第四話=level:52
読んでくれてありがとうございます。
「くっそがぁぁぁぁぁ、コォオオオノォオオヤロー」
戦士の青年は、手にしたモノを地面に思いきり叩きつけた。
「ちょ、何が入っていたのよ!?」
「はぁ......はぁ、回復、系ではなさそうです、ね」
いきなりの叫び声にビクッとして声を上げる金髪女性と、傷に響いたのか顔をしかめる魔法使いの少女。
肩で息をしてお怒りな俺の目の前の騎士甲冑の青年。
......おいおい、何怒ってるんだよ?折角......あ、まさかコイツ!?
「気づいてないのか?破格の品だぞ」
白い紙を丸めて地面に叩きつけ、近くの金の王冠を蹴飛ばした青年に、つい俺は愚痴ってしまった。
いや、まぁ、分かるぞ?このパーティー女多いしな、重傷者が宝物庫で倒れれば、裸で入り口に送られるから、なんとか回復させようとしていることも、当然理解している。
片手を付け根から失っていた魔法使い特有の格好の少女は血を吐いているし、一刻の猶予もないのだろう。
でも、コイツら一回メンバー忘れて一瞬でも盛り上がってたように見えたが......言わぬが花だな。
「おい!しっかりしろ!俺を庇ったばっかりに.....」
「か、んちがいしないでくださ。うっ......」
青年が血を吐いた少女に駆け寄り、肩を抱いてオロオロとしていた。
少女はちょっとした振動でも傷に響くだろうに、無理矢理にでも笑顔を作っている。
「バカ!もうしゃべるな!くそくそくそぉおおおお」
騎士風の青年が抱き上げて涙を流していた。
おれ、今リアル映画見てる感じなう。
てか、お前らそう悲観的にならなくても死なないからね?
少し露出するだけなのにな。
そんなに嫌なら宝取ったら部屋出れば良いのに。
「まぁ、それこそ死ぬようなもんか......」
残りのぐったりしてるメンバーに包帯を巻き終わったのか、服の半分を真っ赤に染めた金髪碧眼の女性が男に駆け寄っていった。
たぶん、この人が回復役だな。魔法を使っていないことからMPが切れたんだろ。
「それで、あの中にあったのは!?」
駆け寄ってきた女性は豪勢な宝箱に何が入っていたのか聞く.....そう、俺の中に!!
「バカにした紙だったよ!くそ、魔精めが!」
騎士風の青年は顔を歪め、苛立ちを強くしているようだが、今は抱えている少女がいるので、口だけで不満を現した。
少女の容態が落ち着いたのか、抱えるのを辞めた青年は困り果てているように見える。
「性格最悪の魔精だぜ.....」
おや、ダンジョンの創造主に文句をいっているようだが見当が違うなぁ.....あんなの偽造の一種じゃないか.....レベル低めに設定したから分かると思ったんだが、期待はずれだったな。
盗賊職や探検者職ではないし、仕方無いか....
ま!俺は、俺より身長のでかい奴の悔しがる姿を見るのも快感だがね。
けして、前世でちびだったことを気にしているわけではない、と言っておこう。
トラップを全部解除したこの男が凄いように見えるが、罠なんて小学生でも解ける『対象年齢10未満』用にしてあったから、絶対解けるだろ......
フェアプレーと言ったのに手を抜いてるって?
違うね。
今回はあれだよ。
記念すべき迷宮深層域到達おめでとう、の意を込めて軽めにしてるんだよ。
ほら、これで、これから頑張るぞ!ってなるじゃない。
言っておくが、けして、けっっっして.....あの魔法使いの少女どう見ても妹と同い年じゃないか!!
しかも重傷だと!?
と考えて、本来の褒美を変更してあの紙にした。
とかではない。
しかしそれにしても、深層域まで来て.....これとはねぇ。
「誰も【鑑定】スキル持っていないなんて、残念すぎる」
それとも、あっちでぐったりしている連中の中にでもいるのか。
周りを飽きれながら見回すと乾いた音がした。
詰め寄った金髪女性は男に張り手をかまし.....なに?
「ってーな!?」
頬を叩かれた後、一瞬唖然となった男は金髪女性の胸元の服を掴む。
「このバカ、あんたは【鑑定】出来ないんだから、手に入れたら不用意に扱うんじゃないの!!」
服を掴まれた手を払いのけ、女性は言い返す。
「んな場合じゃねーだろ。このままじゃ、キャロルが!」
青年が言った瞬間、金髪女性は手を振りかぶっていた。
泣き言をいう青年に対する叱責だろうか?
おお、今度は頭を叩いたぞ!ワイルドな姐さんだぜ。
「死なないだけ、良いでしょうが!それに、冒険者やってたら、1回や2回くらいは全滅の経験なんてあるものよ。深層までたどり着いて、さらに『生きて』帰れるなんてすごいことなのよ」
兜を被っていない頭を押さえつつ、青年は睨み返す。
「サレアナ!てめぇ、はよぉ。今死にかけの仲間より宝を取るのかよ!」
ああ、まったくだ!言っていることは間違いないが、男にそう取られても仕方ない....
