2 カザリ
更新大変遅れました
もうやりたくないと、考えた時期もありましたが、続けます
私自身、この小説を書くのが楽しいので、書かせてもらいます
今後とも、よろしくおねがいします
「…………」
背の高い少し怖めの少年こと影無 歪人は、最近悩みがある。それはストーカー現象。どこからか、視線をずっと感じるのだ。
「…………」
まぁいつもあることなのだろうが、彼にとっては珍しく苦しんでいた。いや、まぁ誰だって苦しいだろうけど。
(スターが変装する気持ちが分かるぜ。こんなのただの生き地獄だ)
実際は目立ちたくないから変装をしているのだが、彼にとっては問題外。とりあえず、苦しいかった。
(学園まで来るつもりか?)
だが、来そうな勢いで視線は強くなる。歪人はいよいよ限界に達して学園の教室へと走ったのだった。
放課後。彼はいつも通り、通学路を真っ直ぐに逆に歩いていた。帰宅中であった。
しかし、彼は感じていた。違和感を。視線を。
(……まだいるのか?)
学園に入ったら視線を感じなくなった。果たして相手が学園関係者か否かは判らなかったが、言えることは、
(早く家に帰りてー)
であった。
そんな彼に、一通のメールが。
(イーニッドか)
彼に依頼を与える、彼からしてみれば、平和を壊す相手だった。しかし、彼にとっては一刻も早くこの視線から逃れたかったので、ある意味救いの手だった。
文面は、女子の割にデコレートなどされておらず、ただシンプルに文字だけが表示されている。
(内容は……)
歪人はそのメールをスライドしながら見ていく。
(“最近、視線を感じると思うけど、そいつは憑き物。中々上等。完成まで残り数パーセント。君ならやれる。頼む”か)
彼は一度ため息をつき、そして走りだした。それも、彼の出せるだけの速度だ。
(ついて来いよ。ここじゃ、殺れないからな)
彼の能力、空間創成術は発動するには条件として発動範囲に有機物がないことが求められる。拒絶刀のように空間から出すだけなら範囲が小さいのでいいのだが、しかし彼は戦闘スタイルとして、相手を確実に捕らえてから潰すことを得意とする。確実に仕留めてから拒絶刀の使用をするのが彼のマイルールだ。しかし、ここでは場所が悪いと判断したのだ。
走る。走る。彼は一瞬後ろを振り向く。大丈夫、さっきから感じていた視線は今だに健在だ。
(どんなやつかは知らねぇが、被害を増やされると、こちらは困んだよ)
彼は舌打ちをしながら、人がいない場所を求めて走り続けた。
「はぁ……はぁ……」
歪人は息を切らしながら、人気のない公園のベンチに座った。汗が額から頬に垂れる。
(様子見だ……)
「出てこいよ。ここなら相手してやる」
すると、彼の座るベンチの後ろからガサガサと、草むらから物音がした。彼は素早くベンチから飛び降りた。
「後ろからは卑怯だぞ……」
歪人はダルく呟きながら、襲ってきたその敵を見た。そして、絶句した。
「おいおい……。こんなの初耳だぞ……」
その敵は、およそ歪人とほぼ同年代の姿をしていた。と、判断できるのは、その姿が異形ではないからだ。
憑き物という存在は、身体と同化するほどその姿は異形の姿となっていく。だが、目の前にいる敵は完全に同年代の少女だったのだ。
イーニッドのミスを、歪人は一瞬考えたが、あいつがミスをことはない、と勝手に言い聞かせた。なんせ、彼女の情報は寒気がするほど合っているからだ。
「……お前、誰だ?」
歪人はとりあえず、人間と仮定して話しかけた。
その少女は、優しく微笑んだ。
「アタシの名前はどうでもいいじゃないですか。アタシ、あなたに会いたかったのです」
そう言うと、歪人の懐まで近づいてきた。歪人は一瞬、空間創生術で何かを創り、刺そうかと考えたが、万が一人間なら致命傷になりかねないので、創るのを止めた。
「もう一度聞く。お前はだ――」
「死ね」
そして、唐突もなく刺された。歪人は苦痛で歪んだ表情をする。少女の手には、白く輝く包丁が握られていた。その刃は歪人の腹に刺さっている。
少女は先ほどまでとはうって変わり、酷く歪んだ笑みを浮かべた。
「おい、男。超絶驚いたろー? まさか、普通の女にいきなり刺されるなんてよー?」
その口調は高校生辺りの少女には似つかわしい、男口調だった。いや、男というよりも人間以上の存在が見下しているような言い方だった。
「お…前は……」
歪人は無理やり出した擦れた声で詮索する。かろうじて出せている声で、少しでも情報を得ようとしているのだ。少しでも情報を得れば、イーニッドが対策を作ることが出来る。
「オレか? オレは人型の憑き物だよ」
それを聞き、歪人は一瞬表情に驚きの感情を見せたがすぐに冷静な表情を見せた。虚勢である。
