第十二話=level:91
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ファイトー俺。頑張れー俺
「ふん、ふふふん、ふうん......止まらない俺の~俺の~」
俺は、【総合デザイン】スキルのお絵描きツールで、『宝箱(俺)』の着せ替えパーツのイラストを作成中だ。俺のスキルで物を産み出すときは基本的に、イメージを絵にしてから、持ちうるスキルと3D製図と加工レイヤーでの細部の調整、そして最後に体内炉で生成という流れだ。
ま、難しいことは置いといて、簡単に言うなら、『イメージをチンする』そんな感じだ。
それに最終工程まで進み、体外に一回排出されれば、スキル付与とか、性能面は、ご存じの通りに【文字化】と【コード解析】でIDとか大事な情報を取得するのだ。その後は、魔素を消費しての【検証】などを用いることで、最高品質・最高性能を求めてのローラー作戦というわけだな。
昔、俺と有志の人でネトゲのNPC商店の売買利率を調べまくった事を思い出すぜ。
NPC商店て大抵一律の癖に、隠しエリアなんかで売ると元以上の値段が貰えたりするんだよな.....
「でもさ、そういう改造とか為替とかって、ゲームだから許されるじゃん?大体さ、色々なものを物理常識無視してポンと出すなんて.....」
正直、世界の.....いや、神の領域に踏み込んでいるのかもしれない.....が、気にしたら敗けだな。
前世の世界じゃ、市販のゲームを専用ツールで改造するものが売っていたから、そういう関係でこっちでコード弄るのに違和感はないけど、あれだな、普通気付くよな......
実際俺.....ヤっちまった感あるんだけど.....
あれだよ......まさにドヤ顔でーーー。
「少年よ、これがチートだ!」
そう言える。
でも俺は、絶望なんかしてられないのです.....
最近急増した冒険者のせいで、てんてこ舞な状態だからだ。
「今日中にあと3回呼び出されたら、雇用契約の見直しを請求してやる」
今日になってから、既に8回呼ばれている。
独り言を吐きながらも、頭は動かす。
そう、手が無いからです。
だがしかし、わかる人がいるかもしれんが、頭のイメージを実際 『モノ』にするとき、手を使う作業はもどかしさのが大きいと思うんだ。
お絵描きしてても、レイヤーを行ったり来たりのクリックとか、キャラの輪郭書くときのイメージとの違和感とかさ。
さて、そんな誰でも感じるストレスから解放されている俺は、現在、イメージをイメージのままの精度で作業することが可能になったのだよ。
手が無いと不自由なことが多いって?
ああ、あっちの世界ならな、今の俺にとってはそれ以上のもんを手に入れてしまったから、どうでもいいぜ!!
どのくらいスゴいかと説明すると、
『強いられているんだ!!』
のシーンの集中線を3秒で引ききることが可能なほど......すぅんごい。
え、なんのことか分からないって、それは住む世界が違うからだろう。
平行世界ってヤツかもしれん。
「おし、外見完成!眼からビーム撃てる予感!」
え?遊びじゃないよ!大真面目さ。
これは今までの宝箱の外装の中でも最高傑作かもしれん。
「おし、レイヤーさんカモン!」
俺の脳内視界に3画面写し出され、複雑に描き続けていく。
その速度、手を使うときの.....何倍だろう?わかんねえや。
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「でね、言うわけだよ、おいおい、親友、お前合コンの人数割男子4の女子2じゃねーかってね」
人は一人になると寂しくて雄弁になる。
そういう言葉をテレビで見た気がするが、あえて言おう。
そうではないと!
雄弁になるのは自己との対話のためだ!
自分を見つめ直す機会だからだ!!
「ははっ、バカだなお前は『アッチ側だろキリッ!』って」
ぐをおおおおおおお、親友!!殴りてぇえええーーーーー。
はっ、あまり過去を振り返ってはダメだ。
特にこいつとの事を。
あれから、2時間経ったが呼び出しは無い。
ということで今は、体内炉での精製が終わるまで待っているのだ。
それにしても、まさか俺が過去を振り返ってしまうとはな......
