第二十二話=level:146
遅くなりました、最近仕事が忙しくって申し訳ないです。
日曜日の予定が新年会で潰れたよ!
ごめんなさい。月曜日は二日酔いでした。
次は日曜日にちゃんとあげます。
予約投稿してきたよ!!
読んでくださりありがとうございます。
感想もありがとう。
「そういえば......」
3層の階層主【ダーク・ナイト】が進化して【ブラック・パラディン】になった黒木聖が、宝物庫に散らばる回復ポーションや解毒薬を、肩に掛けるバックに入れながら俺の呟きに返事をした。
こいつ堂々とやるとは潔いな.....
まぁ、何時もの事だから気にしないけど。
「ん、なんだ?」
「いや、その格好ってお出掛けか?」
聖の格好は俺が渡した黒騎士装備ではなかった。
今の聖は、冒険者としての格好でもなく、騎士学院に行っていた格好でもない。
さらに言えば、ここ最近、クラレントの城下街で手に入れたパジャマでもない。
フリフリの装飾に、丈がそこそこで色は黒と白のチェックのスカート。
色は本人の要望なのかどうなのか分からないが、白のブレザーに黒のワイシャツ.....
なんていうか、異世界でじゃないとあり得ない配色の学生服に見えるんだが、どこに売っていたんだ?
というか、白と黒だけって.....なんか単調だな。
ついに腰元まで伸びてきた銀髪を、鬱陶しそうに手で払っているのが目につく。
俺がじっと見つめていたせいか、それとも鎧を着ていないせいか、そわそわとして落ち着きがなさそうだ。
「おい!お前の舐め廻すような視線に晒されると生命力が減るから見るな!」
「まて、俺が変態みたいにいうのを辞めて貰おうか」
聖は残像でも残さんばかりの速度で俺の真後ろに回り込んでいた。
なんだ、その速度、化け物か!?
いや、元々モンスターだったな。
あと俺はそんな視線送ってないぞ。
くっそう、大体今の俺はビギナーペロリストで、視線で舐め廻すようなプロペロリストじゃないぞ!
「なんなんだよ?少し前までは、インナー姿でうろついてたのに」
「なぁ!?忘れろ!あれはまだよく分かってなかったんだ!」
昔を思い出してぼやく俺に反論する声。
俺の後ろから、ドカドカという音と視界の揺れを感じるんだが、俺殴られてるのか.....げせぬ。
それにしても、聖が羞恥心を身に付けてくれたとはな.....こんなに嬉しいことはない!
迷宮内をインナーが溶かされたからって裸で行軍して、ダルフに連行されていった4年前が懐かしいよ.....
それに比べて......この変わりようだもんな!
これが教育機関の力なのか......
あそこでの集団生活で常識を学んでくれたようだ。
マジで感謝している。
そのうち寄付金に俺の極限シリーズを贈呈したい。
「ああぁ、わかった。もう忘れたから、剣でつつくのはヤメロ」
「ふん!」
けして痛いわけじゃないが、不快感があるんだ。
俺の真後ろで暴行を加えていた聖が正面まできた。
しかし、なんかチラチラとこっち見てくるな.....
「なんだ?」
「え?いや、別に......」
そう言って少し残念そうな顔をしている。
なんでしおらしくなってるんだ?
わけが分からん.....こういう反応って前世でもあったぞ。
そう、引きこもりの俺が無理矢理連れ出され、妹の買い物に荷物持ちで行ったときだ、妹が服を試着している間、周りの視線が気が気ではない俺は、4DSで「ラブ掛ける」を.......おっと違う黒歴史を思い出す所だった。
危ない危ない。
こっちのほうだな。
妹が服を着替え俺に「どう?」って聞いてきて、「ぱねぇっす!」っと適当に返して殴られた時の、服の感想を求める妹に今の聖がそっくりなんだが......
聖は何か言われるのを待っているぽいし、誰の入れ知恵だ?
