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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第三章『迷宮への招待状』
23/75

第二十一話=level:144

編集しました。

あべこべになっていてすいませんでした。


次回から週一で投稿しますので読みやすくなっていれば幸いです。


更新予定日は日曜日です。




パキンっと剣が折れる音がこの宝物庫に響いた。

若干の音の反響。

訪れる静寂。

そして、ぼそっとした声。


「まじかよ......」

「ありえないね.....」


カランカランと転がる刀身に呆気に取られる二人の人物がいた。

一人は、ローブを纏い、2m近い杖を肩に掛けていた青年、黒髪に前髪だけ青色で、縁のない眼鏡をかけている。たぶん魔導師だろう。

もう一人は、どっかのゲームから出てきたような意匠が施された甲冑の青年、片手に小さな丸い盾、反対には剣、といういかにも騎士のような格好。

二人とも歳は同じくらいに見える。

騎士の格好の青年は、剣を振りきった姿勢で、下に落ちた刀身を二度見していた。


「いやいやいやいや!」


男が、手元とある場所に視線を交互に送っているが、事実であり、嘘偽りはない。


「アロンダイト?緋色金?」


魔導師の相方は、アゴに手を当てて、考えられる材質を思い浮かべているようだ。

そのどれもが伝説クラスの鉱石を挙げている。この世界にもそういう鉱石は存在するが、だが......魔導師が挙げた例は、どれもがハズレである。

ちなみに材質は普通の木材に普通の金属だったりする。


「それより、どーすんだよ!!」

「ん、どうしたんだい?」


すっかり軽くなった剣だったものを考え込む眼鏡の青年に見せつけていた。


「これ、まだ支払い終わってねーんだぞ!!」

「......そんなの知るか」


青年はため息で応じていた。

やれやれといった雰囲気の眼鏡の青年は、詰め寄る相方に冷めた眼を向けていた。


「そもそも、素直に【罠外し系】スキル使いなよ......」


言われた青年は「うっ.....」とした後言い返す。


「ばか!俺が知っているミミックは開けると襲ってくるんだぞ!先制攻撃あるのみだろう!?」

「......ミミック相手に先制攻撃して見向きもされない人を僕は始めて見たけどね」


落ちた刀身を拾い騎士の青年に手渡していた。

受け取った青年は気恥ずかしそうにして頭を掻いていた。


「ばっ、ちげーよ!この一撃できっとスタンしてんだよ!」


俺が気絶?

してないが?

まぁ、自信満々に『俺に任せな!』って言った結果がこれだから恥ずかしいのだろう。


さて、何を隠そう剣を叩きつけられたのはこのオレなわけなんだが.......どうやら剣よりオレ(箱)の方が固かったようだ。傷一つないぞ?

昔なら考えられない防御力だと思う。

最近は停滞気味だが、VIT値が既に万の桁なんだが......上限はないのだろうか.....


「ふむ、反応が全く無し、魔力波紋も感じられないな」

「うそ、だろ?こんだけミミックしてるのに」


いまだに動かない俺に不審に思ったのかオレを慎重な手付きで触り始める眼鏡の青年。

後ろで覗き込んでいた青年は眉を八の字にしている、不満そうだ。


彼らが感知できないのはオレのスキルのせいだろう。

やはり、【居留守】スキル最強過ぎる。

眼鏡の青年は本職の魔導師のようだし、その魔力感知も抜けれるとはな。


「まぁ、怪しいのは確かだけど、気にしたらろくなことにならないな」


オレから手を引き、調べるのを諦める眼鏡の青年。


「な、ふざけんなよ!!」


眼鏡の青年の肩を掴み叫ぶ騎士。


「オレの剣の仇を取ってくれよ!」

「だから、知らんがな」


眼鏡の青年は、鬱陶しそうに肩に掛かる手を払い「自業自得だよ?」と言った。


「しかも、その剣この街で上位相互の剣売ってたよね?」

「くっ、オレが買ったこの剣の10分の1の値段でな!」


どうやら、この青年が折ってしまった剣はこの街で販売しているらしい......いや、まてよ、あの独特の形状に思い出せなくて適当に誤魔化した紋章......


「オレの作品じゃないか!気づかんかった......」


折れた刀身を繋ぎ合わそうと、無駄な努力をしている青年の手元を見てやっと気付くことが出来た。

確かにオレのだ。

えっとあれって、振ると赤い残光が発生するだけの普通の剣だった気がするぞ。【頑丈】スキルだけはつけてあるが......


