿を抜けたエルフィは苦虫を噛み潰した顔をした。
三人は再び駆け出していく。
その際に、蠢く黒い塊を発見しだい処分しながら進んでいく。
奇妙な断末魔をあげながら黒い粒子となり消滅していく真っ黒な塊は質量を持った影のように見える。
「来るときも思ったんですけど、これってなんですぅ?」
指を向けるベルベット。手頃な棒があればつつきそうだ。
ベルベットは、行きと違い影に潜まずに実体化して進んでいた。
理由は、ダルフとエルフィを案内するためだ。
この『ユエリエの樹海迷宮』の深部である異界と介した空間は、主であるエルフィでも詳しく知らないらしい。「そういうところってダンマスとしてどうなの?」とダルフが呆れていたが、ダルフも自らの迷宮の全貌を詳しく知っているわけではないのだ。言うならば、深層域を示す幹部達の階層に何があるのか知らないでいた。
そんな二人は、札に縛られる黒い塊や光の剣が刺さる奴を捌いていたため、移動速度は早くない。
遠くの戦闘の状況も分からないの道草している場合じゃないと思うが、ベルベットは実力の違う二人に強く言えないでいた。せめて何をしているのか聞きたいと思っても不思議ではない。
あらかた付近の塊を消し終えた二人は、質問に気軽に答える。
「ああ、それ分体ね、分身体.....いや本体でもあるのかしら?」
説明するのが難しいのか、ダルフが悩んでいた。
「私の見解では『すべてが本体』であるといえます」
悩むダルフの横でそう言ったのはベルベットが指していた塊を蒸発させたエルフィだ。
「本体ですぅ?でもそれって、じゃあ玉座に座っていた影人とここにいる塊も一緒ってことですかぁ?」
ベルベットがダルフとエルフィを追いかける前、聖とコメットが戦っていた相手とこの不定形な塊が同じ、つまり体の一部なのか?どうなのか
「そしたら、あれは力を物凄く分散しているってことになりません、それにそんなに分散して全部を制御出来るとは思えないんですけどぉ......」
「まっ、そうね、『ふつうは』出来ないわよ?それこそ1000を越える自分の文体を制御できたら一人で町を落とせるんじゃないかしらね」
「さらに言えば、それぞれが均等の実力ではなく、それぞれに個性や能力を持たせているならなおのこと制御なんて出来るはずないんですが......」
話ながら2つめの小宮殿を突破した、ここにも黒い塊が数体確保されていた、そのどれもに札が貼られていることから、ダルフがやったのが容易に理解できる。
「え、ちょっと待ってくださいよぅ、結論として出来ることじゃないんですよね?」
ベルベットの確認に視線を反らす魔精。
「ええ、『ふつうは』」
「マスターその言い方、出来てるって言ってるようなもんですからね!!」
やれやれと降参ですと両手をあげるダルフ。
その横では、いきなり物陰から飛びかかった黒い塊を光のナイフで両断するエルフィがいる。
「だいたい、雑魚の物量で私達魔精が殺られるわけ無いでしょう?」
「そうですが、放浪型の魔精と迷宮型の魔精では戦闘力に物凄く差があるって聞きますけどぉ」
ダルフの台詞にベルベットが言い返す。
確かに、常に世界を歩き、気ままに殺戮を繰り返す物騒な魔精と、迷宮を構えて配下に戦わせる魔精では、戦闘経験に差があるだろう、しかし、それは魔精の括りの話である。
いま、この迷宮を侵略したのはただの【魔】に属する下位存在だ。
下位存在と魔精では実力に大きな開きがあるのは間違いない。
それこそ、そんな些細な差では覆せないように。
その差を埋める何かがない限り。
「そんなの大したことじゃないのよ、大体魔精はそれぞれ独自の強化方法があるから、問題なし、私が『知名度』で、エルフィが『献身』によって強化されるように、ね」
再び襲ってくる塊をダルフが掴み握りつぶした。
「うわ、きたなっ!?」と手を振るうダルフにエルフィが声をかける。
「簡単にバラなさいでほしいのですけど......まぁ、今はそれより、私がやられた詳細を教えておきましょう」
「そうですねぇ、何かしらのヒントは欲しいかもしれませんよぉ」
ダルフから若干距離を取ったベルベットとエルフィ。
経緯はこうだった。
『特殊な力』をもった『特殊な影人』が配下を取り込み押し寄せてきて、700の黒い影を倒したが、倒したのが配下のなれの果てと言われ隙を作り捕まってしまい、異世界から持ち込まれた魔道具のレプリカをつけられ拘束されたそうだ。
殺さなかった理由は、この迷宮核を手にいれるためらしい。
手に入れた迷宮核を取り込むことで新たな力を得るんだとか。
しかし、どこを探しても核は見つからず、エルフィも持っていないため、他の奴から奪えばいいと考え、エルフィと魔精を戦わせ不意をついて、その魔精から奪ってしまおうとしたらしい。
拘束されているときに聞いたことは以上だそうだ。