この反応から、見せてこい、と言ったに違いないな.....
となるとダルフか....いや、ダルフの選ぶ服は民族衣装っぽいのばかりだから。
これはコメットだな。
考え込む俺のせいで無言の間に耐えられなくなったのか、スカートの裾をさわったり、袖口を引っ張ってみたりしていた聖に俺は言った。
「マジぱねぇっす!」
「え!?」
「マジぱねぇっす!」
二回言ってしまった。
うん、後悔してないよ?
だってこれしか浮かばなかったんだ。
服が似合うかどうかなんて俺には理解できない。
年中、ジャージか、ジーパンにチェックシャツの俺にファッションなんて.....
俺の台詞に凍りついて動かない聖。
やっぱりだめか?
「かわいい、聖マジかわいい、天使だよ」
って言って挙げた方が良かったか?
しかし、俺は服評論家でも、コーディネーターでもないし、センスは分からんが、可愛らしい服だと思ったのは確かだ、故に妹の時と違って『マジ』を着けたんだが......
コメットは似合うようにと色々と気を使っていると思うんだけど、上手く誉めれないぞ!
「服が可愛い」と言った方が良かったのか?
いやそれだと服だけ可愛いと言っている気がしてくるな。
じゃあ、「似合うね!」と言った場合「どこら辺?」と聞かれそうだ。
実体験を基づくと「全部だよ」っていうのは不正解らしい。
わけが分からん......
くっ、やはりナチュラルの俺にはコーディネーターの気持ちなんかわかるわけないんだ!
「あ、ぁあ......うん」
聖は再起動して、ぼそっと言ったきり黙ってしまった。
「......」
「......」
沈黙が続くが......
空気が重いぞ。
しかし、街に行くにしては結構着飾っている気がするな。
さっきまで54層を攻略していたんだろう?
パーティーはコメットとのツーマンセルだろうか.....
そうなれば、出掛ける相手はコメットか
「クラレントの商店で買い歩きか?」
「う、うぅ、そっちは遠慮したい......」
なんか.....反応が硬くなったような。
「女の子は服屋のはしごとか、そういうの好きだよな」
前世の記憶を思い返す。
最初の服屋に行き、ちょっと買ってから、次の服屋に行く。
そして次.....
そんな感じで時間が過ぎていく。
服に興味がないこっちは、付き合わされるのはたまったもんじゃないな。
ひとつの服屋に一時間はいるし、俺なら30分も耐えられん。
そんなことを考えて、きっと本人達は楽しんだろうなと思っていると、なぜか聖が困った顔をしていた。
「いや、私は服とかに興味はないんだが.....」
「そうなのか?」
そんなことを言いつつ、結構服を持っている気がするんだが、ここ数年で俺の1フレーム(99個までは入る)を服だけで使いきってるんだけど.....
そう言うと聖は、若干疲れた顔をしていた。
「同じ服を着ていると、コメットとデカ乳が五月蝿いんだぞ?」
「組み合わせで結構バリエーションが拡がるだろ?」
「そう、思っていた時もあった....」
そう考える俺に賛同する聖は遠くを見つめていた。
宝物庫は30×30だから広くないが、きっとここじゃないどこかを見つめていたんだろう。
色々と考えるようになった【ブラック・パラディン】に感動しながら、結局誰と何処に行くのか聞いてないことを思い出した。
一応、恩恵を授ける者として、上司として何かあったときのために聞いておこうと思う。
「で、コメットと買い物に行くってことでOK?」
俺が言った言葉に首を降る聖。
「違うぞ?まぁ、コメットは絶対に付いてくるって言っているが.....」
んぁ?違うのか?服だって選んで貰ったんだから、てっきり二人でお出掛けかと思ったんだが.....