だが、青年よ。彼女の手に握られている紙.....いや、宝箱に唯一入れていた『ご褒美』を右手で挟み込んでいることからして、俺の評価は彼女の方に片寄っている。そう、6:4くらいに。
「さてさて、これは鑑定したと見て良いな.....使いこなせるのか見物させて貰う」
俺がじっと見つめる中、彼女は紙を少しちぎって、腕を失った魔法使いの口に入れた。
「おい、サレアナ?なにしてんだよ!?それ食いもんじゃねーだろぅが!!」
「平気よ.....用途は、あってはいるハズ.....たぶん」
「はぁあぁ、いい、え、信じます....」
訳がわからず、錯乱する青年に不安な表情を作りつつも、残りの紙を握り締める金髪の姐さん。
紙をゆっくりと飲み込んだ少女を見つめる。
するとーーー。
「な、んだと!?」
「うっそ....」
目の前の現象に驚愕する二人。
うんうん、使えるようで何よりだな。ちょっと治験になっちゃったけど.....文句はないでしょ。
「え?えええええええ!?」
自らの体の変化に戸惑いを隠せない少女。
紙を飲み込んだ後、光に包まれた少女は、体の傷がすべて治っていたのだ。
失った腕さえも.....確かに魔法を使えば同じことが可能だが、この紙はなんと使い勝手が良いのだ。
詠唱したり、魔力を貯めなくても、ただ、触れるだけで、常時微弱な回復魔法が掛かり続け、食べると『エリクサー』の効果を得る、しかもちょっとちぎった部分だけでだ、気を付けなければいけないのが、肌身離さず持っていると過回復が起こり体に悪いのだ。適度の魔力を消費する運動が大切です。
驚く少女と少女に抱きつく青年、よっぽど嬉しいのか少女を振り回していた。
おい、幸せオーラ満開だな......微笑ましいぜ。
金髪の女性は他のメンバーにも紙を食べさせているようだ。
効果は即効性なので劇的変化だ。
死人に近かったのに今では冒険前の状態に戻ったように感じる。
「「「なんだぁ!こりゃぁぁ!?」」」
驚く重傷だったメンバー達は、お互いの体をさわって異常がないか確かめている。
倒れていた野郎共も元気になったようで何よりだな....
しかし、このパーティー、よく105層のボス倒せたな。
【アーマード・バグロード】は唯一の弱点の腹の下以外ダメージが入らないって【サポート・アシスタント】に教えて貰ったんだが.....
俺がそう不思議に思っていると彼らはワイワイと話始めた。
「キャロルが、いきなりのし掛かられた俺らの側に潜り込んで【マジカルチェイン・ボム】を使うとはビックリしたが.....」
軽装の20代くらいの男性が首を回しながら言った。
「あれがなければ僕ら死んでましたね」
そういうのはなんていうか......なよっちい少年だ。
「しかも、こっちに被害でないようにシールドまで張って貰って、おれ、もっと強くなるっす」
両腕を両脇で閉める柔道着を着ている10代後半な長身の青年。たぶん、騎士風の青年と年は同じくらいじゃないのか?
そして、テレテレとしているのが、今回の立役者。MVP。魔法使いのキャロルさんだそうだ。
俺戦闘シーン見てないけど.....
「いい、ですよ!そんなぁ......」
わいわいと魔法使いの少女を誉める光景を見ていたが、少し離れるところに考え込んでいる姐さんを発見した。
姐さんはぶつぶつ言いつつ豪勢な宝箱に向かってきた.....そう豪勢な宝箱.....『俺』のことだ....へへっ。
「これ、罠もアイツが解けそうなモノを張る宝箱じゃないでしょ?なにかあるのかしら.....」
俺の外側をペタペタさわる金髪の姐さんは、どうやら後で発動するタイプの罠があるか調べているようだった。
俺はそんな卑怯なことはしないぞ!
中身を手に入れる前はヤることはやるが、開けられた後にいやがらせはしない。
絶対だ!
じゃぁ、あの紙に書いた文字はなんだ!と言われそうだが、そ、それも偽装っていうトラップだから(震え声)
「あの紙の効果からして、絶対怪しい」
顎に手をあて考えるポーズの姐さん。
というか......断定された!?
あれ、よく見ると姐さん耳が尖ってる。
髪に隠れて見えなかったがエルフじゃないですか!!
「うひょ~~~~」
姐さんに密着されているが俺の声は認識されない素晴らしさ。
ここで卑猥な言葉を浴びせまくっても気づかれない背徳感。
最高だぜ。
だが、しないがな。エルフって精霊との親和性とか、果ては精霊使いとかありそうじゃね?
おれは冒険を犯さない。
ここは無難に俺の前世で培った最強のスルースキルを用いるぜ。
【居留守】.....部屋の中、物の中に隠れることに最大補正。動かず、喋らなければバレることはない。
俺はこれを使って訪問販売とか○○教を退けたりした。
あいつらしつこいからな。
故に熟練度も高い俺を気づくことなど不可能!
「き、気のせいか.....これは魔精の気まぐれとでも考えておこうかしらね」
ホッとしたため息を吐きつつ、周りに散らばる金銀財宝を持てるだけもって帰っていく。
帰りは転移石でも使うんじゃねーの?
彼らが去った後、この部屋にあった俺的に言えば『がらくた』をありったけ持っていってくれたことでこの空間にもスペースが確保できた。
さて、じゃあこの前手に入れた女戦士の装備でも解析してコードを取得するかな。
そして、没頭しすぎて気づいたときは.....また冒険者曰く宝の山で満たされた部屋になっていた。
「だれか、お手伝いさんほしいな....」