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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第一章『迷宮の復讐劇』
2/75

第二話=level:0→11

読んでくれてありがとうございます

俺は今夢を見ている。

俺が輪廻転生のために別世界へと飛ばされた直後の天界の様子が広がっていた。

天界とは、死後の世界だ。

そこで、天国か地獄かいくわけだが、俺は別の選択肢があったようだ。

転生という選択。

転生される異世界は魔法や剣がどうとかいう、テンプレの世界のようだな。

まぁ、死んだから、次を選ぶのは普通だと思うが、イチイチ悲しんで何になる?

悲しむことで、何が救われるのか?心か?

バカらしい。そんな悲観的な状態で次の生を始めるなんて俺は御免だ。

例えるなら、強くなったわけでもないのに、一度魔王に殺された記憶を持った主人公が、「はいはい、この後魔王に殺されるんでしょ?」とひねくれてしまうように、考えすぎる必要なんか皆無じゃないのか?そんなこと考えるくらいなら、なにもかもリセットさんにでもリセットしてもらえばいい。

つまり、死んだら終わり!次に生きる。

これ心理だろ。

そして、俺が見ている夢はどうやら、世界の管理者とやらに会い、転生先に飛ばさる際、星になった時のことのようだが、俺の姿がないことはもしかして、飛ばされた後の光景なのか?

つまり、見たこともない光景。


『しょせん、俺の妄想かもしれないか.....』


あ、だったらこの後何が起きるかわかるぞ。

天界で星になった俺を見上げて、天界に住まう神や天使や魂たちが言うのだろう。


ーいってらっしゃいー

的な言葉をさ。


俺は空中に浮遊して天界の神やそこに住まうもの、転生を待つ老若男女の間をすり抜けるように飛び周った。みんなが見つめたり手を向けたりするのは、昼も夜もない天界の空に引かれる一条の光......そう、主神にホームランされた俺だ。許すまじ.....セーファ。


『流れ星!』

『わーきれいね』


俺の体をすり抜けて行き、空を見てはしゃいでいる小さな女の子と、それをいとおしそうにみる母親。


『死んでも見られるとはありがたや』

『来世はいいことありそうだぜ』


転生を待つ受付のベンチでは天寿を全うしたのだろう、朗らかに笑う老婆と老婆と会話をしていたツナギを着る作業員の30くらいの男性。


その場を離れ、フワフワと移動していくがいまだに中空に光のラインが残っている。

天界の端まで来たようだ......少年を見つけたので近づいてみる。

一人の中学生くらいの少年が光のラインに向けていた視線を不意に戻し、後ろまで来た俺の側を抜けていく。その際、口許がピクピク動いていた。なんだろうか?


『きたねぇ花火だ』


.......去っていく少年を見つめるが......今のは、いや気のせいだろう。空耳だ。


ふと、神様達はどう思っているのだろう、探してみると、受付にいた天使が空を指差し、その場にいる神達に話しかけているようだ。


『神さま!誰かが星になりましたよ!!』

『かわいそうに、きっとセーファにやられたのね......忘れましょう。』

『ありゃ、なんじゃ、地獄に行かんのか?』


神....ひでぇぇぇよ!


俺の夢なのに!夢じゃなくリアルで合ってそうな気がしてくる。

夢だよね?夢じゃなかった?


ぐをおおおお。目覚めろぉおおお俺ええええ。


パキンと何かがひび割れる音。


「はっ、よかった夢だ」


崩壊していく空間で冷静に考える。

うん、夢の中でこれは夢だって思えるのは明晰夢だっけか。


そうして、意識が覚醒した。

まぁ目が覚めたようだし、頭も回ってきたぞ。

そしてここは、剣と魔法の異世界ユーレリーゼ!

主神.....つまり世界の管理者がユーレとリーゼで二人いる大きな世界である。

神ランキングで、4と5だっけ?

大体、神何人いるんだよ!49人か、アイドルグループか!!

もう忘れたわ、くっそ記憶が混濁してんのは俺の世界の主神のせいだな.....

そう、主神の......セーファ!セーファ・セキュリアだ!

