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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第二章『迷宮の挑戦者達』
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第十一話=level:89

わぉ.......読んでくれてありがとうございます。頑張りますよ。

【ブラック・パラディン】の黒木さんを部屋から追い出した俺は、引き籠ることにワクワクが止まらないな!

待っていろ!おれの引きこもりライフゥ!!


「黒木さんは出ていくことに渋っていたけど......結局は、魔精の上司に無理矢理連れて行かれてたな.....俺には関係ないがな、はっはっはっは」


対人のストレスから解放され、テンションが上がった俺は高笑いをしていた。

しばらくすると、迷宮主の部屋との接続が切れたことで、真正面に存在した唯一の扉がうっすらと消えていった。


ー迷宮主の部屋から???の宝物庫への接続が解除ー

ー停止されていた権限が復帰しますー


つまり、完全なる密室。

一人。

いや、一箱!!

ゆったりとした時の流れを感じれそうだ.....

そう、普通の人が温泉で極楽を感じるように俺も、『引きこもること』で極楽を感じている。


「あ~、一人って最高だーーーー」


ごごごっごーーー。

部屋全体に響く揺れと音。


部屋が揺れる?.....どうやら俺は、フラグを立ててしまったようだ。

宝箱の、つまり、俺の正面には再び扉が出現していた。


ー124層に接続を確認ー

ー階層ボスは鳥獣系【ハルメシア】ー

ーパーティー重傷者20名中8名ー


......なんでこう、繋がるかな....フラグ回収早くね?

そんなことを思いつつ、愚痴を溢すが即座に切り替える。


「そういえば、素材部屋としては初めてのお客さんか.....」


あれ、なんだろう?

ドキドキするぞ。

これはもしやーーー。


「獲物が罠に嵌まるのを待つ蜘蛛の気持ちかもしれん」


まっ!『偽宝箱』ですけどね。

さて、120層くらいになると、深層域に慣れてきた辺りかな?

どんな罠で待ち構えるかな......

毒針、は避けられるか、となると、ロジック系?

でもあれってこの前、【解析】【解読】系スキルで数秒で解かれたからな.....

いや、あのときは驚愕だったね。

アラビア数字が無い世界で、アラビア数字を用いた『なんプレ』式のロックにしたら、スキル発動後10秒で答えまでたどり着いてたし.....この世界のスキルシステム優秀すぎだろ。


「どうするかな.....困った」


今現在は金銀財宝の部屋じゃなくなっているから、俺のポリシーとして『テーマ』をなるべく合わせないとなぁ.......

初見殺しとか......いや、深層まで来た連中に通じないでしょ?

となると、もう『罠という罠』はなくていいんじゃないのか?

つい、こう気になってしまう系でいくとしよう。


「あれで行こう」


決めました。

決断した俺は正面の扉に視線を向けるが、まだ入ってこないようだ。

うん?そういえば、つい最近もなんかすぐに扉が開かれることがなくなってきたな.....なんでだろう?


「それに入り口開けるときもものすごく慎重のような.....」


まるで、ボス部屋を覗くみたいに.....なんてな!

そんなことは気のせいだろう。


「おそい......」


........マジで、なにしてんの!!

こっちは準備できてるのに.....


ー124層、ボス部屋にて仲間割れが発生ー

ー生存者20名中5名ー

ー15名の死亡を感知ー


「おいおいおいおい!マジでここまで来て何してんだこの人達は!?」


なんか色々と不安になってきた俺だが、やっと扉が開いた。

入ってきた人達を見て、俺は不快感が急上昇した。

彼らを俺は『冒険者』とは言いたくない。


「へっへっへっへ、マジで?ここか?」

「ええ、間違いないですぜ」

「あ、兄貴、あの宝箱がそうじゃねーすか?」

「豪勢な宝箱.....情報通りか」


眼帯のハゲ頭の中年親父はしっかりとしたガタイに太い二の腕、手に持つのは肩幅ほどありそうな両刃の斧。

たぶんこの人がこのパーティーのボスだろう。

周りでは、宝物庫の散らばった素材を漁っている、同色のバンダナを巻いた『いかにも』な格好の男共。

どう見ても.....


