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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第四章『迷宮への道のり』
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第三十五話『偽宝箱は冒険者』『慈悲なき超宝箱(チートパンドラ)①』

目の前に広がる景色は、今まで見てきた雪化粧ではなかった。

生い茂る青葉。

暖かいそよ風がみんなの服をくすぐっていく。

俺は寒いとか暑いとか外気を感じられないが、きっとほどほどの陽気なんだろう。

聖とベルベットが周りをキョロキョロと見回している。


「すごいぞ、見たこともないモノばかりだ!」

「御姉様、御姉様!あっちに血の臭いを感じますぅ!!」

「なに、戦闘か!?見に行ってみよう!」


って言って茂みに消えていくんですけど!!

ダルフ止めないのか?

いいのか?


そう思っているとダルフは太陽に手を翳してぶつぶつと呟いていた。

ダルフの顔はなんか釈然としていなさそうだ。


「(......ミュゼに聞いてはいたけど、これ程とは....温度も風も滅茶滅茶じゃないの.....長居は無用かしらね)」

「......(クイクイ!)」

「ああ、そうね、まったくあの子達は.....迷宮まで300mなのに」



ダルフが何を言っていたか分からんが、再びコメットに背負われ、どっかに行った修学旅行の暴走テンションのような二人をダルフと一緒に追いかけていく。

そして、目的の迷宮まで300mとか.....ショートカットしすぎじゃないの?

水の精霊に頼んで移動させて貰ったんだろうけど、もっとこう、冒険ワクワクみたいなさぁ。

ファンタジーとか冒険とかを考えていると、言い争いの声が聞こえてきた。

片方はよく聞く少女声.....対して相手はバリトンの渋い男の声と、脇役っぽい雑魚みたいな声が複数。

失礼な!と思うかもしれんがそう聞こえるのだ。


「おい、持っているものを置いていって貰おうか!」

「はっ、しょんべん臭いガキがなに言ってやがる、あんま調子ノんじゃねぇ~ぞ、オラ!」

「御姉様、正面からいってもめんどくさいだけですよぉ~、ここは問答無用でサクッと殺りましょう」

「おまえら、この方は泣く子も黙る天下無双の迷宮泥棒......その名も、『バングル』様なんだぞ!」

「「「そうだそうだ!」」」


んと、整理しよう.....聞こえた声で判断すると.....

聖がカツアゲをしようとしている。

バングルって奴が、ふざけるなと抵抗。

構わず殺ってしまおうというベルベット。

その他子分の太鼓持ち。


......あれ?聖たちの方が悪党じゃないか!!


「バカなの?バカなの?あの二人はバカなの?問題しか起こさないの?」


俺は背負われているため、どういう状況かは分からないが、ダルフからは見えているのだろう。

ダルフは茂みを走り現場に急行していった。

まぁ、人族の敵対者である魔精や魔獣に分類される俺たち、聖やベルベットのやっていることは間違いでは無いだろう。しかし、ダークエルフに類似した姿の二人がそんなことやったら、ダークエルフの評判は言わずも分かる。そして我らが上司は元ダークエルフの精霊だ。悪評を許す筈もない。

せめて、ヤるなら姿を変えてやるべきだろう。

てか、なんでいきなり襲うかが意味不明だ。

あとで聖に聞こう。


「......」


俺を背負うコメットは、茂みから出ていかずに様子を見ていた。

しばらくして、ダルフの声と二人のちょっとした悲鳴。

そして、男達の断末魔が上がった。

走り去る音も聞こえないことから全滅させたのか?

結局、殺したのか?

コメットも茂みから出て、ダルフ達に近づいていく。


「まったく、アンタ達は、バレずに殺れないの?」


「こんな風に」というダルフの声。

じょおおおおおおおおおおおしいいいいいい、止めに行ったんじゃねーのかよ!!


「ふざけるな、それでは私の騎士道に反する」


頑なに拒否する聖。

お前の騎士道ってなんなんだよ.....

俺の心の叫びは虚しく響く。


――――――――――――――――――――

そんなことがあったが無事に目的地に着いたようだ。

しかし、本当にここか?

ベルベットが、俺の疑問を代弁してくれた。


「マスター、ここですか?」

「ええ、そうよ」


頷くダルフの指し示す方角には、どこぞの恐竜パーク並みの金網の柵が森をぐるっと囲んでいた。

そして【DANGER】と掛かれた看板の下に南京錠付きのドアがあった。

金網の柵によって仕切られているが、不気味すぎる。

柵の高さは30mくらいあるらしい。

迷宮なの?

ダンジョンをダンジョンしようよ!

金網の隙間から不気味な森を覗き込むが、シンと静まり返っている。

因みに今の俺は聖に抱えられていたりする。

なぜなら、コメットがここの鍵を持っているからだ。

しかも、本人じゃないと開かないらしい。

コメット.....いったい何者なんだ。


「......(.....カチ)」


コメットが取り出した鍵が噛み合わさった音が聞こえた。


「さてと、招待されたのだから乗り込みましょうか」


ダルフに続いて、俺たちも中に入っていく。

最後にコレットが鍵を掛け直していた。


そうして、誰も帰ってこなくなった.......

なんて事にならない事を祈ろう。


―――――――――――――――――――――――


場所は変わり、北大陸最北端。

騎士の街『クラレント』に隣接する迷宮『レファンシアの呪海迷宮』の深層部では、主ダルフがいなくなってから2日たった今、迷宮に集う幹部達が話し合いを設けていた。

内容は、『今回こそ街を落とす作戦』についてだった。

熱心に話を進めるのは、188層の主『妖精ヴェルイット』以外の3人だった。

青と赤の目を持つヴェルイットは毎度のことに飽きれながら、やり取りを眺めるばかりだ。

会議は続く。



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