第十六話=level:92
大変遅くなり申し訳ありません!!
また、本来書く予定だった。対決シーンが先伸ばしに.....仕方ないんです。
子供達のことをすっかり忘れていた作者が悪いのです!こんちきしょー。
文章の足りないところを補完させて頂きました。
寝落ち寸前で書くんじゃなかったヨ。
次回は金曜日です。(2014/12/18)改。
上司でさらに迷宮の主であるダルフが、俺の新しい外装『ドラゴンフォーム』の上に腰掛けながら、空中に投影された映像を見つめて、なんとも言えない顔を作っていた。
「うぅ~ん、ここに繋ぎたくないような......繋がないとチビッ子達が付き合わされて危ないような.....」
うんうんと唸っている上司は、どうやらマニュアル操作で、ここの宝物庫にゲートを繋ぐか悩んでいるようだが.....
ガタガタッ!
「あ、ごめんね?今退くから」
俺は体を頑張って揺らし、乗っていた上司に降りるように訴えた。
今気づいたような対応されると、少し胸に来るものがあるが、相手は上司.....大人な対応。そう大人な対応を心がけなくては!
立ち上がった上司を見上げることになる俺の視界には、ドデカイすい......
おほん......さて、気を取り直して、聞きたいことを聞こうではないか!
俺は口を開け、ドラゴンの牙にぶつからないように気をつけながら、いつものプラカードを掲げる。
ダルフには俺の声が聞こえないため、会話方法は筆談だ。
クイッーーー。
【さっきの映像で、ボスが突然真っ二つになったんだけど?】
「あぁ、あれね?」
ダルフは何故か苦笑していた。
「そうね、普通知らなければあの子に気づかないわね.....」
あの子?少年達じゃないのか?
ダルフは喋りながら指を立てた。
「えっとね?私の独立監視映像に映らなかったけど、あそこにもう一人いるのよ?」
「は?」
ダルフに俺の声は聞こえないが、つい聞き返してしまった。
というか....何言ってんだ?そんなことってあるのか?
「映らない敵影.....」
じゃあ、何か.....ステルス装甲なのか?ミラージュコロイドなのか?
映像に映らないとなると、監視なんてする意味無いじゃないか.....
あの場にいる黒木さん達には認識されているのだろうか?
いや......
「まてよ.....なんで上司は、いるって知ってるんだ?しかも少年たちでは無くて、その子が攻撃をしたことまで.....」
これは聞いてみるしかないか....
ダルフの方を向くと、ダルフは手に水色の魔方陣を浮かべ、指を魔方陣の上で弾いていた。
「まぁ、あの子達の目的も黒木さんと一緒ぽいし、繋いでいいかな。」
ダルフは唸った末に繋げることにしたようだ。
【サポート・アシスタント】のログに接続を告げるメッセージの文と音声が流れる。
ー第二層に接続を確認ー
ー階層ボス、死霊系【ゾンビ・ナイト】ー
ーパーティー重傷者4名中0名ー
......アシストログを何度見ても、映像の人数と違う『4』という数字。
不気味すぎる。
怖いのでガチで迫った。
【話的にその一人はお知り合いですか?】
「知り合いも何も、私専属で唯一の使用人よ!ビックリでしょ?」
(ああ、使用人が一人しかいないことにビックリだぜ)
声には出さないが......いや、聞こえないのなら出してもいいのか?
「いい、あの子は喋れないんだけど、頑張って意思表示するところがね?こうね?それに何かとーーー。」
ダルフの話を聞くとコメットと言う彼女は、黒木さんと同じく進化個体らしい。
進化の元は光属性の小精霊の集合体だという。
というか、また語りだしたんだけど.....