「そうして、戦闘中に幾度となく介入してきた黒い影とエルフィの二人を相手に善戦をしていた私を褒めて良いのよ?むしろ、殺さずに助けた私にエルフィは感謝してほしいわね」
胸をはるダルフに「クッ」と悔しそうにするエルフィ。
しかし、ベルベットはそんなことはお構い無いしにさらに聞く。
「そのヤられた原因の『特殊な力』っていうのはわかってるんですぅ?」
「【捕食】と【簒奪】あとこっちは種族的なものだけど、【擬態】ってのがあるわ」
答えたのはエルフィだった。
「【捕食】と【スキル奪取】の組み合わせって、まさかどこぞの魔精や魔王じゃあるまいし、ただの影人につく能力じゃないわね、あと【擬態】ってそれは持っていて当然じゃないの?」
ダルフの言う通り、【捕食】スキルと【スキル奪取】は組み合わせ上は強力だ。捕食した相手のスキルを自らの力に変えることが出来るのだから、しかし、それもスキルを会得できる容量があってこそ、自分の魂の容量以上を取り込むことはできない。出来ても崩壊を招くまでだ。
そういったことを可能とするのが、魔王や魔精などの上位の存在だけだ。
それにスキルを会得してもそれを振るう身体能力がなければ宝の持ち腐れだろう。
つまり、下位の存在が手に出来る能力ではないのだ。
それこそ『神の加護』でもないかぎり。
さらに、
「【擬態】の範囲が、スキルと加護以外の全てでもですか?」
「は?それってつまり、エルフィが擬態されたら、エルフィの身体能力に魔法適正もそっくりな影人が出来るってこと?」
「使う魔法は知っていないと使えませんけど、そういうことです、私は、私相手に不覚をとりました」
俯くエルフィ。
「でもでもぉ、同じなのはそれだけで、スキルや固有魔法は真似できないんですよねぇ?」
「え.....ええ、そう。です」
ベルベットにうなずくエルフィはなぜか顔を背けた。
ダルフは気になり追求する。
「なに隠してるの?エルフィ」
じっと見つめられるダルフに観念したのかエルフィはポツリと漏らす。
「......ちょっと厄介なことに成ってまして【解析】【魔力視】【魔法中和】というスキルを持った『マジカル・ゴーレム』を作ったんですけど.....取り込まれてしまいまして」
「「な!?」」
どうやら、敵が強力になった理由の一つを知ってしまった瞬間。
今度は、今いる小宮殿の側面に白い閃光と共に叩きつけられる黒い塊があった。
黒い塊は、壁に人形の痕跡を残しながら、先程と同じように消滅現象を発生させていた。
ベルベットとダルフ達はこの時既に、神殿の隣にある小宮殿まで戻ってきていたのだ。
「なんてもん取り込まれてるのよ!?バカなの?死ねば?」
「なっ、そっちこそ、簡単に私のコメット連れてきて!あの子が殺られたら迷宮核を奪われるんですよ!引きこもりの貴女の元なら安全だと思ったのに!!」
「どういう理屈よ!!そもそも、迷宮核はちゃんと迷宮の信頼できる相手に渡しておくものですぅ」
完全に消滅する影人や、今放たれた閃光にまるで興味がないように、手で押し合いをするふたりにため息をはくベルベット。
(今のは誰が......というか、魔法無効化なのでは?)
「今ので、やっつけてたりしませんか?」
ベルベットに喧嘩をしながら答えた二人の魔精。
「信頼できる相手って、もしやヴェルイットではないでしょうね、それ押し付けてきたって言うのですよ? 影人は、『全てが本体』ですので、塊が一つでもあれば、そこに再生してしまうのですよ」
とエルフィ。
「な!?ヴェルイットは『喜んで管理するわ、寧ろ預けておいてくれると私が平和よ』と言っていたわ、つまり、私の配下は優しいのよ、あんたにそんな配下いるのかしら、ああ、もう一人もいないのよね......私の感知陣の中にいる黒い塊の反応は神殿に7つだけよ」
とダルフ。
ダルフの言ったことにドン引きのエルフィは、「そ、そうね」とだけ返した。
微妙な顔のエルフィと満足気味なダルフに一応ベルベットは声をかけた。
「二人ともいい加減に行きますよぉ」
―――――――――――――――――――
神殿の外観はそれはもう見事にボロボロだった。
全体的に崩れていないのが不思議なほどだ。
エルフィとダルフの二人はコツンコツンと反響する床を堂々と進む。
ベルベットは再びダルフの影に潜んでいた。
『いいんですかぁ? そんなに堂々と入っていってぇ』
ダルフの影から問いかけるベルベット。
「問題ないわよ、『私は』情報無しでも負けないわね」
私の部分を強調するダルフ。
「じゃあ、今すぐその記憶を消してあげましょうか?デカ乳女」
隣を歩くダルフに結構な強さでタックルするエルフィ。
「ちょっ、っとと、プロポーションの差は自分で言ってって悲しくなんないのかしら、ね!」
よろけたダルフは、やり返し、やり返され......
