5話目 嫌悪と騎士と新依頼
すみません。投稿が約1時間遅れました。本当に申し訳ありません。
「おっはよー!!」
いつもと同じようなテンションでギルドに入った。しかし、なぜかいつもと雰囲気が違った。なんか、空気が重い。ギルドにいる人間全員が嫌悪感を隠そうとしてない。
「えっと……」
そして、それが受付に来ている女性に向けられていることが分かった。きれいな赤色の髪に胸には簡易的な鎧。顔はここからだとちららちしか見えないが、それでも美人だというのがわかるくらいの美人さんだ。
あたしはこっそりとその辺の空いていた椅子に座った。
「こりゃまた面倒な依頼だな。というか、この依頼って外部に委託しても問題ないのかい?」
「問題ない。精練会の認可も受けている」
「あれが通したのか。どうやらぎりぎりみてぇだな」
レオはかなり気さくに話している。もしかしたら、レオの知り合いなのかもしれない。そして、その女性の胸元につけられた一本角をもつ馬の描かれたマークを見て、なんでこんなに空気が悪いのかやっと分かった。
あの人、王国騎士隊の人だ。なんでか知らないけど、ギルドは国と仲が悪い。たぶん、空気が悪いのはそのせいだ。
「ちゃんと資金のほうも用意している。できればAランクの人間が望ましい」
「条件的に無理だ。今すぐ動かすとなるとせいぜい……お! おーい、シャム! ちょっとこっち来い!」
いきなりレオに呼ばれた。いきなりどうしたんだろ?
「呼んだ?」
「ああ。とりあえずこいつはすぐに動かせる」
「え?」
何の話かついていけない。
「この子は問題ないのか?」
うわっ! 近くで見たらこの人すごい! 鼻も高いし、きりっとした目。さらに胸まで大きい。とてつもない美人さんだ。
「ああ。実力的にはぎりぎりだろうが、性格は問題なし。男だがAランクとも組んでる」
「なるほど。もう1人ぐらいどうにかならないか?」
なんか声もきりっとしてる。真面目そうな人だ。
「Bランクで性格に難があるやつなら呼べなくもないが……とりあえずはこんなところか」
「わかった。では、依頼をお願いしたい」
「あいよ。ここにサインを頼む」
女性はさらさらとサインを書いた。
「依頼金についてはこれで問題ないな」
……なんかすごい量のお金を見たような気がする。
「問題なし。じゃあ、依頼は受諾した」
「よろしく頼む」
女性はこちらにも深々と礼をすると、きれいな姿勢で歩いて出て行った。
「相も変わらずがっちがちの頭してるみたいだな」
「ん? どうしたの?」
あたしがレオにさっきの人のことを聞こうとしたら、ソラくんが不思議そうに入ってきた。さっき出て行ったばかりだから空気が重いままだったせいで変に思ったらしい。
「さっき王国騎士隊の人が来てたの」
「あぁ」
ソラくんはすぐに納得した。
「いったい何で?」
「ちょうどいい。お前らに依頼だ。護衛の依頼な」
そう言ってレオが紙を差し出してきた。そこに書かれていたのは……
「王国騎士隊と合同で護衛?」
内容はここより北にある都市、テクノロイからミスレイアまでの護衛になってる。しかも、王国騎士隊と一緒に。
「何かの間違いじゃないの?」
ソラくんもあまりに不自然な依頼にレオに確認をとった。
「間違いじゃねぇよ」
「でも、王国騎士隊からギルドになんて……」
「不自然極まりないが、あっちも何か事情があってやむなくこっちに依頼してきたんだろ。だが、依頼料は少し割高にもらってる。ほかの依頼よりは割はいいと思うぜ」
正直言って、適正ランクの高い依頼はもともとの依頼料が高すぎてあたしには全部割の良く聞こえる。
「……たしかに」
「受けるか」
「いい?」
ソラくんはあたしに聞いてきた。
「あたしはいいよ」
王国騎士隊と積極的にかかわりたいとは思わないけど、これくらいならあたしはあまり気にしない。
「じゃあ受ける」
「OKだ。依頼開始は明日の明朝だ。今日中にテクノロイに入ってもらう」
「わかった」
「OK!」
あたしとソラくんは頷いた。
「よし。じゃあ、もう1人だが……」
ソラくんは後ろにある電話機をとりだした。
「……あー、ハローハロー。俺っちだ。……いや、ここにかける奴なんてほとんどいないだろ。……まったく。それでだが、ヴィーのやつはいるか? そっちに行ってるはずだろ。……ナイスタイミングで入ってきた? ちょうどいいや。伝えておいてほしいって、なんでかわろうとしてる? ……あー、俺っちだ。……いや、それについてはすまないと思ってる。……お前に頼みたい依頼があってな。結構割のいい仕事なんだがどうだ? ……いや、お前の割のいいってそれか? ……いや、もうちょっと譲歩してくれてら……わかったよ! それでいいよ! ……まったく、うれしそうにしやがって。とりあえず、依頼はそこであるから今日はそっちで待機しといてくれ。じゃあな」
なんか、電話を終えたレオはいつもより疲れている感じだった。
「……とりあえず話はついたから、お前らはテクノロイのギルド出張所を訪ねてくれ。たぶんシャムはわからないだろうが、ソラはわかるな?」
「大丈夫」
「そんじゃ、頼んだ」
こうして、あたしたちはテクノロイへ護衛のために向かうことになった。
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(昨晩のレオとソラの会話)
「で、俺っちは帰れと言ったはずだが」
シャムは普通に帰ったが、ソラのやつはなぜか帰らなかった。正直、あくびが止まらない。
「レオ、なんでシャムはあんなにうれしそうなの?」
「あ?」
あくびの途中にこたえたから変な返しになった。
「自分の力が気だってわかっただけで、なんであんなにうれしそうなの? 結局、自分が大きな力を持っていることに変わりないのに」
「ああ。そのことか」
考えてみれば、おかしな感じにも聞こえるか。
「あいつは自分に大きな力があることなんて気にしてねぇよ。あいつが唯一気にしてる点は、自分が他人と全く違うものなんじゃないかということだけだよ」
「違う?」
「そうだ。あいつは自分の力がほかの人間にもある力だってことがうれしかったんだよ」
「でも……」
ソラの言おうとしたことが、俺っちにもわかった。
「ああ。表裏合わせて、多くの技術がある今においてあいつ程度なら珍しくない。探せばいくらでも見つかるだろうな。でもな、あいつはそんなのに会ったことがなかった。だから、自分は他人と違うのが怖くて隠してたわけだ」
「どうして他人と違うのがいやなの?」
「あいつは1人が怖いだけさ。自分1人だけがってのが嫌いなだけ。だから自分は1人じゃないって意識できるように護衛の仕事ばかり受けてったってわけだ」
「……よくわからない」
「安心しな。俺っちにもよくわからねぇよ」
ソラはそれだけ聞けると満足して帰って行った。さて、やっと寝れるってわけだ。
俺っちは扉を閉めて、部屋の電気を消した。
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