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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第二章『迷宮の挑戦者達』
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第3話=【ブラック・パラディン】level:8

その頃の水無月さんその2


最近冒険者が俺の宝物庫の扉を開けるだけでハイタッチしているんだが.....なんなんだ?

今日は朝からまだ呼ばれてないが、また今日も10回は呼び出されそうな予感がしてきたな。

とりあえず、新しいトラップでも作ろうか。

今までも、典型的な罠やお約束的な落とし穴も作ったが、今回は『触手系』トラップでも作ろうかと思う。

とりあえず、ロープの行動を事細かにプログラムしておいて.....一本より沢山のロープを使ってみよう。

そうすると見映えが良くなるかもしれん。


「こう、あれだ、エロイベント期待だ!」


完成した『うねうねロープ絡まりますん』は、俺を開けたときに『ある』罠を解除してないと発動してしまう設定にしてっと。


「おし、あとはロープが延びて捉えた冒険者をむふふとするために遠くの壁に突き刺さるアンカーをーーー」


しばらくして完成した。


「おし、バッチコイOTOME!!」


ー69層と接続を確認ー

ー階層ボス、誘惑系【ドリーミー・デビル】ー

ーパーティー重傷者2名中0名ー


空いた扉から出てきたのは、金髪のきらびやかな鎧を来たイケメン君と......


「いやだわぁ、こういう雰囲気って、スイッチは入っちゃう」


くねくねした動きをするマッチョのお姉系。


「大丈夫さ、ハニー!!」


そして、マッチョな男.......乙女に抱きついている残念なイケメン。


俺は冷静に思った。


「なんだお前、そっち系か」


俺の罠が無駄になった瞬間だった。

間違いなくマッチョを、トラップに掛けても喜ぶのアイツだけで、俺損状態とは。


きっちりマッチョがトラップに掛かったが、これは敗けだよ。精神的に。

レファンシアの呪海迷宮の第一層は、これから冒険を始める者への簡単なレクチャーみたいなもので構成されている。

レクチャーという認識は、レファンシアの呪海迷宮に隣接する、王家と騎士の名残のある街【クラレント】の冒険者ギルドがそう掲げていた。しかしながら、第一層において死者がいないわけではない。

第一層の階層主の扉の門番に、戦いを挑み命を落とすものが多数存在するからだ。


次に多いのが、仲間の策謀で命を落とすタイプだろう。

迷宮の奥まで進んだ冒険者は転移石を使用すると戻される場所が、迷宮入り口ではなく、一階層の階層主の扉の前なのだ。

つまり、上層域から抱えれるだけ抱えて転移してきた冒険者は、この広い高原で成り立つ第一層を踏破して、入り口にたどり着かなければならない。

なぜ、そんな風に転移先を限定したのかは、迷宮の創造主の魔精ダルフ・レファンシアのみぞ知ることである。

今では詳しく考える者も少ない。

荷物を沢山抱えていたり、怪我などしていたら、この迷宮に住むモンスターにとって格好の餌食になりうるが、所詮は第一層、出てくるモンスターは子供でも倒せる草食モンスターばかりだ。高原の草をのんびり食べる1mくらいの小柄な象のような【ビギン・ドンファ】、3匹の群れで高原をピョンピョンと跳び跳ねる兎のような【ビギン・ラヴィ】、そして流動体の体をプルプルさせてのそのそと動くゼリーのようなモンスター【ビギン・ゼライム】の3種類しか存在しないため、滅多なことでは襲われないし、例え襲われても簡単に撃退できるのだ。

故に冒険者にとって気を付けなければならないのは『待ち伏せ』と『裏切り』だけだったりする。

それによる死亡率も高いものだ。


もしかしたら、魔精はそういう人々のやり取りを嘲笑ってるのかもしれない。


それにしても、いくつもの国を滅ぼした魔精が管理する迷宮なのに、第一層では子供の遊び場と化してしまっているようだ。

少し周りを見るだけで遠くでゼライム相手に木の棒をペチペチと叩いている少年少女を良く見掛ける。

しかしそれでも、階層主の部屋の周りには子供でもっても近づこうとしない。親や、この迷宮を行き来する冒険者にそれとなく注意されているのだろう。


しかし、なんと運の悪いことだろう。

今日はレファンシアの迷宮で始めて140層を突破した冒険者達が帰ってきたのだった。

その凱旋パレードのため一層はがらんとしていた。

140層を突破した冒険者達は、迷宮に入る前より二人ほど人数を減らしていたが、彼らの分まで騒ぐつもりなのだろう、街中はお祭りムード満載で、眠らない夜になるだろう。


ガラリとした第一層の階層主の門の前に、年の頃は10歳くらいの二人の少年が現れたのだ。

一応、この扉を任されている門番の【リザード・バイパー】は彼らの前に立ち、決まり文句を口にする。大きさは成人男性より少し大きく、ドラゴンのような顔に、筋肉質のガッチリとした身体を少年達の前に晒していた。


