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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第三章『迷宮への招待状』
28/75

第二十六話=level:150★(限界)

宝物庫に突然現れた迷宮幹部。

一触即発の空気の中、ダークエルフのリーダーが幹部に話しかけていた。

てか、本当に用事あったんだな。


若干だけど演技なんじゃないかと思っていた俺が恥ずかしいぜ。


「招待状?レファンに???」


宝物庫の入り口で頭に疑問符を浮かべ、わけがわからない、という顔をするオッドアイの大人びた女性。

彼女のいうレファンというのは、我らが上司で迷宮主のダルフ・レファンシアその人だろうが、あだ名で呼ぶことから、昔から仲が良いのかもしれない。

まぁ、迷宮出来て何年か分かんないけど、100年レベルじゃない気がするな......


「ああ、出来ればレファンシア様を生きている内に見たかったが.....忙しいなら仕方ない」


アルトネや周りのメンバー全員が、若干しょんぼりとしていた。


「まぁ、そ、そうね?そうよ!忙しいのよ」


幹部は汗をだらだらと掻きながら、弁解してい......

ん?なんだろうか.....幹部の女性の挙動が......てか名前なんだよ!!


ー【泉の妖精ヴェルイット】ー


さすがです!アシスタントさん。

返答してくれる【スキル】に感謝しつつ状況を観察する。


やっぱり、ヴェルイットが挙動不審で怪しいんだけど.....


ヴェルイットの様子は、そうだな.....あれだ。

『あれ?そんなつもりじゃなかったんだけど?そうなっちゃった?』

って顔してる。


「んん!まず手紙を預かろうかしら?」


話をごまかすように咳払いをしているヴェルイットだがその場を動こうとしなかった。

アルトネ達も不思議に思い、こちらから渡しに行った方がいいのか?それとも罠か?と目線でやり取りをしている。

ただ、


「いや、とりあえず『安全のため下がりますか?』とか視線で会話する前に、私の安全確保しません?これ世間ではハブっていうんですよ!いじめですよ!ピンチですよ!!」


俺の目の前で芋虫のように跳ねる人物は、ヴェルイットですらスルーするようだ。

なら俺も目障りだが、気にしないことにする。


煩く暴れる芋虫がいるが、それを除いたダークエルフはヴェルイットを警戒して動けないようだ。

ヴェルイットはそんな雰囲気を察したのか、はたまた計画していたのか、にっこり笑い『俺』を指した。


「その宝箱に入れてくれれば良いですよ」


......は?


何をいっているの?あの髪の毛お化け。

俺、郵便受けじゃないんだけど!!

俺がミミックってばれる....あれ?こいつらバレても問題ないんじゃね?

レファンシア様至上主義なら、こういうギミックや罠もバラさないんじゃないだろうか....

うんそうさ。きっとそう!

それに良いこと思い付いた。

だから、仕方なくなんだからね!

話進まなそうだから受けとっとく、だけなんだからね!


「いや、この宝箱には幾重にもトラップが.....」


アルトネが、いやいや無理だからなにいってんの?って顔をしているが、突然光出して、ガシャンガシャンと変形をする俺に驚愕の表情のアルトネ達.....惚れるなよ?


とりあえず既存の罠を外して、手紙が入る感じの箱を即座に【スキル】でモデリングして外装を出力!その間僅か3秒。さすが脳内イメージをそのまま出力できる今の俺!


真っ赤な外装に装飾の類いは着けないシンプルな構成。

今ではコンビニで代用できるためこの形、レア度は計り知れない!!

内部に繋がる口が二つある可愛らしい作り!

やはりシンプルイズベスッ!


「キモッ」

「うわぁ」


俺が自らに酔っているとバシャリと、水でも浴びせられるかの一言が刺さる

おい、そこの芋虫!いまなんて言った?ん?質量を無視した変形機構の良さがわからんとは.....

まぁ、ダークエルフに距離を取られるのは分かるぞ。

突然の変形で戸惑ったんだろう。


「だが、ヴェルイットさんはなんで更に離れるんですかね?仲間ですよね?」


しかし、残念なことに俺の声は幹部といえど、認知しなかったようだ。


「こ、これにいれるのか?」

「え、ええ、お願い」


何度も目線で確認しているアルトネと、壁際まで避難したヴェルイットと他のダークエルフ達。


「爆発なんかしないよ!?」


警戒されて悲しい俺の嘆きをよそに、アルトネは手紙を口に入れようとして―――入らなかった。


「ん?」


不思議がるアルトネ。


「......入れられないのですか?」

「あっ、オーウェ、そうなんですよ、困りました」

「ひどいですよ!いま忘れてましたね!明らかに足元に転がってましたよね!」


困っているアルトネに声を掛けたのは、みんなが無視してふて腐れていた芋虫状のオーウェだ。

俺は覚えていたぞ。だって目線の高さでバタバタ動き続けるから、ちらついてな。

オーウェはじっと俺を見た後、何かに気づいたようだ。


「もうひとつの入り口は?」


そう、それだよ!オーウェ!

