第三十一話『???』
微睡む意識の中。
リズミカルな揺れを感じた。
なんだろう、なにかに乗っている?
いや、運ばれているのか.....
電車のような.....う~~んでもここにそんなモノ無さそうだし。
視界は真っ暗だし.....なんかうとうとしてきて、起きてられないぞ。
音も段々と......遠く。
ドカンっ―――。
と特大の衝撃を受けるが、それでも意識は朦朧としている。
――――――――――――――――
『あんたに持たせて置けないわ、コメット代わりに持ちなさい』
『......(コクコク)』
『!?なぜだ、私が持つのが道理だろう!?』
『さっき、ゴブリンと戦うときに嬉々として投げ捨てたじゃないの......』
『違うぞ?その、あれだ....避難させたんだ』
『二次災害の方が酷いわよ』
『まてコメット、私が持ち運ぶぞ!』
『......(フイっ)』
『いや、ひじり.....諦めなさいよ』
『っ!ならば、倒して奪い取るまで!』
『くっ、これから先が長いのに、このバカのせいで余計時間が掛かりそうで怖いわ!』
――――――――――――――――
いまだにうとうとしているが先程よりも、意識が戻ってきた。
どうやら、もう迷宮の外のようだ。
上手く処置出来たらしい。自分の状況はまだ不明だが、近場の声から、魔精のダルフとブラックパラディンの聖、ダルフの付き人コメット.......それから知らない声。
『いいわね?遊んでる暇はないのよ、まずこれから南に街道を降りて、【水煉の雪原】に入るわ、街道にはゴブリンとか出てくるけど、無視して進むわよ?』
『ん?なんで無視するんだ?倒せばいいだろ』
『いや、アンタ.....広く見れば同族といえるのよ?』
『はっ、アイツら出てくるなり、「パンツみせろやー」とか言ってる連中だぞ?』
『......御免なさい、敵だったわ、出てくるなり駆逐よ』
『......(コクコク)』
『え~?御姉様......ベルはめんどくさいんで、寝てて良いですか?』
『おい、新入り、お前はそれでもちゃんとした配下か?私を見習え!』
『っ!?止めないでコメット!コイツ......殴れない!!』
『むぅ、ベルはちゃんと出来る子なんですよ?御姉様とはスペックが違うんですよぉ』
『おし、分かった決闘だな!【スヴァルホース】から降りろ!』
『えぇ~......まぁ御姉様をいたぶれるなら.....はぁはぁ』
『ちょっとまて、ベルベット』
『なんですかぁ~、ベルは準備おけですよ~』
『おい!ダルフ!!デカ乳!!!アイツはなんだ!?痛いヤツじゃないか!!』
『......さぁ、コメット先を急ぐわ.....今日中に【水煉の雪原】まで行きたいわね』
『......(じとー)』
『いきますよぉ~、御・姉・様ぁ~』
『っ!?【シャイニング・ディストラクト】!!』
『っっっちょ、御姉様、それ、だめ....消えちゃう!!』
――――――――――――――――――
んぁ?、おお今度は確実に覚醒出来た。
でも動けないし暗いな。
視界が真っ暗だ。
今までだと全方位が任意で見れたのに、今はなにも見れない。
それに、視界にいつも表示される報告ログが画面ごと無くなってるな。
今俺の視界にあるのは暗い景色と【MP】の表示ゲージだけだ。
シンプルになったもんだ。
そもそも、ダルフに手を突っ込まれてからどのくらい時間がたったんだ。
それに微睡んでいたときに聞いた声......
やはり、もう移動を開始していたのか?
アイテムはどうなった?
視界を探すが、いつもの場所にアイコンが見つからない。
ちょっと焦ったが、端から探していたら見つかった。
【アイテムボックス(59/99)】
え?これ?スッゴい縮小されてるし。
元の箱の1フレーム分しかないじゃん。
スキルはどうだろうか。
.......スキルの方は使える状態のスキルだけ持ち越しているようだ。
気づいたのは【サポート・アシスタント】スキルが無くなっていること。
でも、それも予測通り、俺の希望が通っていたら『あっち』側で頑張ってくれている筈だ。
とりあえず、視界を確保したいな.....
上蓋を持ち上げることにした。
てか、持ち上げないと今度は見れないのね.....
本格的にミミックじゃないか.....
静かだから、たぶん夜かな。
そんな予測のもと俺は視界確保と状況確認をすることにした。
魔
MP:27850/27850
種族: 偽宝箱( トレジャー・ミミック)
タイプ:物質系
魔法:―――
発動スキル:『スロット(3)』
保有スキル:【宗教撃退EX】【異常状態完全無効】【宝物保管】【宝石精製】【宝石加工】【多国語(12ヵ国)】【達筆】【転写】【総合デザイン】【電流操作】
備考:現在魔核の定着を完了。異常なし。