けして忘れていたわけじゃないぞ。

あとウチの神さん9位で、神崩しに燃えている。

確か、8界のトップ集団に入るためだとか.....知らんけど、俺に関係無いし、そういう神の事情を知ってどうなるって話だよ。

気にしたら敗けだ。

でも、転生させて自由に過ごすだけって言うんだから、そこだけ知れたんで問題なく了承した。


「んで、協力するために転生してきた俺というわけか......」


ほぼ思い出したところで、周りを観察する。

まず身体......動かん。

まぁいいや。

次、明るさ......光る石のお陰で真っ暗ってわけじゃないな。

問題なし。

広さ......ん?正方形かな、30×30mだろう。

おお、広いな.....


しかし、


「なにも置いていない、殺風景な部屋なわけだ」


どうするか、いや、いいだろ?めんどくさい。

俺に不自由がなければいいんだ。


さて、ここで俺の身体なわけだが、別に驚かんぞ?

だって知ってたって言うか自分で選んだからな。


「あの3択ならこれしなかいだろ」


俺の邪心満載な条件を満たしているのは3つしかなかったんだ。


1、迷宮最奥の人との交流が少ない偽宝箱(トレジャー・ミミック)として転生し、その特性を活かして迷宮での引きこもりライフをするということ。時折、アイテムやら武装なんかを作って部屋に転がしておくだけでいいらしい。まさに、【ここでじっとしている仕事】だ。

2、中央神大陸に存在する【天空の塔】の門番。花嫁でもいるんか!?と食いついたが、俺高いところ苦手なんだよ。見上げるのも側にいるものヤダネ。けして、俺がチビだったから、でかいものが嫌いなんて言う子供じみた答えじゃないからな。まぁ、同級生の男子よりは小さかったが、女子数名には勝ってたしな......忘れよう。

3、大貴族の娘に転生して、外見も絶世の美女ゆえに、男共や家族にちやほやされながら箱入り娘で、ノーブル・ライフを満喫する。ああ、これはないな。いつか、誘拐やらされて奴隷生活しそうで怖いわ。それに男だしな俺!確かに、美人の母が欲しいとは言ったが、俺が母になるつもりはこれっポチもねーよ。


して1番だ。つまりだな......


そう、俺の身体はこの......あれボロくね?

俺の、いや俺ボロくね?

ゲームとかにある宝箱だけど、

金具は錆びてるし、ギシギシいうし。

極めつけは蓋がちゃんとしまんないからね。

もう、あれだよ?鍵の代わりに天然の錆びで蓋開かなくしている感じだよ!


いやいや、落ち着け、とりあえず錆止めスプレー欲しいけど、きっとレベルが上がればクオリティーも上がるはずだ。


こういうときはお約束があるだろう?

引きこもり生活を続ける俺には、妄想する時間は常にあったからな。

俺の部屋に妹と同年代の美少女が降ってきて、「アンタ、私を助けなさい!でないと一緒に殺されるわよ?」的な展開から、果ては、妹が「実は私ね?魔法使いなの」という展開まで『シミュレート』した俺に不足はない。

つまり年下.....

おっと俺の趣味をバラすところだった。

危ないぜ。


「いくぜ!」


手を高々と上げる......そんなイメージ。

俺手が無いからな。


「オープン!ステータス!!」


......ん?ウンともスンとも言わんぞ?

あれ?おかしい......異世界行ったら絶対ある筈だ。

なぜだ?くそ。

MPゲージはあるくせに!


「あ!?わかった、わかったぞ!」


そうだな、そうだよな。恥ずかしがっていたら出来るものも出来ないってもんだろ。

ああ、ヤってやるよ!俺は羞恥心を捨てるぜ!

今度こそ......


「オープン......『ザ!!』ステータスゥウウ!」


ああ、決まったぜ。

この手応え間違いないな。

まったく異世界は開放的で最高だぜ!

誰にも咎められなしな!

厨二?いやこれ常識だぜ。

とか言えるんだろうな......


..........

......

...



