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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第四章『迷宮への道のり』
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第三十三話『偽宝箱は容赦がない』

魔精ダルフ・レファンシアは、北大陸の最北端に位置する街『クラレント』の出入り口に、自らの迷宮の入り口を持っている。

ゲームで言えば、街を出たそのとなりに洞窟があるようなものだ。

迷宮の名前は『レファンシアの呪海迷宮』。

街の出入り口のそばにあるとはいえ、海に面した崖沿いにポツンとある地下への階段。

それが呪海迷宮唯一の入り口である。

呪海迷宮と呼ばれるのは、階層の至るところに呪符があってあり、手を触れると特定の呪いを貰ってしまう所に由来しているのかもしれない。

さらに言えば、崖に面している筈なのに、迷宮内部は物凄く広く膨大な面積を誇ってるのだ。

ひとつのエリア自体が水没していたり、砂漠になっていたり、と外の環境なんかお構い無しだ。

常識的にあり得ない不思議な空間でもあるのだ。


呪海迷宮が出来たのが先か、隣にクラレントが出来たのが先なのか定かではないほど、遥か昔より存在する迷宮のようだ。

そんな迷宮の主、ダルフ・レファンシアが自らの迷宮を離れることは度々ある。

ダルフが迷宮を離れることで、ひとつの現象が起きる。

それは、迷宮の暴走≪メイズ・スタンピード≫。

膨大な数の迷宮に掬う配下達が迷宮を飛び出し、人々を好き勝手に襲うのだ。

クラレントにいる迷宮学者には、普段押さえつけている存在が居なくなったために起こるのだろう、と考察されている。

近隣にある小さな村や牧場や農場は、襲われたらひとたまりもないだろう。

しかし、莫大な数のモンスターの被害から守るの存在もいる。

それこそが、クラレントが誇る騎士団だ。

その勇姿を間近で見る子供達は騎士団に対して憧れを持つのは当然とも言えよう。

さらには、指揮をとるのはクラレントの領主、つまり城主であり、かの騎士王の血を引く者.....遥か昔は王族と言っていた。

騎士王の逸話は有名で、その子孫もそれなりの力を持つのだ。

士気は物凄い高いだろう。

訓練を積み、迷宮のモンスターの弱点や特徴を常日頃調べている彼らのお陰で、大量虐殺だけは防いでいた。また冒険者達も、普段手に入らないレアなモンスター素材と、ギルドから支払われる報酬を目当てに参加している。

それにより、10年単位で起こる迷宮の暴走も乗りきってきたのだ。

そして今回のダルフのお出掛けである。

前回の暴走からまだ7年だった。

つまり、異例の自体が起きたのだ。

ダルフ本人にとっては、別に嫌っている人族がどうなろうと正直知ったことではない。

そもそも、きっちり10年単位で外に出るのは、交流がある同族が、手紙を寄越すのがそのくらいだからだ。

もし、クラレントや近隣にすむ住人がこの事実を知ったら、手紙を送った主を恨むだろう。

まぁ、その相手も魔精だからどうしようもない。

故に、暴走を調べていた学者達は、可能性としてメッセンジャーの妨害を企ててしまうのも無理はない。

余談ではあるが、この手紙を配達するクエスト、南大陸ではもっとも高額な報酬で高難易度のクエストだったりする。


話を戻すが、今回ことでクラレント側は、不測の事態で今ごろてんわやんわだろう、とのこと。


「クラレントの街中を抜けるとき、アーサーとセージに会ったわね」


ダルフの知り合いかなんかだろう。


「相変わらず、歳を取らないし、衰えないあの夫婦会うのは100年ぶりだけど、今回私一人じゃないことにビックリしてたわね」


してやったり、とダルフ。


「でも、まぁ、私は止める気はないけど、なんで幹部連中に管理を任せると暴走するのか不思議で堪らないわね」


それから、街を出たダルフ一行は、ちっこい宝箱である俺を持って、この場所に来たと言うわけか。

道中、盗賊と山賊と襲われること8回だそうだ。

そりゃぁ、若い女だけパーティーだし。

......アホそうだし。


「え?若いって、もはや『あれ、このまま行くと4桁後半の年齢になっちゃうんじゃない?』と考えていた私が!!」


スルーしておこう。

嬉しそうに、てれってれっとするダルフ。


「それでですね、ベル達はこの【水錬の雪原】に入ったのですよ、馬は逃がして、後は徒歩です」


ダルフの代わりに通訳をしていたベルベットが教えてくれた。


「ここには、水の自然精霊様がいるのです」

「水の自然精霊?なんの用なんだ?」


自然精霊とはこの世界にいる五大属性の精霊だ。

『光』『水』『火』『土』『風』の5つである。

彼らの存在は世界に影響を与え続けているそうだ。

『火』の精霊が住まう環境は暑く。

『土』の精霊のそばは大地が豊かで作物の実りも良い。

『風』の精霊が通りすぎると、暴風、雷雨、大雪、大雨などを起こす。

『光』の精霊がいる場所は明るく、誰からも干渉されないらしい。

そしてここには『水』の精霊か......


『水』の精霊がいる水源は、水が綺麗で浄化もする、それを飲むだけで回復や治療効果をもたらす


ってことだが、まさか呪いが解けるとも思えないし.....