ダルフを余所に『小精霊』について【サポート・アシスタント】に聞いておく。
小精霊と言うのは、自然精霊の1万分の1の強さを持っており、世界から自然に生まれる存在だ。
成長すれば、いずれは次世代の自然精霊になれる個体もいるらしいが、今の自然精霊はこの世界が始まったときから存在しているため、次世代なんてあるのか不思議だ。
ということが【サポート・アシスタント】が知っていることだそうだ。
「ーーーここじゃないんだけど、腐れ縁の魔精の元で10体の小精霊から生まれたのよ。厳密には私の眷族じゃないわけ」
少し残念そうに語るダルフ。
「まぁ、私の恩恵は強く与えられないけど、それでも有能なのよ?」
ふーん、恩恵か.....
【で、なんであそこで一緒に?】
「それは.....察して?」
察して......って!?
遠くを見つめるダルフは黄昏ていてしゃべる気は無さそうだ。
無理にこれ以上聞いてもなぁ.....
「おし!」
こういうときは、俺の最大の考察という名の妄想力で補完するのだ!!
こい!高まれ!俺のコスモ!!
来た!つまりこうか!!
コメットさんに黒木さんとパーティーを組んで貰い、美女と美少女のアイドルユニットで売り出そう!
ということか.....
ハッ!
つまり、
「迷宮アイドル?」
俺の声が聞こえない筈なのに、ダルフはため息をはきつつ、うんうんと頷いていた。
もしや、通じたのか?
となれば、やはり!!
「まぁそれで、コメットに黒木さんの教育もして貰おうと.....」
なるほど、人気が出れば迷宮に来る人も多そうだしな。
今のうちに、仲良くなって貰おうというわけか.....
しかし、大事なことを聞いていなかったぜ。
俺としたことが!!
クイッーーー。
【アイドルユニットの名前は何て言うんですか?】
「あれ?可笑しいわね、会話が噛み合ってない気がするのだけど.....」
俺の文字を見た後、目頭を押さえるダルフ。
「あるぇ?」
どうやら、違ったようだ。
そんなことを話していると、正面の扉が開く音が聞こえた。
ぎぎぎぎーーー。
俺は即座に切り替える。
例えるなら、休み時間にダラダラしてたのに鐘の音で、シャキッ!と切り替えるような感じだ!!
「しゃあ!ばっちこい。」
罠は?新作か?既存か?
いや、2層だ難しくなくていいはずだ。
俺が頭をフル回転させていると、いつもならあり得ない声が聞こえた。
「え?あ、うそ?もう!?」
あん?って上司.....
「そう言えば、何故まだ居るし.....」
珍しくも、わたわたしたダルフの姿を箱でありながら唖然と見てしまった。
ダルフは、取り合えず俺の側から離れ、扉から一番遠くなるように、斜め後ろにある『がらくた』の山の後ろに忍び足で逃げていく。
その光景の一部始終を見ていた俺は思った。
(なんて、シュール)
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ダルフが隠れた後、大きな扉から覗き込む小さな頭が2つ見えた。
彼らの顔は不安そうな顔から、パァーッと眩しいくらいの笑顔になっている。
うん、そういうのは見ていても嬉しくなるな、しかもその相手が『俺』だもんな!くぅ~。
「シ、シーシェ!ここって?」
「ああ、当たりだよ!!俺たち当たったんだ!!」
おどおどした少年に抱きついている少年の目には涙があった。
そうか、それほど嬉しかったのか.....なんかあれだな、照れるな。
二人は俺の方に段々と近づいてきて......逸れた。
あれ?
「僕、これでいいや!」
おどおどした少年は近くに山積みになっている俺的に言えば『がらくた』の山から一つの短剣を取り出した。
短剣の鞘は黄金色。少し引っ張って、刀身を確かめているようだ。
刀身の色は『無色透明』だ。
少年の驚く顔が見れた。
「な、なん、すご!!」
少年は言葉にならない感動を覚えているようだ。
しかし、それを俺的に表すとこうなる。
短剣
銘:シャープ・エッジⅨ
スキル:【諸刃】【再生(低)】
その他:刀身は無色透明で、紙、鉄、岩、魔法障壁すら切れる。
となっている。
さて、確かに性能面だけ見れば高級品で、一級冒険者が使う装備かもしれないが.....これには『がらくた』と言われるマイナス性能がある。
この短剣、鋭すぎて物凄く脆くなってしまったのだ。
その前にスキルの説明をするとこうなる。
【諸刃】......切れ味に補正。4回切ると折れる。
しかし、それを補えるスキルも当然つけたさ!