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


「えっと、何々、自らのステータスを見るには専用のアプリをインストールしないと見れなくて、そのアプリは別途.......無いんだけど」


あれから、1時間動けない身体をギシギシ言わせて悶えた後、叫びまくった成果か、アイテムボックスは開くことが出来た。

今は、その中に入っている【読んでね?】っていうコメント付きの本を、視界に映して読んでいるところだ。

手がなく足もない俺は、思考を使った操作方法が必要だそうで、それは長年の妄想の賜物か数分で会得し、今では、頭の中で別々に文章やプログラムをすることも可能だ。


「インストールには魔力を消費するので注意が.....はいはいわかった。次、なになに......専用のカードがあれば自らのスキルとかがわかる......と、カード?」


アイテムボックスを開き、一番上にある【無垢】と書かれたスマホみたいなアイコンを選ぶ。


「......ぐえ」


これか?『吐き出された』真っ黒のスマホに視線を落とす。


「あ、バカじゃん俺、手がないや......ははっ」


スマホを『ペロリんちょ』して、アイテム欄の下にNEWと出たスマホをどうやって使おうか悩む俺。

いや、待てよ、思考制御で操作が出来るなら、視界の端に映るMPゲージのように取り出さなくても見れるかもしれない。


試行錯誤の末、5分後にちゃんと頭の中でカードをイメージすることで閲覧が可能になった。

これにより、頭の中で声が聞こえた。


ーツールシステムと本体を同期させますー

ー完了ー

ー今後は視界の端に表示させていただきますー

ー意識することで最適サイズに変更可能ですー


「うおわ、びっくりした。俺の声かよ」

なんてイケメンな俺の声......だが、感情が伴う俺のが一番だけどな、はっはっはー。


虚しくなったんで、プロフィールを呼び出してみた。

読めるように日本語のようだった、よかった。


【魔】

MP:3980/3980

種族:偽宝箱(トレジャー・ミミック)

タイプ:物質系

魔法:【内包世界(ルー・ルーム)】......莫大な量のアイテムボックス。アイコン毎に区切られしっかりと分けられ、混ざり合うこともない。ひとつの枠に99個まで入れられる。取り出さずに、アイテム同士を調合したり出来る。自由度の高さは天井知らず。神【セーファ・セキュリア】の恩恵を受けている為、略奪系スキルにより盗まれることはまず無い。

発動スキル:『【逆境(特)】【サポート・アシスタント】【異常状態無効】』

保有スキル:【時間は有限にして無限】【自動警備EX】【自宅警備EX】【宗教撃退EX】【押し売り撃退EX】【居留守】【対恐怖】【対精神圧力(プレッシャー)】【不屈の心】【宝物保管】【宝石精製】【宝剣作成】【加工(食)】【加工(宝)】【C言語】【D言語】【解読】【多国語(12ヵ国)】【達筆】【転写】【文字(コード)化】【コード解析】【トライ&エラー】【デバック作業】【検証】【総合デザイン】【電流操作】【家事】【鍛冶】......その他【18スキル】


多!!

確かに、出来るだけ支援するって言ってたけど、やりすぎですよ。せーふぁさん。

何が俺の経験をスキルにってあんたって人は!あんたって人はぁぁ!!

あなたは神ですか?あ、神でしたね。

あと【魔】ってのはなんだ?


【魔(下)】......魔獣及び魔精に必ずつく魔を示す目印。その他に(中)(上)(特)がある


へぇ、魔精って闇落ちした精霊だっけな.....俺はそれのしたっぱポイよな。

まぁ、それは置いておいて.....

さて、うん、身に覚えがあるのは8割方あるな。

なんか変わっちゃってるが【電流操作】って電気工事検定を取ったヤツだろう。

しかも、なに、電流の道をペンで書くように設定できるって.....すご!つまり、俺が書いた線の上を電気が流れるわけか......あ、注意書に記号と期待値が的確じゃないとダメとか書いてある.....確かにそれなりだな.....


「よおおし!今から、スキルを使いこなして見せるぜ!」


まず一つ。

【宝石精製】だ!その名の通りのことだろうが、発動スキルにセットして.....んで。あそうだ!ここは早速【文字化】で作成した宝石のコードを取得しよう。

これにより、同じ条件の物が【コード解析】によって呼び出せる。

ついでに【サポート・アシスタント】で作業手順を教え貰おう。


発動スキル:【宝石精製】【文字化】【サポート・アシスタント】


ー始めに、空気中の魔素を沢山取り込みますー


深呼吸の吸ったままバージョン!!


ー???宝物庫の魔素コード取得ー


ー体内に取り込んだ魔素を【宝石精製】スキルを掛けて【内包世界】の1フレームに納めて置きますー


ふんふん、やったぞ。お、アイテムボックスの1枠が『精製中、残り12万3千時間』になって......は?


