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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第一章『迷宮の復讐劇』
3/75

第三話=level:11→48

「俺は、俺は人間を辞めたぞぉぉ!」


そう叫び声を上げる俺だが、残念なことに俺の声は誰にも認識されることはない。


さっき目の前で、俺が仕掛けた毒針に見事に引っ掛かった中年くらいの冒険者が、装備を残して粒子になって消えていったが......それ以外に誰もいない。


「ふむ、やはり、【危険物(甲)】の方のスキルが速効性があるな.....これ食らったら回復する暇ないんじゃないのか.....これは即死系トラップになったな」


呟きつつ、辺りの転がる冒険者の装備品を長い舌を伸ばして回収していく。


今回は初めて女物の鎧が手に入ったぞ。

全く......これでコードが解明できる。


周りには5つくらいの装備品が転がるが、俺が倒したのはこの宝物庫で仲間割れを起こし、全員を倒して回ったさっきの男のみだ。

どうせ、ピンピンしているさ。

きっと裸だから、恥ずかしがってダッシュで宿屋直行だろう。

盗賊っぽい女の子倒すからそういうことになるんだよ。

バァカァメェ!!


復讐を決意した......いや違うからな。

生まれ変わった日から今日で丁度4年だ。


長かった。ここまで来るのがとても長かった。

自由に引きこもりライフを満喫するためにはどうやら『ある程度』の強さが必要不可欠である。

あと、迷宮区で気を抜くなど万死に値すると、あの野郎ドモに.....教えて貰った俺に不覚はない。

しかし、トラップを突破した冒険者には相応の品を渡している。

俺はフェアプレー精神の塊だ。

階層主倒したご褒美部屋ですることじゃないとか、近場の町で言われてそうだけど、だが言いたい!

何を言っているんだ!って

常に良い物、身の丈が合うものが貰えるほど世界は甘くなく。

けして、この部屋は休憩所ではない。

確かに、金銀財宝が山盛りになった俺の部屋の魅力は分かるが、俺がただで口を開ける男だと?冗談ではない!

ほしけりゃくれてやるが、簡単には渡さねぇ......渡したくねぇえ!!

店で金を払うように、俺に、お前らも相応の対価を掛けて貰わないと達成感なんて無い無い筈だ。

だって俺はお金を貰っているわけではないんだ、お前らが勝手に持っていこうとするんだ!

だから、対価は必要だと思う。

ここまできているのに、死んでしまえば、今度は手に入る財宝どころか、自らの装備を失うはめになるから。これで対等だろう?

俺は罠を張り、冒険者であるお前らは宝を手に入れようとする。

普通は命がけで掴みとるものだが、この部屋じゃそういうやり取りはできないし、俺にとっては見たこともない装備を手に入れる絶好の機会だ。

対等じゃないか!


「まだ、俺は一回しか負けてないが.....」


4人分の装備を『ペロリんちょ』してそれがアイテムボックス。

つまり俺の体に取り込まれたのを確認する。

今の俺は、昔の俺。

つまり、緑の服を着たとんがり帽子の主人公のダンジョンで出てくる『小さなカギ』が入っていた宝箱から進化して、『ボス部屋のカギ』が入ったきらびやか豪勢な宝箱になっているのだ。


これは俺のスキルを用いて改造した。


打ちのめされた俺は、自らの有り様を見つめ直し、持ちうるスキルを完全に使いこなせるようになるべく寝る間も惜しんで没頭した。

そもそも、箱である俺は眠くならん。

寝るっと意識すれば眠れたが......


俺のスキルで一番の利用率が高いのがこの【時間は有限にして無限】というスキルだ。

これはある意味、時間操作のスキルだった。

ただし、操作できるのは俺のボックス内だけ。

これにより、作製時間の短縮が可能になった。

あとは、逆に時間を引き伸ばすことも出きる。

そして、膨大な時間が掛かる宝石や宝剣を1日2日で生成できるようになった。


2番目は【文字化】と【コード解析】だ。

これによって、アイテムオブジェクトを何もない空間から魔素だけで取り出すことが可能になったのだ。あと、俺は禁忌に近いことをした。


俺の能力値は見えていなかったが、俺は俺を【文字化】で文字化して、【コード解析】でコードを記憶して、その後解析を行い、何がどうやったらどうなるのかを【トライ&エラー】で繰り返し自動検証。

そのあと、俺自身を元の状態に戻すために、本来はバグ発見やPCのプログラムの間違いを検出する【デバッグ作業】スキルを用いて元の『俺』に戻る。ということだ。

これは【サポート・アシスタント】スキルでも70%の成功率を提示された。


もし成功すれば、魔武器のごとく俺の体が最強になるに違いない。

期待しまくりの俺は生まれて次の日に実行したのだ。


そして、スリープモードから覚めた俺の視界は、けた違いの情報量に意識を飛ばしては起き飛ばしては起きを繰り返し、30回くらいで、数秒は耐えれるようになった。

さらに同じことを繰り返して、完全に馴染ませた。

余裕が出来てから、まず驚いたのは、視界に映るすべてのモノに吹き出しアイコンが追加され、凝視しすると、それの詳細データが見えるようになっていたのだ。これを人に試してみたが見えたのは職業とギルドランク。

つまり、冒険者カードを見れるようになったらしい。


あとは自らの詳細ステータスを表示できないかどうかだ。

結論としては表示できた。

自分のステータスのコード番号はほぼ分かっているので簡単だ。

じゃあ、改造は?

