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キューピッドはおばあちゃん

作者:

播磨玲(はりまれい)


私の夢は小さい頃から美容師になることでした。


田舎の地方に住んでいて両親そして父方の(おばあちゃん)そして2人の兄と暮らしていました。


小さい頃おもちゃの切れないハサミで


『おばあちゃんの髪の毛綺麗にする~』


とか言いながら遊んでいました。



国家試験も無事にパスして晴れて美容師に

なった私に沢山の試練が待ち受けてました。


そのなかで人見知り


これが大きな壁でした。


先輩やオーナーから怒られる毎日、

教わってもまた同じことを繰り返して失敗

する自分自身に嫌気がさしてました。


そんなときに80をも越えるおばあちゃんと

話しをしてました。


『美容師向いてないのかな…』


おばあちゃんはびっくりしてました。


「おばあちゃんの髪はもう切ってくれないの?」


寂しそうな表情で言われたときに胸にグッと

来ちゃいました。


「先生や先輩の話をよく聞きよかんね…

怒られるのは当たり前誰も最初から出来るわけ無い…

辛いときは思い切り泣きなさい(笑)」


こんな響きわたる言葉を微笑みながら言ってくれました。


その時私は大号泣

おばあちゃんに泣きついていました。

でもその後はスッキリ肩の重荷がとれたようになり現在まで美容師を続け3年目でようやく

スタイリストまでたどりつけました。


技術には正直未だに自信もてていません。



営業後毎日猛特訓していたある日


帰宅したら母から言われました。


「おばあちゃん痴呆症が混じってきてるかも」


最初は嘘だろうと思い信じれなかったのです


その前日はたまたま私が休みのため一緒に

出掛けていました。


いつも綺麗好きで家の周りを掃除して

自分の部屋ぐらい綺麗にしときなさいよ、が

口癖のおばあちゃん


ただ単に物忘れぐらいしか思って無かったのです。


身体があまりいうことを効かない

これもいつもの神経痛だと…


朝ご飯食べたばかりなのにまだ食べてないからといい食べて


服用している胃薬を2回目飲もうとしたり


こんな予兆に早くから対処しとけばよかった




翌日この日は土曜日で家族皆仕事

私が家を出るときもいつもどうりの言葉


気をつけなさいねいってらっしゃい


内心ひとりで大丈夫かなと思いながらも

行ってきますと返しました


昼過ぎ、母から電話とメールの着信で

内容をみる前にやな予感が的中しました


玲落ち着いて、おばあちゃんが倒れて今医大です。連絡ください


直ぐ掛け直しましたが繋がらずそわそわしたまま仕事を続けていました。


するとお店の電話がなり店長から私の元へと繋げて貰いました


『もしもし…?』


「玲…おばあちゃんが倒れた

たまたまおばちゃん(父の姉)が家に来てて連絡してくれて…間に合いそうになかったからドクターヘリで…」


頭が真っ白でした

あんなに元気だったじゃん、一昨日まで

一緒に出掛けていっぱい笑ってたじゃん


母の声も震えてたけどそんな訳ないとずっと思ってました。


「今すぐ…今すぐ医大に来て、お願い」


『う…うん』


スタッフには事情を話してすぐに早退させて貰いました。



ー病院にてー


急いで救命病棟へ行き家族親戚の元へ


処置中のため医師と看護士さんのみと

処置室からは出されてたみたいでした


皆が不安気に私の顔をみて私の名前を叫びました


『おばあちゃんは?』


母「おばあちゃん…家で倒れてて…」


それ以上言葉は誰も出せませんでした


私は耐えきれず少し離れたトイレに泣きながら駆け込んでいました。


その時人にぶつかったのにも気付かないくらい走ってました。


これは夢なんだ…そうだ

おばあちゃんと普通に朝も話したし


それと同時に感じる矛盾点


痴呆症?あれは予兆だったの?頭がパンクするくらい考えたけど答えはでませんでした


涙も少しおさまって病室に戻ったら

皆に囲まれてるおばあちゃん


医療器具にいっぱい繋がれベッドに横になっていました。


その時にまた大粒の涙があふれてきました


原因は脳内出血


前の日の症状も脳内出血によるものだったそうです


現状も意識不明


神経痛で動かないと思ってたのも脳内出血によるもの

回復してきても後遺症として左半身麻痺になるかもとの先生の診断がありました。


なんで?おばあちゃん元気なんだよ?

あんなに家の周りを掃いたり草抜いたり

してたじゃん…


『おばあちゃん…帰って来ますよね?』


私の突然の質問に皆が息を呑んだのが分かりました。


医師「今はなんとも…今週来週にかけて山場です」


『なんで?お医者さんじゃん…病気治すのが仕事じゃん(泣)』


私は泣き崩れてました 

本当は分かってるのに感情のまま流されてました


母「とりあえず今助かってるの玲…」


医師「最大限力をつくします、

でも医者は病気を治す神様じゃない

分かってくれるかな玲ちゃん?」


私はうなずくだけでした。


ICUの患者さんは脳に負担をかけるのが

いけないらしくて面会時間はほんの10分程度の限られた身内だけ


面会時間が終え先に皆は帰りました


おばあちゃんに会えなくてもその場を離れれない私は1人待合室にいました。


ただただ静かに涙を流し続けてました。


「…さっきの播磨さんだよね?」


救命の制服を来た若めの男性が話してきました。この人は主治医のサポートについてた


『…はい』


「その…泣かないでよ」


『…』


会話がなりたっていませんでした。


「…ちょっと歩かない?」


この男のひとは突然いいました

私に気を使ってくれてるんだろうけど

乗る気にはなれませんでした


『…今はちょっと』


こうしている間にも涙は絶え間なく流れて


「深呼吸してちょっと落ち着くから…

今の時間だったら屋上から見える夕陽が最高だよ(笑)」


『…はい』


私はただ返事を返しただけ


とりあえずその男性について行きました。

屋上にいくまではどちらとも口を開くことはありませんでした。


『あ…』


屋上について空一面に広がる夕陽

とても綺麗で思わず声をあげました。


「綺麗でしょー嫌事とかあったら必ずここにくるんだよね俺…」


『嫌なことって?』


「…患者さん助けれなかったり」


『…』


「俺らは最大限の力で患者さんを助けるけどもちろん難しい時もある、悲しいけど

そうやってまた新たな命も生まれてくるんだよね(笑)」



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