「長すぎじゃね?でも、宝石だからそんなもんか.....」


どうやら膨大な時間が掛かるらしく、今日は疲れたし眠って明日から頑張ろうと思う。


「明日から本気だす」


そう締め括り、意識を落とした。


今思えばなんて無防備な状態なんだろうな.....あのときの俺に言ってやりたいぜ.....

よく考えばわかることだった。

俺は宝物で、当然.....それを手に入れようとしている冒険者がいるわけだ。

確かに、あんま人は来ないと言っていたが、平和ボケしすぎだろ。


意識を失った俺は、ダンジョンの地面が揺れたことに気づかず眠り続ける。

しばらくして複数の冒険者がヘロヘロの状態で現れた。


「んぁ?」


ボーとして寝ぼけていた俺はただ見つめるだけだ。

彼らは、何もない宝物庫に入り唖然としていたが、即座に気を引き締めて俺を睨み付けていた。

迷宮の階層主を倒したら入れる宝物庫は常に一定の場所に繋がっているわけではなく、ランダムだ。

どこかでAの宝物庫を利用していた場合。Aに行きたくてもA以外の宝物庫へと繋がってしまうのだ。

さらには、宝物庫も、種類が豊富でどれが出るかは分からないのだ。

1000分の1の確率でこの迷宮を創った創造主である魔精の部屋に繋がる不幸な冒険者も存在する。

当然死体すら見つからない。

また宝物庫内で殺されると、魔精の気まぐれなのか、全裸でダンジョン入り口に放り出されるのだ。

当然装備は宝物庫に加わってしまうが......


そして、俺の初めての相手は.......男3女1の冒険者パーティーだった。結構ボロボロな彼らは、すごいお宝を期待したんだろうが......


あからさまにがっくりとしたのだろう。

肩を落としたり、頭に手を翳したりしている。


「まじかよ.....スカかよ」

「ついてないっすね、誰かが根こそぎ持っていった後っすよこれ......」


やれやれとポーズをする魔導師の男と軽装な男。


「どうするの?」

「まぁ、あれでも開けてみるか.....」


ゲームで言う聖職者だろうか?それに準じる服を着た女性は隣にいる男性に問い掛ける。

投げやりに返答するのは、バリトンの渋い声を出す厳つい兜の男だ。


「はぁ~、明らかに罠じゃない.....」

「それか空だろ」


呆れた声を出す魔導師の男と聖職者の女性。


「ま、やるだけやるっすけど.....」


そそっくさと俺の前まで来たのは、もしかしなくても、罠解除が出来る盗賊職だった軽装の男。

周りをよく確認した後、俺の口をぐぱぁーと開こうとするとき、ぎぎぎぎという錆の音で気がついた。


寝ぼけていた俺はボーとしていたが、盗賊の男の行動は早かった。


「あ、純度高い魔石見つけたっす」


後ろを振り向きメンバーに報告する軽装の男。


「マジ!?一応収支プラス判定!?」

「いえーい」


ハイタッチをする魔導師と聖職者の男女。


軽装の男はヒョイッと俺の中から真っ赤に光る石を取っていた。

もっらい。と取られたのは、俺がついさっき作り始めた宝石の原石だ。

なるほど、魔石でやめておけば早い段階で行程が終わるのか......


「いや、そうじゃなくて!何取ってんだよ!まだ出来てねーよ!!」


だが俺の声は聞こえず、全員でハイタッチをかます彼らの去っていく後ろ姿を、俺は眺めることしか出来なかった。


「努力が一瞬で踏みにじられるとイラッとするな.....いや、どちらかというと、最後まで取っておいた大好物を食べられてしまった感覚かもしれないな....」


この身体じゃ、涙は出ないが胸が痛いぜ。


あとで気づいたんだが、俺の身体を開けると最後に操作していた物が呼び出されるらしい。

それによって、奪われてしまったわけだ。

やるせないな.....


こうして異世界で洗礼を受けた俺は、持っていかれるのは良いが、達成感なく作業ゲーのように持っていかせないように罠を張り巡らすことにした。

けして、復讐の為ではない。


「あいつら顔覚えたからな!」


復讐の為ではない。



本人は知らない能力値。

名前:水無月

level:0→11 new!!

コア:10000→10110 new!!

MP:3980→5230 new!!

カッコの中は箱を抜いた本人のステータス

STR:15(8)

VIT:60(13)→78(24)new!!

INT:23(54)

WIL:68(4)

DEX:19(50)



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