だが、驚くのも無理はなかった。通常、憑き物という存在は動物や人工物の姿をしているものだ。それは、人間が無意識下のうちに作り上げたものだからだ。人間が無意識のうちに想像し、創造した物。そして、何より自我に程近い本能を持っている。人に憑き、現実世界に干渉するという本能。それが憑き物である。
しかし、間違ってもいない。人が生み出したなら人間も可能である。
「ま、オレはむしろ服なんだがな。ほぼどーかしちまったから、こーいうげーとーもできる」
「……」
「で、だ。なんでお前は死なねーのかなー?」
その瞬間、少女はいきおいよく後方にぶっ飛ばされた。何の前触れもなかった。ただし、現実で見れるものだけが全てではない。
「遅れたが、空間拒絶。拒絶刀……」
その手には黒い刀、拒絶刀が握られていた。
歪人は先程までの擦れた声とは違い、はっきりと敵を見つめながら種を明かしていく。
「まず、空間と空間でお前のその凶器を挟んだ。空間は俺にしか見えないし、尚且つ物質的圧力ではない別の重圧によって止めることができる。そして、あえてやられたように見せ、情報を得た」
歪人は、拒絶刀を空間に溶かすように消しながら説明をする。敵は砂埃で口に砂利が入ったのか、ペッペッと、つばを吐きながら砂利を口から出す。
「あとは、拒絶刀を刃の前に出現させるだけだ。拒絶刀は、俺と空間は拒絶しないからな」
そう歪人が言い終えた瞬間、敵である少女が再び近づいてきた。しかも、今度は尋常じゃないスピードである。
「空間創成術、『大盾』!」
しかし、歪人が創りだした大きな盾に弾き飛ばされる。
「ぐぅ……」
敵である少女は、先程までの余裕を失っていた。対して歪人は、創り上げた『大盾』を消す。形勢逆転だった。あくまで表面上だが。
(問題はやつが真の姿を出すかどうかだ)
歪人の勝利条件は、彼女に憑いている憑き物を追い出すことだ。それ以外の勝利条件はない。
そして、時間は少ない。
歪人は、拷問器具でも創り上げ、拷問するのも手か、と悲劇的なことを考えたがすぐに思考から取り除く。あくまで罪なき少女の身体だ。そんなことはできない。
「やっぱー……本気出したほーがいーよなー? そっちのほーが……フェアだろ?」
敵がそう呟いた瞬間、少女の姿が変わる。いや、服装が変わる。制服だったその姿が光に包まれ、光が消えた瞬間そこには露出が少しされているピンク色のフリフリが特徴の服に変わっていた。真っ直ぐ綺麗に垂れていた茶色い長髪も、一瞬のうちにピンク色に変色しツインテールの形にされる。下半身も上半身と同様に、ピンク色のフリフリが特徴的なスカートに変わった。
そしつ最後に歪人に対してウィンクをし、
「悪い物は赦さない! せーぎの味方、ココノハ! ここにさんじょー☆」
と、決めポーズを決めながら言った。
歪人はしばらくの間、放心状態になっていたが、我に返った瞬間辺りを見渡した。
(……誰も見てないな。誰も見てないな!?)
珍しく、彼は動揺していた。それを見てしまった恥ずかしさもあるが、それをやらされた少女の方が酷いことを悟り、敵ながら心配をしてしまった。
運よく、辺りに人はいなかった。
「……お前のことを今からコスプレと呼ぶ」
歪人は、冷たい視線を送りながらそう呟いた。
すると少女は、口を尖んがらせながら、黄色い声で言う。
「ココノハと呼べ☆」
「嫌だ!」
歪人はそんなことを言う敵を見ずに叫ぶように言った。
「コスプレ……早めにお前を殺る。その子の世間体のために!」
「お前……そんなキャラだっけか?」
流石の敵も少し呆れていた。
歪人は一度大きく溜息をつき、そして、
「空間拒絶っ! 拒絶刀……」
彼は空間から拒絶刀を取り出した。
「しょーがねーなー。こちとら、どーかしちまいたいからな」
そう言い終えた瞬間、少女は動いた。
歪人はすぐさま拒絶刀を前方に構えた。が、
「遅いっ!!」
前方に見えていた少女が一瞬のうちに後ろに行き、歪人の背中を思い切り蹴った。
高校一年生にしては大きめの歪人が、軽々とぶっ飛ばされた。
歪人は驚きながらも、受け身をとり次の攻撃に備える。が、
「うーえ☆」
今度は上から歪人は踏まれた。
「ぐっ……」
しかし、歪人は拒絶刀を足元の地面に刺そうとする。
そして、拒絶刀の効果で少女ごと空へ飛んだ。
「空間創成術、『障壁』!」
少女が怯んだ隙に、歪人は、自分を守るように障壁を球体状に張った。
少女はその効果で飛ばされた。
そしてお互いに、地についた。
「肉体の潜在能力を解放するタイプか」
「理解は早いらしーなー」
一瞬の会話が途切れた瞬間、再び激突する。今度は少女が飛ばされた。
「チィッ!」
少女は忌ま忌ましく舌打ちをする。が、歪人はあえてそれ以上に攻めなかった。
「一応、聞きたい」
「あん?」
「もし完全に同化してしまったらどうなる?」