そもそも、南大陸行くには5人組のダークエルフ達が言っていたように、陸路を行くか、『転移の魔女』に頼むかしかないから、余計にここに来た意図が分からん


「ベルもよく解んないですけど、近道だからって.....」


ベルベットと俺は、頭に疑問符を浮かべていた。


「さて、ここに来た目的は......もう着くからあとでね」


そう言ってダルフは歩道を指差した。

ダルフが指し示す方向には大きな池?いや小さな湖があった。


日が出てきたことにより吹雪の影響も薄れていた。

このまま行けば絶対午前中には着くだろう。

それにしても、ダルフの服装は迷宮区にいた頃となにも変わらないな、寒くないのだろうか?

きっと魔法を使っているのだろうけど、魔法の便利さに脱帽です。

ダルフはいつ起きたのかコメットを呼び、聖を起こすように頼んでいた。


「悪いんだけど、あの子のこと頼むわね」

「......(コクコク)」

「あの子はなんでこう緊張感というか、危機感というか.....無いのかしらね」


コメットが俺を通りすぎ、後ろに掛けていった。

俺の予想だが後ろには、テントでもあるのだろう。


「えぇ~マスター、そこが御姉様の良いところですよぉ!」

「はいはい.....」


うんざりしているダルフと『御姉様の着替えに合法的に!合法的に乗り込むには.....ごにょにょにょ』

と言っているベルベットを尻目に、今の内に俺に出来ることを考えることにした。

せめてお荷物から脱退しなくては!!


とりあえず、新しくコードを入手することや、モノのコード化もできない。

今使える既存のスキルで乗り越えるしかないが......

使えるのは【宝石系】と【転写】と【達筆】か.....


宝石を精製するにしても掛かる時間が問題だが、【魔石】あたりで精製をやめておけば数を揃えられるかな?とりえず、ここの魔素を取り込んでみるか。


大気中に分散する魔素を取り込んでみた。

今回は【サポート・アシスタント】がないためログがでない。


結果、俺の中に取り込んだモノがNEWの表示と共にアイテム欄に現れた。


アイテム(62/99)


【水錬の空気】【水錬の魔素】【水錬の雪結晶】


一回取り込んだだけで3つか、今回からちゃんと整理しないと溢れそうだな。

試しにもう一度取り込んでみる。


アイテム(63/99)


【水錬の空気(濃度8%)】【水錬の魔素(12%)】【水錬の雪結晶(33%)】【光の結界因子】


おお、そうなるのか、

アイテム数は重複しないが濃度が増えていくのだろう。

濃度ってのはどういう扱いなんだ?

こう言うときに何故【サポートアシスタント】がいないんだ!!

あれだ、許容量ってことだろ。

それが一杯になると取り込めなくなるんじゃないのかと思う。

保存状態も気になるが、満タンにしてみたいと思うのはサガだ。

とりあえず暇があれば取り込み続けるとしよう。


この認識が後に問題になるとは、このとき気づきもしなかった。


そして新たに【光の結界因子】なるものが現れた。

これはコメットの結界構成の魔力か何かだろうか?

とりあえずこれも集めたいが、下手をすると結界を壊しそうだ。

あとで相談してみよう。


俺が魔素を取り込んでいる間に、みんな集まったようだ。


「ねむい.....」


目を擦りながら、あくびをする聖。


「ひじり、昨日はしゃぎすぎたからよ」

「御姉様!私が引き摺ってあげましょうか?」

「なんだと、はしゃいでないぞ? 」


ダルフは呆れ、ベルベットの台詞をスルーする聖。


後ろからやって来た聖に、コメットがせっせと服を直したり、色々と跳ねている髪を直したりしている。そういえば、今まで俺の中で就寝していた聖は、俺から排出されるときには身支度が全部されていたんだが、あれってなんだ、もしや俺がやっていたことになるのか?

たぶん【サポート・アシスタント】だろうけど。

しかしなぁ、どこぞの着替えられない姫みたいな感じになってるぞ


「だいたい私は今まで.....」

「よっ!髪めっちゃ跳ねてんな、天パだったんだな」

「っっっっっっっっっ!?、ふん!」

「ぐうぉ!?」


聖がこっちを見たんで挨拶しただけなのに、あのやろう足で俺を閉めやがった。

開かねーし、上に体重かけてやがるな?

もがいていると焦った声と冷ややかな声が聞こえる。


「バカね」

「あは♪もう慌てる御姉様.....はぁはぁ」

「おまえら、お、起きてるって知ってたんだな?」

「まぁ.....見れば分かることでしょ?」

「寝起きは弱いんですか?御・姉・様」


ぐぐっと体重をかけられた。

あれ、雪が柔らかいのか、地面に埋まっていきそうなんだけど.....

聖に抗議した。


「おい、ひじり!重い沈む!!」

「わ、私は重くない、鎧、鎧だから」

「いま、ブレザーだったろ!そもそもフルプレート持ってねーじゃん!」


とりあえず、もがくが意味はなさそうだ。

そうか、上に乗られると、なにも出来なくなるのは変わらないな。

外が落ち着くまで、なんかアイテムでも作っとくか.....

意外に耐久値高いしこの箱。


焼成炉は小型だがここにもあるようだ。

【総合デザイン】でツールを呼んで....

聖の髪の爆発くらいから、気休めに櫛でも作ってみるとするかな。

どんなスキルがつくかは、今の俺にはわかんないけど。






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