【再生(低)】......鞘に容れておくだけで刀身の補修をする。
という良スキル!
でもよく見て欲しい。
4回で折れる....となっている。
剣が4回で折れるなんて実戦じゃ、まず使えないだろう。
切れ味はいいかもしれないが、【サポート・アシスタント】に聞いたら、鞘から抜いたときに、『空気を切ってる』から一回分にカウントされるらしい。
舐めやがって、実質三回だぞ?
さらに素振り、空振りなんてしてみろ、5秒もしないで全損だよ!!
故に『がらくた』というわけだ。
もう使い道なんて宝剣としての鑑賞用くらいしかないと思うんだけど.....
「まぁ、喜んでいるようだし、いいか.....」
黄金色の鞘に入った短剣を嬉しそうに胸に抱く少年は、ホクホク顔だ。
そういえば、ここにいないが黒木さんとコメットさんという人はどこにいるんだろうか?
部屋に入ってないように見えるんだが......
俺は、周りを見回していると、勝ち気な少年が俺の斜め後ろの『がらくた』の山の後ろを覗き込んでいた。
あれ?あそこって......上司が隠れた場所じゃないのか。
そう思い至った時、少年の大声が上がった。
「あああああ、なにしてんだ!?」
叫んだあと冷静にでもなったのか、質問を繰り出していた。
「だれだ!お前!?ダークエルフ?」
「え、えっとね?」
しゃがんで小さくなっていた上司は、その場で立ち上がり冷汗タラタラだ。
俺の方をチラチラと見ていることから、あれは助けを求めているに違いはないが.....
仕方なく俺は行動を起こそうとしたとき、短剣を手に入れた少年が、ダルフを警戒して剣を向ける少年に呼び掛けた。
「シーシェ!見てこれスゴいんだよ!!」
「なにが?あっ......」
そこは10歳な子供好奇心には勝てなかったようだ。
声を掛けた少年に振り返っていた。
ダルフはその一瞬を逃さず、即座に自らの部屋の扉に音を立てずに飛び込んでいき、姿が見えなくなった。
「どうしたのシーシェ?」
「ぬぬぬ、逃げられた.....」
不思議そうな少年と悔しそうな少年のふたりは、再び物色し始める。
でも、一言言わせてくれ。
「少年よ!俺を何故無視する!!」
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少年達はあれから5分くらい物色したのち、2、3個短剣を持って部屋を出ていった。
騎士剣を持っていこうとしたが、重すぎて持てなかったようだ。
そうして、少年達が出ていった後、ガチャリという扉の音。
「どう、帰った?」
階層を繋いだ後、一回引っ込めばいいのに話すと止まらない上司だった。
【話好きは分かるが、熱中しすぎですよ?】
「うっ、気を付けます」
だいたい、2層でラスボスとエンカウントとかクソゲーすぎだろう。
勝てないよ?絶対無理だよ?
【少年達の帰りとか平気なのか?迷宮って忘れてないか?】
「ああ、平気、帰るまで特別にモンスター出禁にしといたから」
強権発動!?
言いたいことは山ほどあるが......今は。
ドン!!!!
けたたましい音と共に響く大きな声。
声自体は、可愛らしい響き。
「おい、来たぞ!!さぁ、約束通り勝負だ!」
現れたのは銀髪に小柄な少女。
手に持つのは漆黒の剣。
黒いボロ切れのような外套を掛けている。
彼女の目的は重々承知!
ならば、答えるのが男!
「おし、かかってこい、露出狂」
「まて、誰が露出狂だ!!」
訂正を求める黒木聖が、ついに挑戦者としてここに現れたのだ。
『.......(ハラハラ)』
そして、その後ろからこっそり現れる初対面のコメットさん。