沈黙が生まれた。が、すぐに破られた。
「この肉体のしゅどーけんはオレが握ることになる」
「そうか」
歪人は短く返答し、素早く動いた。が、少女は瞬間的に後ろに現れる。
「おせー。おせーよ。おせーんだ――」
「空間創成術、『盾』」
歪人が少女の言葉を遮るように出した声とともに、背中から西洋風の盾が現れた。少女の一撃は防がれてしまった。
「これで、防御は完璧だ」
歪人は余裕な表情で言った。
少女は再び舌打ちをする。
「だが、それで終わったと思うなー!!」
少女は吠える。意味もなく吠える。
歪人は冷静に拒絶刀を構えた。
「服、だったな。本体を狙えば、同化率90何パーセントでもやれる……はずだ」
そう言い終えた瞬間、歪人は動いた。拒絶刀を横に構え、迅速に少女に近づく。
勿論、少女はその場から立ち去ろうとした。が、
「ぢっ……」
その周りに、大量の柱が建ち、少女の行く手を阻む。
「空間創世術、『柱』。大量祭りだ」
歪人は近づきながらそう呟く。
少女は何度も逃げようと柱から抜け出そうとするが、そこへ再び柱が現れて、逃げることが出来ない。袋のねずみである。
「終わらせる……」
歪人は速度を一瞬落とし――――た瞬間、次の一歩で大きく跳躍した。そして、拒絶刀を両手で握り、振りかぶるような態勢になった。
「拒絶玄鎖!!」
歪人はそのまま重力に従い、少女を縦から切り裂いた。
拒絶刀が拒絶できるのはあくまで物質だけであり、精神状態が肉体に纏わり憑いている状態なら、肉体を拒絶せず切り裂くことは可能である。
「……キヒッ」
だが、少女は前方へ吹き飛ばされていった。そして、泥まみれになりながらも歪んだ笑みを浮かべる。
「ゲームオーバー。タイムリミット。しゅうりょー!」
そして、弾んだような声を上げた。
歪人は驚愕したように目を見開いた。
「残念でしたー☆ 間に合わなかったねー☆ キヒッ」
拒絶刀で斬られて消えない。それ即ち、完全同化……完了。
そんな、簡単なことすら、歪人には理解するのに時間を要した。
「…………」
歪人はしばらく黙ったのちに、拒絶刀を溶かすように消した。
「諦めたか?」
「…………」
しかしその瞬間、歪人はいきなり少女に近づき、組み伏せた。そして、少女を押し倒すような態勢になる。
そして無言のまま、瞬間的に大きな剣を創りだし、少女の首元に近づける。
「……マジかよ」
少女はそうつぶやいた。その言葉は諦めが篭っていた。
なぜならその時、歪人の目には――――
「……クソッ!」
歪人は悪態をついた。剣を消し、少女の真横の土を力強く何度も叩く。
少女は何が起こっているか解らない様で、歪人と真横で振り下ろされる拳を交互に見てた。
「……スマン」
歪人は落ち着いたようで、謝罪の言葉を言ってから少女からのいた。それでも、少女は唖然としていた。
「コスプレ。理由は聞きたいかは知らんが、これについてはできらば追求してほしくない。言ったら、さっきみたいに抑えられるか自信がないからな」
それはある意味、脅迫でもあった。しかし、少女はそれを聞き、少し震えながらも口を開けた。
「じゃー、オレはどーすればいー?」
「簡単だ。その子を開放しろ」
歪人の言葉に少女は首を振った。
「完全にどーかしちまったんだ。かいほーはできねーよ」
「じゃあ、殺るしかないか」
「え、ちょっ」
少女が慌てふためく中、歪人は剣を創りだした。
「解った。よーく解ったから、その剣を消せ! 今すぐ消せ!!」
そう少女が言うと、歪人は黙ったまま剣を消した。
少女は臨戦態勢がとれるようにしながら、落ち着いて話し始める。
「どーかはしちまったが、こいつの人格が消えたわけではねー。ばーいによれば、この身体本来の人格を映し出すこともかのーだ」
「…………」
黙って聞く歪人を見て安堵しながらも、少女は話を続ける。
「まー、癪だが。諦めてこいつの人格にしゅどーけんを握らせてもいー。オレの目的は、現実世界にかんしょーすることだからな」
「……それでいいのか?」
歪人は怪訝になって目を細めたが、少女はあぁ、と言った。
歪人はそれでも少し不安になり、冷静に落ち着いて声を発する。
「悪いがコスプレ。俺はお前を信じることが出来ない」
「その点、オレにいー手がある」
少女の言葉に、歪人はまた目を細めた。しかし、彼の予想と外れた提案を、彼女は言ってきた。
「こいつと関わりもっちまえよ。監視含めでな」
少女は自分の身体を指しながら笑顔で言った。
今回の丸秘話ー
今回登場のコスプレこと、新しい憑き物は、当時(一年前)からずっと出したかったキャラクターでした
予定では猫だったんですが、いやー、猫物語と被っちゃうんで変更しました。
まぁ、憑き物な時点で大体ヤバいんですが(笑)
さて次回は……早めに更新したいです
では、よろしくでーす