「盗賊団じゃん」


大きな風呂敷にこれでもかと詰めていた下っぱ達は、この部屋を出ていく。

彼らの手に綺麗な粒子を振り撒く結晶が握られていた、あれが転移石なんだろう。


この場に残ったのは、ハゲのボスと唯一バンダナの色が違う男....副リーダーかな。


「さてと、捕れるだけ盗ったし、帰るとするか」

「ええ、そう、っすね」


そして二人揃って俺をチラチラと見てくる。

ん?なんだこいつら開けないのか?

ボスの方は直ぐに出入り口へ引き返していったが、副リーダーぽい男は諦めきれなかったようだ。

たぶん気持ち的にはちょっとだけでも.....と思ったんだろう。


「おいらの【透視】スキルで中身を.....ばぁ!!」


「あっ!触っちゃったよ.....この人」


俺に触れた男はプスプスと煙を上げながら、やっすい服と盗品ぽいナイフを残して消えてしまった。

ボスは振り返り、ため息を吐きつつ、部屋を出ていった。


俺が仕掛けたトラップは『触るな!危険!!』と書かれた紙を上蓋にペタリと張り、【電流操作】スキルを用いて作った高圧電流を上蓋だけに流しつづけるものだ。

攻略法は絶縁体を使うに限るが.....この世界にそんなものあるのか?

疑問に思う。

そして見事、俺に触ることで、最大値に設定していた高圧電流を受けてしまうのだ。


「あのボス、かなりの強さだな.....ここ深層域まで来れるなんて.....」


しかも、連携なんてテンで取れなかったんじゃないのか?

それに、ボス戦は終わったハズなのに、ボス部屋で死人が出ることは可笑しい。


「けど、そうは言っても、俺は動けん」

どうすれば......

「あ、そうだ、【サポート・アシスタント】に聞いてみれば!」

そう思い、聞きだした。


ーあの一団は『隷属の仕立て人』というブラックギルドですー

ーやることは、借金まみれ、または誘拐をして奴隷を作り売り捌くことですー

ー先程はここの宝物一つで借金が返せそうな連中を余計な情報を流さないように始末しただけのようですー

ー先程の5名が正式なギルド員ですので連れてきたメンバーを全員殺したと思いますー


「うっわぁ......この世界にもいるもんだな....ああいうやつら」


俺は、目の前で焦げ肉になった人の装備を回収すべく『ペロリんちょ』しておく。

アイテムボックスにnewと表示された情報に視線を送りつつ、考える。


前世の世界だと警察がいたが、この世界ではそんなもんは無いだろう。

あるのは実力主義の現実だけだ。

でも、まぁ.......


「俺に害がなければ問題ないし、関係ないな」


そんなことより、俺は籠りたい。

盗賊団が去ったあと、124層との接続が切れ、再び一人に、しかしーーー。


ちょっとした揺れに先程と変わらない振動音。

視界と音声案内が再び入る。


ー5層に接続を確認ー

ー階層ボスは妖精系【プリミティ・ベイビー】ー

ーパーティー重傷者30名中0名ー


「またかよ!?」


この日俺は、なぜだか知らないが10回呼び出された。

今までに、考えられない現象だ。

この迷宮に何が起こっているのだろうか......


因みに7回辺りで、宝物庫に転がる放置素材がきれいになくなり、再び、すっからかんになったため、俺の中に貯まっている品を放出する羽目になった。


「今日ヤバくね?これ」


【サポート・アシスタント】のログに表示された本日の累計はこうなった。


ー本日の侵入者は58名ですー

ー???の宝物庫にて43名を撃退しましたー

ー罠が解けたパーティーは3組ですねー


うん、俺は悪くない。

適正の罠だった筈。

あれだよ、お前ら、宝物が簡単に手に入ると思いすぎだろ?


つまり、今日は冒険者の練度が低かったからだ、という結論に達した。

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