「はぁ、諦めて新しいの買いなよ?」

「......金がない」


がっくりと肩を落とす騎士の青年。

眼鏡の青年はでかいため息を吐いた。


「その剣買うのにルミナスにお金たて替えて貰っておいて、使用一日目でこれはやばいね?」

「ああ、まじでな?」

「総額いくらだっけ?」

「......2百万ラル」

「.....ばかでしょ?」


ルミナスなる人物はこの二人の仲間なのか?

この場にいないが相当な金持ちとみた。

それにしても、そんな『がらくた』が2百万ラルだって!?

ラルっていうのはお金の単位だけど、1000ラルでクラレント城下町で一晩泊まれるぞ?

相当高くついたなそれ。


「あぁっ、くっそ!!なんで本場じゃ20万ラルで売ってんだよ、それも【サーペント・テイルズ7(セブン)】とか上位相互のやつを......」


頭をかき悔しがる騎士の青年。


「やっぱり、こっちの世界でも大陸を越えると物資の値段も変わってくるんだね」

「理不尽だろ!魔法で運べんじゃねーか!!」

「送料とか色々掛かるんでしょ?」

「掛かっても全国一律にしてくれよぅ.....」


適当な相づちを打つ眼鏡の青年と土下座手前のポージングで悔しがる騎士の青年。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後二人は、気になるアイテムだけを2、3個だけ持って部屋を出ていった。

騎士の青年だけは代わりの剣を探していたようだが残念ながら、今日置いてあるのはポーション系だけだ。オレを開ければ手に入れられたが、挑戦はしなかった。

それはそうか、145層を二人でクリアする実力者だし、危険な冒険は犯さないということだろう。

暴走しがちな騎士を眼鏡の魔導師が手綱を握っている感じか?

しかし......


「宝物庫入った瞬間に、『『ミミックじゃん』』とバレるとはな」


焦った焦った。

バレたことは間違いないが、なぜバレたんだ?今まで一回もなかったぞ。


二人の名前とギルドカードを見たが【冒険者】【Aランク】だけだったし。

そのレベルの連中にはバレなかったのになぁ......

会話を聞くにもしかしたら『同郷』の連中かもしれないが、それならバレるだろうけど......


「まっ、転生者なんてそんなにいないだろうから、ただ勘が良いだけだろう」


そう結論付けたい。

それに転生ってよりは見た感じ転移って方だよな......

俺みたいに生まれ変わるならまだしも、世界の枠を超えるなんてそれこそラノベの【勇者召喚】みたいだ。

実際起こるとしても、もっと世界が魔王のせいで崩壊するとかそういうときに呼ばれるもんだろ。

外に出ないが最近の世界情勢は【サポート・アシスタント】スキルで情報入ってくるし、世界が危ないなんてなかったもんな。

つまり、ただの冒険者だろ?

宝箱に力業をかける勇者なんて俺はしらない。



それにしても、5年くらい経ったが変わったことは別大陸の冒険者が増えたことと、オレの罠が簡単に突破されるようになったこと以外特にないな。

誰た!オレの考えた罠の攻略本なんて作った奴は!!

最近は本片手に開けられることがざらにある。

なんたる屈辱!

悔しすぎて、口から聖を吐き出してやりたかった。


『聖さん!やってしまいなさい』


的な。


そうそう、【ブラック・パラディン】の黒木聖(くろき ひじり)との共同生活も慣れたもんだ。

あいつ、人のこと主人とか言いつつ、家扱いしかしてない気がするんだが......

最初の頃は、あんな性格だったが、最近はマトモになってきた『少しだけ』な


「上司に無理言って、城下町の騎士学校に通わせた甲斐があったってもんだ」


ここ3年ほど通っていたが、そのときも結構振り回されたんだけど、もう過去の話だ。

それにしても本当にバレないもんだ。

3年間通いきって、正式な騎士の証まで貰っちゃうんだから、びっくりだ。

貰ってきたモノを見た、オレと上司の魔精のダルフは声が出せなかったくらいだよ。


「しかし、5年経っても聖の見た目に変化はない、そういうもんなのか?」


そう呟く。

しばらくして、ツルツルの綺麗な大理石の上に描かれた魔方陣が光だした。

ぽわぽわと緑色の玉のような魔素が溢れてきた。

一際輝いた瞬間ポフンという音と煙が起こる。

そこには、5年前と何一つ変わらない見た目の銀髪に蒼い目の小柄な少女がいた。


「おい、ついに55層だぞ!!」

「へーそれはすごいな.......」


嬉しそうにはしゃぐ聖にいつもと同じくやり取りをしていた。

平和が一番だが、オレもなんとか新しい罠考えないとな......











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