「過去は振り返らないが、スレとROMは振り返ることで定評の俺が......くっ」
しかし、ここ数日忙しかったから、おさらいでもしておこう。
まずは、俺の.....名前は水無月だよ?バカじゃないよ。
中学2年生頃になって、よく眠気に襲われた俺は、実は重病に感染していたらしく。
数年で生涯を終えたわけだが、俺の世界の主神であるセーファ・セキュリアによって、下らない理.....
崇高なる目的のために神族順位の上位の世界に転生することになった。
そんなランキングなんか興味ないが、引きこもるだけの契約なら乗ったも同然だ。
転生先は、レファンシアの呪海迷宮。
そして、直属の上司兼迷宮主の魔精ダルフの元、怠惰な宝箱ライフを送ろうと『した』。
んで、なんやかんやあって......いつの間にか迷宮への冒険をするものが急増し.....今に到るというわけだ。なぜ増えたし!
そういえば......
「【ブラック・パラディン】の黒木さんは、何階層まで進んだんだろう.....」
聖は俺の後輩にあたるが......ダルフと中が悪いように見える。
見えるってのは、そこまで観察したわけでもないし、初回の邂逅ではなんとも言えないと思うからだ。
「でも、なんで俺の言うことはある程度素直に聞くのだろう......」
まさか?装備目当てか!?
そして困ったことに、この方、専用装備以外着ないと駄々をこね、俺に装備を請求するが、当然断った。
俺と迷宮主が出した提案は、欲しければ掴み取れ!!
という簡単なものだ。
つまり、冒険者と同じく迷宮の階層主を攻略し、俺の部屋まで来て罠を外して手に入れろ。
いかにもな条件だろう。
そして、当然冒険者が入り乱れる中にポツンと、ダンジョンモンスターがいるわけだから、バレたら殺されること間違いない。【魔】である連中は、俺も含め三回までは記憶を持ったままで、死に戻りが出来るが、4回目になると、これまでの記憶を消されて再生されることになる。という特性があるが、バレないに越したことはない。
そこで、進化前の黒木さんが持っていた【破損した首飾り】と【破損した護符】を俺が作り直した。
それを部屋を出る前に餞別代わり渡してある。
それにしても、キラキラとした嬉しそうな顔をしやがって.....お前はあれか?サンタを信じてる子供のような純真さでもあるのか?
そんな感じの表情だった。
【黒聖騎士の首飾り】......記憶のバックアップと異常耐性(中)の効果付き。
チェーンだけしかなかったため、陰陽対極図の紋章を付けておいた。
【黒の護符】......所持者の魔力と生命力を常時吸収する、変わりに2回の身代わり効果がある。
使用する場合は護符が破損するが、8時間で護符の半分は再生する。【鑑定系】【解析系】などの見抜いてくるスキルに対して妨害する効果がある。
なんで首飾りにそんな紋章がついているかと言うと、【ブラック・パラディン】と言う名は黒と白を表している気がしたから、せめてそれっぽそうなものを選ぼうとしたらこうなったのだ。
きっと、俺のイメージのレパートリーが貧相だったんだろう。
だが、ものすごく喜んでくれたみたいで本当に良かったと思う。
家族じゃない異性に初めてのプレゼントだったが、それは黙っておこう恥ずかしいし。
護符に書かれた文字は、俺の世界での漢字と、ドイツ語を複雑に組み合わせた神秘的な文字郡が乱列している。
「あ、ありがと」
「なんのなんの」
俺からのアイテムを貰った聖はテレッとしていた、そうかこれが.......
「ツァァンデレン!!」
「???.......なに言ってるんだ?」
気にするな.....持病のトシシターが発症しただけだ.....