『汝、挑むべき証拠を提示せよ』


突然目の前に空間を歪めて現れた【リザード・バイパー】に威圧されたのか尻餅を着き後ずさる気弱な少年と、目を爛々と輝かせ、服のポケットに入れていたものを取り出す勝ち気な少年。


「や、やめようよぅ.....怒られるよぅ」


ビクビクしながらも、逃げようとしない友人の姿に勇気付けられたのか、足を震わせながら再び友人の元に来て友人の服を引っ張り出す少年。


「ちょ、ナエトうっさい!」


勝ち気な少年は、服を引っ張るナエトと言われた気弱な少年を振りほどく。


「で、でもぉ.....危ないよぉ」


涙目になりつつも、再び服を引っ張ってくるナエトに勝ち気な少年はキッと睨む。


「ナエトはバカにされたまま騎士学校に通うの?」

「そ、れくらい平気だよ?」


無理がある笑顔を作ってそう答えるナエトに、深く悲しそうにする勝ち気な少年。


「ッ!俺がやなの!天使の血が流れてる半端者、ってバカにされたままなんだよ?」

「シーシェ......でも、混血種の僕は.....正式な騎士には成れないよ.....」


シーシェと呼ばれた彼は、半分諦めているナエトの頭を叩く。


「わからず屋!いい結果をだせば、きっと血なんて関係ないんだ!」

「イタッ、でも、死んだら終わりなんだよ?」


頭を叩かれても服を握ったまま、ナエトは言う。


「シーシェ......怒らないでね?僕はーーー」

「な、なに言ってんだ、よ?」


言われたことに、ポカンとしてポケットから出したこの階層主に挑むためのアイテムである『ボス部屋の鍵』が固い床に落ち、高い金属音を響かせる。


鍵を落とし、震える手でナエトの両肩を掴み、狼狽した様子のシーシェにナエトはもう一度声に出して言う。


「シーシェが無茶をするなら僕ーーー」


しかし、突然、いったいいつ現れたのかボロボロの黒い外套に少しウェーブの掛かった銀髪の少女がしゃがみこみ、シーシェが落とした鍵を指していた。


「おい、コメットこれはボス部屋の鍵じゃないのか?」


鍵を虫みたいにつつく少女は後ろを振り返った。

少女の後ろには、たぶんそうだろうがコメット言われた金髪の女性が慌てたように近づき、銀髪の少女を引きずって行こうとしていた。


『.....!!』

「ん?ちょっと待てまだ拾ってなっあああ!!」


ナエトとシーシェは突然のことにポカンとしてしまい、なにがなんだか分からないようだった。

二人に頭を下げ、コメットは銀髪の少女の襟首を掴み強制的に引きずっていく。

コメットは少女の声を半ば無視していた。

ナエトとシーシェはなぜか分からないが、少女達を視線で追っていた。

10mくらい離れた所で引き摺るのを止めたコメットは少女の頭をポカポカと叩きまくる。

うっとうしそうにする銀髪の少女は、何か閃いたのか、コメットの猛攻をヒョイッとかわしてナエトとシーシェの元に来た。ナエトとシーシェは不思議そうにするだけで、展開についていけないでいた。


二人の前まで来た銀髪の少女は鍵を差しニッコリと言う。


「これはボス部屋の鍵であってるのか?」


疑問符を浮かべながら二人は首を縦に振る。

黒木聖は、ハッとした顔を作った後、ビシッと立った。

その立ち様は騎士に匹敵するほど美しいものだ。


「私は【ブラック・パラディン】の黒木聖だ」


自己紹介.....ということを遅かれながらも理解した二人はそれぞれに挨拶を返す。


「ぼ、ぼくは、ナエトっていいます」


ペコリと頭を下げるナエト。


「俺は、シシェル・サード・ラウンド」


外套から見える少女の姿に顔を赤くしてうつむいているシシェル。

黒木聖はうんうんと頷いた後二人の肩を叩く。


「ナエトにシシェルか......いい名前だ!」


よしっと声に出して、今まで微動だにしなかった門番【リザード・バイパー】に声をかけた。


「おい、トカゲ、これで私に突き付けられた誓約はクリアだな!『パーティー』を組んだぞ!!」

『......』


黒木聖はさらに鍵を指差した。


「ここにボス部屋鍵もあると来たら当然分かるよな!!」


嬉しそうに話す黒木聖の言っていることを数秒掛けて理解した二人は、自分達はいつの間にか、この少女とパーティーを組んでいることとなり、さらにはシーシェが見つけてきた鍵を使おうとしていた。


第一層の門番【リザード・バイパー】は数秒考えた後通すことに決めたようだ。


『良かろう、汝達の挑戦を認めよう』


「さぁ、行くぞ!!」

「あわわわわ」


そして仕切って剣を掲げる黒木聖と、真っ青な顔のナエト。


「ある意味チャンス?」


顎に手を当てて考えるシシェル。


『......』


魂が抜けたようにポカーンとしたままのコメット。


異色の『パーティー』が完成した瞬間だった。







大変遅くなりまして申し訳ございません!

忘年会のシーズンで大忙しでして、あ、みんなも一緒ですね。

とりあえず、今日はもう一本行けるかも?

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