(マスターとエルフィさんは、なぜ仲良く出来ないのでしょねぇ?......あれ?逆に物凄く仲が良いのでしょうかベルは不思議です)
そうして魔法の打ち合いと剣技のぶつかる音。
不愉快な敵の声が聞こえてきた。
しかし、その声は少し焦ったように感じるのは気のせいではないだろう。
『き、君は、本当に何物なんだ.....ダークエルフじゃないのか?』
『......【滅・魔導刃】』
響く轟音。
黒い光の奔流。
『ぐ、おのれ、キサマァァァァ骨董品!!お前がぁぁ連れてきたのはナンナンダァァアァ!』
叫ぶ影人の声。
声は高く。
聖にそっくりだった。
しかし、窮地なのか焦っている、いや叫んでいた。
『........黙れ、【エンプティ・ゲージ】』
それに答えるのはそっちも聖の声だ、しかし、平淡な声だった機械的とも言える。
『じょ、冗談ではないぞ、ふざけるな!!』
「聖の声が二つに聞こえると頭が痛くなるんだけど、でも気になってきたわね急ぐわよ」
『ベルはどっちもはぁはぁなんですけどぉ、泣き叫ぶ御姉様、軽蔑した声を出す御姉様素敵!』
聞こえてくる声に不思議に思ったダルフとベルベットは何がどうなっているのか気になり駆け出した。
「え、ちょっと待ちなさいよ、作戦とか.....ああ、もう仕方ありません」
エルフィも遅れて続いた。
最後の曲がり角を抜けたその先は最初に訪れた所だ。
しかし、原型を留めていない内部構造。
石柱はかろうじで、20本中4本建っているだけだ。
窓がない筈のこの場所は、日当たりも風通しも、良好そうなくらい壁に大穴が空いている。
床に転がる瓦礫は天井の一部のようだ。
神聖な場所は破壊尽くされていた。
そのちょっと盛り上がった場所、玉座の手前の階段で佇む、黒と白の魔力をグラデーションのように点滅させて纏う不格好なー変わったブレザーに足鎧と剣と盾をもつー少女がいた。
『黒い』髪を靡かせる褐色の少女は、キラッキラの甲冑を完全装備する銀髪に褐色の肌を持つ少女のお腹に足を乗せていた。
彼女達の顔はどちらもそっくりだった。
ダルフとベルベットはその光景に気を取られ動けないでいた。
(どっちが聖なの?ぶっちゃけどっちも吹っ飛ばさない?)
(御姉様マニアのベルに任せてください)
こそこそと念話する二人。
(どう?)
(あぁぁ、あっちの御姉様の悔しそうな視線、はぁはぁ、あっちは虫けらを見るような視線....はぁはぁ)
(で、どうなの?)
(ベルはどっちもイケます)
遅れてきたエルフィが遠くでポカンとしているコメットを見つけ声をかけた。
「コメット!」
『!?』
目を見開くコメットの腹部が真っ赤に染まっていることに気づきビックリするが、血は止まっていることに気づいたエルフィは胸を撫で下ろす。
「で、何しているのかしら?コント?」
そして、隣で自らの影を踏みつけていたダルフに声をかけた。
「ち、違うわよ、どっちが本物か分からないのよ、くっ、さすが影人やってくれるわね」
ダルフは握りこぶしを作り、こちらに気づいて動きを止めていた聖二人に視線を送る。
(いや、さっきの会話的に分かりそうなものですけど.....)
聖とあったことがないエルフィは取り合えず黙っていることにした。
あと、少女姿のダルフ似が複数いることに若干引いていた。
ダルフを見つめていた二人の聖はそれぞれの反応を返した。
足を置かれている聖は、悔しそうにしながら言う。
「ダルフ、仕方ないが助けられても良いぞ!」
対して、足を置いている方は素っ気なかった。
彼女はダルフのある部分を見て鼻で笑ったのだ。
「フッ.....」
そうして興味がないかのごとく視線を逸らした。
「ほうぉ......」
頭に青筋を浮かべるダルフの片手には、呪符と呪符を結び描いた六芒星のから黒炎で出来た玉が現れた。禍々しい限りのそれは当たればひとたまりもないだろう。
ダルフが投げる相手は......