俺は気づいて欲しかったんだよ!


うまくいけば俺は目的が達成できて、ダークエルフ達もミッションクリアでWINWINだぜ!!


「どうしました?」

「はぁ、眠い」

「うわっ見なさいよこれ、エリクシールおいてあるわ!」


小柄なウルシュナがアルトネ達に声を掛ける。

周りには、腕を組んで船を漕ぐイシュタルと、壁際の棚を覗き込み声を上げていたエルモア。


って自由な連中だな!やっぱり聖に似て.....いやまてまて聖が似てる?ん?


「早く!レファン!来なさいよ」

「......」

「はぁ、一番に会えないから行きたくないって、なに駄々こねてるのよ!!」

「.....」

「ごめんて謝ったじゃないの!」


ダークエルフから俺を挟んだ反対側の壁際では、ヴェルイットが身振り手振りで誰かと話しているようだ。


「カオスだな....うん」


感慨深いが、とりあえず、この手紙の件だろう。



「なんです?『専用のサイズの紙をいれてください』?」


アルトネが、俺が殴り書きした指定を読み上げた。

オーウェはなにかに気づいたようだ。


「紙?あれこのサイズ私の魔呪符と同じですね」


!!そう、さぁ、はやく!


「じゃあ、同じ形に切ればいいですね!魔呪符借りますよ?」


アルトネが芋虫オーウェの服から魔呪符を抜き取った.....っていやいや、まてよこら!

なぜそうなる?え?あれ?

ふつう、そのまま入れるでしょ?

自動販売機に千円の形を切り取っていれたりしないでしょ!?

その胸は飾りか!胸じゃなくて脳に栄養を.....


俺が頭を抱えたくるなっていると、助け船が出された。


「え?アルトネそのまま入れちゃえばいいのでは?」

「え?」


助け船は魔呪符の持ち主であるオーウェだった。

マジ感謝。


アルトネは気づかなかった、という顔をして早速入り口に魔呪符を差し込んだ。


「いやっほおおおお!」


俺歓喜!

ついに停滞していたコード収集を進められそうだ。


そうして手紙をきちんと受けとった。

俺は早速コード解析に魔呪符を回し、終わるまで状況の観察に入る。


アルトネやヴェルイット達には、俺の声は完璧に聞こえないようで、騒ぎすぎかと思ったが良かったと思う。


そしていい加減目の前で変形もされれば、俺が偽宝箱であるということはバレただろう。

しかし、アルトネ達を見ていると言いふらしたりしなそうだな。

オーウェが心配だが、押さえもいるので大丈夫だろう。


アルトネ達は用事が終わったため、自らの森に帰るらしい。

やはり迷宮攻略に来たってよりは、ダルフに会いに来たのだろうか....

しかし、ダルフは現れず.....いいのか上司?もう帰りそうだけど.....

何回も連絡を送ったが返事がない。


ヴェルイットの方は『私は悪くない.....レファンの日頃の行いが....』

と呟いて隅で頭を抱えているし。


「ヴェルイット様、私たちはこれで失礼します」

「もうちょっと、いない?」

「いえ、報告の義務がありますので」

「そ、そうよね?」


アルトネ達は帰りは歩きだそうだ。

途中で移動手段をなんとか手に入れたいと言っていた。

ヴェルイットが引き留めようとするが、アルトネは堅い。

後ろのメンバーは歩きと聞いて、物凄く嫌そうな顔をしているのが見えた。


俺の正面の入り口に向かうアルトネ達を見送る俺とヴェルイット。

聖に会わせてみたかったな....

あったらどうなるのだろうかと思いを馳せていたら、扉の閉まる音が聞こえた。


「手紙は.....ちょっと預かってて頂戴ね」


そう言ってヴェルイットも正面のドアに歩いていった。


「荒れているでしょうね.....嫌だわ」


という声が聞き取れた気がした。

ヴェルイットはこちらに手を振り、ため息を吐きながら消えていった。


「なんだったんた?」









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