「んじゃ、どこに行くんだ?」
「クラレント城」
ん?ごめん、可笑しなことを聞いた気がする。
「もっかい言って?」
「だから、王城」
「それってダルフ知っているのか?」
おいおいそれ聞いたらダルフ止めるんじゃないのか?
止めなかったのか?
「さっき直接言いに行ったら、なんかコメットに念を押してたぞ?」
行くことは認めたが、そこは譲れないって所か。
俺でもたぶんそうするな。
なんでそんな天敵が居そうな場所に行くかね?
そこら辺考えて欲しいぜ。
しかし、聖は城下町でも騎士学院でも結構な有名人だって話だしな。
間違ってもバレはしないだろう。
「だいたい、何しに行くんだよ.....」
それ相応の理由でもあるのか?それとも、この街で唯一見掛けるダークエルフ(実際は違うが)だから、怪しんでいるとか?
確かに【サポート・アシスタント】に聞いた話じゃ、ダークエルフは南大陸か西大陸に多いらしく、北大陸のこんな大陸の切れ端では見たこともなかったそうだ。
遥か昔のそれこそ、世界中に国が存在していた頃はいたらしいが、いまじゃあ、『レファンシアの呪海迷宮』の元ダークエルフの精霊をしていた主くらいだろう。
結局その魔精を目撃した奴は帰らぬ人になってしまうから、ダークエルフの目撃者はいないと言える。
そんな所に数年前からひょっこり現れた黒木聖を怪しいと思うのは当然か.....
「ああ、さっきシーシェから手渡されたんだが、今日の誕生日の式典に来て欲しいらしい」
シーシェ?誰だっけ?ああ、思い出した。
「最初にパーティーを組んだヤンチャな男の子か?」
そしていつも隣に気の弱そうな子供が一緒だったヤツだな。
あいつらを俺が見かけたのは5年も前だが、聖は今でもパーティーを組むことがあるようだ。
騎士学院でも同じだったそうだし。
「ん?」
あれ?っという顔を聖はしていた。
「シーシェは女だぞ?」
「は?」
なに言ってんだ?確か髪も短いし、俺とか言うし、胸なんか無かったぞ?
どうみてもヤンチャな男の子だったろ?
「私は最初の去り際に教えて貰ったが......今ではどうみても私と変わらない感じになっているな!」
ま、まぁ、10歳じゃ間違ってもしょうがないな、まだ成長前だっだんだろ。
それに、どっちでもいいか......
むしろパーティーメンバーに変な虫がいなくてよかったと思うとしよう。
しかし、
「聖とおんなじ感じか.......」
俺の呟きにそうだぞ!と慎ましい胸を張る聖。
「つまり、残念な女騎士が二人か」
「おい、待て、誰が残念だ、理由を聞こうか!」
俺に食って掛かろうとしたとき、最近繋ぎっぱなしの扉が開く。
開いた先には、今聖が着ている服の配色をそのまま反転させた服を着ている金髪碧眼の美少女がいた。
『......』
彼女の声は聞こえないが、聖には聞こえたようだ。
「コメット、もう行くのか?」
聖も美少女と言えると俺は思うが、性格が残念なのか、現れたコメットに比べるとどうしても同じと思えない。
その聖はコメットの方へ歩いて行く。
『......(じー)』
「ああ、後で言うから」
コメットの視線に恥ずかしそうに視線を反らし、コメットの背中を無理矢理押して、この部屋から出ていこうとする聖。
「そうだ、なにかついでに欲しいものはあるか?」
聖がいつものようににこちらを振り返った。
「いや、いいよ。迷惑だけは掛けるなよ」
出掛ける度に確かに頼んでいるが、さすがに今回は遠慮しよう。
コメットから「これ以上面倒の種を持ち込ませるな」という強い視線も感じるしな
「ああ、わかった程々にする」
最後にカラッという気の良い返事を聞いて見送った。
一人になりふとここ1年のことを思う
「.......そういやダルフを全然見てないな」
いったい何してるんだか.......