だから、可哀想な目を向けるのを辞めろ!
「ほら、黒木さん、私からもあるわよ」
「わかった貰ってやろう」
「なんで、私の時だけそんなに偉そうなのかしらね!?なんでかしらね!?」
「......気のせいだ、デカ乳」
「おし、分かったわ、あんたが一回死ぬ毎に私の部屋をリスタート地点に設定するからね!」
「なに!?貴様、リスタートはここで良いだろうが!!」
【嫌なんですけど....俺がそれ嫌なんですけど】
言い争いをする二人に、俺が、両方に分かるようプラカードを口から出す。
「ほら、見なさい!そいつもそう言ってるわ!」
「ふん!気のせいだ。」
バキッ!
「ああ、コイツ俺の力作の『レジスタンス運動君バージョン2』が!?」
殴られ、中程からへし折れた力作を手放す俺。
殴った本人は今のを見なかったことにしたようだ。
「おい、水無月が、『是非ここにしてください』って」
「言ってないでしょ!?」
「言ってないだろ!」
コイツはまさかそんなんで本当に騙せるとでも思ったのか甚だ疑問だ。
結局は引きずられなから連れていかれた。
連れていかれる前に、ダルフが渡したのはどうやらカードのようだ。
【魔】に生まれた連中はみんなが、俺みたいにカードを持って産まれてくるわけではないのだと言う。
まぁ、それもそうか.....知能がある程度ないとあっても意味無いもんな。
そういうわけで、このダンジョンで進化したヤツは、迷宮主のダルフ・レファンシア特製のカードを渡されるのだとか.....おい、俺のピアノブラックのヤツとそれ交換してくれと言いたいが.....そう考えるとコレって神特製なのか。
聖は渋々使い方とかを教えて貰い......服にはさんだ。
「ちょっと、こら痴女!私があげたのをどこに入れてるか!!」
「両手は塞がっているんだ、しょうがないと思うが?」
「なっ、だから.....服を着ればポケットくらいあるのに.....」
うん上司.....苦労してそうだ。
ここは助け船を出しておこう。
いい加減にお帰りいただきたいし。
と、いうわけで、言い争いの中で作製した俺の真打ちプラカードその名も『反対運動markⅡ』。
【.....と言うのはどうだろうか?】
俺が提示した文字を読んだ二人は其々の反応した。
「なるほどそれはいけるわね....」
と呟くダルフ。
「ハッ、この進化した私が、そんなことになるとは思わないが、いいだろう。格の違いを見せてやる」
そういう【ブラック・パラディン】。
して、決定した。
【ブラック・パラディン(黒木 聖)】は死ぬ度にダルフの言うことを一つ聞く。
という誓約を交わしたのだ。
自信満々な聖には悪いが......その上司マジで本気出すっぽいぞ?
聖からは見えないが、俺からは口元が物凄くつり上がった魔精が見えるんだが......
まぁ.....不正行為はしないだろ。
だって、上司だしな。
汚職許しませんよ。
見つけたら.....告発するか?
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という経緯があったと......お?
ー迷宮主の部屋から???の宝物庫に接続を確認ー
ー???の宝物庫の権限の一部を停止されましたー
ー強制侵入されますー
どうやら、再びフラグッたようだ.....
体内炉から出来上がった俺の着せ替えパーツに着替えながら振り返っていたら視界と音声に【サポート・アシスタント】のメッセージが流れる。
まったく、一体なんの用なんだか.....
出現したドアに視線を送る。
しばらくして、ドアが蹴破られるかの如く、勢いに任せて開いた。
「ヤってられるかぁぁぁぁ、バカァァァーーー」
泣きながら駆け込んで来たのは、俺の上司のダルフ・レファンシアその人である。
しかし、なぁ.....面倒事か?
俺は無視を決め込むことにした。
プラカードを掲げる俺。
【そんなことより、俺の新しい外見をどう思う?】