と、行動に移したけど、改造できたのは発動スキルを増やすのと自分の魔核(コア)の残量を表示することぐらいだった。

魔核(コア)とはゲームで言うところのHPだと【サポートアシスタント】に説明を受けた。

やはり、自分で自分を変格させることは諦めた方がいいようだ。


そして気づいた......俺は3年眠り続けていたらしい。

その間に冒険者が訪れたのかはわからないが、取られるものは何もなかった筈だ。

冒険者にとってはスカも良いところだろう。


自分の解析で3年も掛かるなんて......もうしないからいいけどな。

それにしても、『コード』か.....


「人のマトリクス・コードは入手しづらい、とゲームで言っていたのが実体験出きるなんて」


いや、俺は箱だから......人間とかになるともっと掛かるのか?

難しい議題だが、人体実験は自分だけで十分だろう。

魂は.....やめよう。

この考えは危険な気がしてくる。


だが、自分を解析できたことは悪いことではない。

これにより、あのショボい錆びた見た目が真新しく変化したのだ。

きっと最後に行ったデバッグで錆とか破損とかをバグとして処理して修繕したのだろう。

俺にとっては究極の回復魔法だな。

物質ゆえに出きる荒業ってところだろ。


そして、自己分析を終えた俺がしたことは、【宝剣】や【宝石】などの宝物と罠を張るための小道具を作製することだ。

まともに【鍛冶】スキルを使ったのは始めの一回のみで、後はみんなアイテムボックスにいれたまま、【総合デザイン】スキルで3D図面にレイヤーを使った複雑な調整、およびデザインを加えて、最後に体内炉で適温で自動作製し、体外に排出。

再び取り込み、【文字化】でコード取得。

あとは、最適材になるように【トライ&エラー】と【時間は有限にして無限】スキルをかけ、コードを埋めていく作業をしてもらうのだ。

これにより面白武器が出来たりもする。

需要あるのかわからんけど、

そこそこの完成品はこれだ。


短剣:ブレイブⅡ

属性:【火】

付与スキル:【頑丈】【フレイム・ブースト】


刀身の色は特に面白味はない。

斬れやすいと思う。

【フレイム・ブースト】......炎を纏う身体能力の補助魔法。力に補正。


ってやつが、まぁ、拾って喜びそうなモノだろう。

スキル効果で全く同じものを作っていない俺は、これはと言うものが出来たらボックス内で99個より溢れたものを部屋に散らばしていく。


他も似たようなことばかりして、1年経つとあら不思議!

金銀財宝の山の出来上がりと言うわけだ。

当然、いまだに誰にも渡していないので、需要が気になるところだけどな......

あれだな。


「自分の作品が売れるかどうか気になる作家のような感じか、早く誰か来ないかな」


まぁ、来てもさっきのような腑抜けは俺が敷いた複合トラップに引っ掛かりお陀仏だがな。


「はっはっはは......」


高笑いをしてテンションMAXな俺。

しかし、俺にさえ手を出さなければ、意外に収入がでかいのではないのか?

落っこちているのは俺的に『がらくた』だし、ご自由にどうぞ.....て感じだ。


「しかし、人間というのは強欲な生き物....宝箱があれば開けたくなる.....まさに人の業!!人の夢!!」


ロマンか....そしてそれがわかる俺は当然、罠を解いてたどり着いたヤツにはちゃんと対価に見合う物を用意しているのだ。

けして折れない聖剣とか、投げたら戻ってくるハンマーとか、魔法を吸収する右の指ぬきグローブとか

さ!!


ごごっごごーーー。

という音と揺れ。


お、この振動どこかに繋がったな?

視界を扉に向けると【サポート・アシスタント】スキルで視界と音声の案内が入る。


ー105層に接続を確認ー

ー階層ボスは昆虫系【アーマード・バグロード】ー

ーパーティー重傷者8名中5名ー


むぬ、深層の序盤ってところだな。

ここは歓迎ししてあげないとな。


ギギギーーー。


開かれる扉、息を飲む冒険者達。


『ようこそ!俺のパラダイスへ。さぁ、本当の戦いはこれからさ』



そして、一話に繋がる。

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