プロローグ キョゼツ
「イーニッド。あいつは」
『言ワナクテモ、分カリマスヨネ。憑キ物デス。ドウシマス?』
少し背が高めで灰色の制服を着た少年は、携帯電話でそんな話をしていた。
冷静な口調で話をしているが、彼の目の前には、人間と似ている存在が立っていた。
そう、ケータイの相手が言った、憑き物という存在だ。
『イヤホンニ変エテクダサイネ。戦イガ始マリマスヨ?』
不器用な日本語を操るロリ声は、なんともまぁ物騒な一言を放つ。
少年はため息をつきながら、ケータイにイヤホンをつける。
「変な説教はなしな」
『ドウカナ~?』
「帰ったら殴るぞ」
『ソノ時ハ、協力シナイモ~ン』
少年はそれを聞き、悪態をつく。
『サァ、来ルヨ~』
見えるわけないのに、なぜかそれと共に人間ではない存在が動く。
ありえない行動、いや、この時代ではさほどおかしくない能力を使用する。
手から放たれた水が、少年を襲う。
「なめんなよ!」
少年は低く腰を落とし、ソノ攻撃を綺麗にかわす。
イヤホンから、ロリ声が聞こえてくる。
『相手ハ蟹型ダネ~。マダ同調率ハ十パーセントダケド』
「チッ……。何分かかる?」
『強イテ五分ダヨ~』
能天気なロリ声は、どこからか得た情報を流す。
少年はあいも変わらず、攻撃を避けていく。
敵はその行動に合わせ、能力を放つ。
「チッ…!!」
かわしている所に攻撃が放たれた瞬間、少年は悪態をつきながらかわさずに構える。
「空間創生術、大盾!!」
そう言った瞬間、彼の目の前に大きな西洋風の盾が現れ、攻撃を遮断した。
しかし、攻撃を遮断したあとは跡形もなく消えた。
「チッ……、ただでさえ能力の使用はさけてるのに、何故こう運命は使うように持って行くんだ?」
『サァネ~』
ロリ声は能天気に答える。
少年は再び避けに専念するが、相手はパターンを覚えたか、攻撃のバリエーションが増える。
「おい!! 何分だ?!」
『アト、二十秒だよ~』
そんな会話とはいえない会話をしつつ、少年は相手の攻撃を避ける。
敵はそんな少年を笑うかのように攻撃を速くしていく。
『五十パーセント突破!! チャンスダヨ~』
「そうか……。じゃあ!!」
少年は避けるのをやめ、構えもとらずに立つ。
不審に思ったのか、敵も行動を止めた。
そして、その存在は人間の姿ではなくなり、蟹に近い形に変形した。
それを見た少年は、不気味なほどに冷淡な言葉を放つ。
「こっからが……本番だぞ?!!」
そう言い終えた瞬間、少年は一気に敵の懐に踏み込む。
ワンテンポ遅れた敵は、少年の拳で殴られ吹っ飛ばされた。
が、少年は次の攻撃を止めた。
「ダメージが…ねぇな」
およそ人間ではなくなった姿を殴りつけた少年だが、相手は痛みすらない感じで立ち上がる。例えるならゾンビだ。
『蟹ノ甲羅ハ硬イヨ~。ソンナノモ分カラナイノ?』
ロリ声はそうつぶやくが、少年は何も言わずに敵を睨む。
そして、
「こいつ……、殺っていいか?」
そうロリ声に冷たく放つ。ロリ声はそれにOKを出した。
蟹に近い人間が立ち上がり構える。だが、少年はお構い無しに目を閉じ、意識を集中させる。
その顔には、うっすらと笑いがあった。
「空間、拒絶!!!!」
そう言った瞬間、彼の周りの音はなくなった。
逆に、殺気が敵を囲む。
声を出せない敵は、無言で突っ走ってきた。人間ならわかる、恐怖の感情での行動だった。
「拒絶刀……」
彼はそんな敵を見ながら、手に刀を持った。
その刀は全く持って綺麗な刃があり、柄は黒に埋め尽くされている。
少年は、こうつぶやいた。
「これは全てを拒絶する刀……。空気や水、光も闇すら拒絶する刀だ。だが、この世にも拒絶できないものがあってよ……。だから俺は、これでてめぇを斬る!!!」
敵はそんなの関係無しに少年にタックルを当てようとする。が、少年はそれを嘲笑うかのように一刀両断した。
そして、小さくこうつぶやく。
「つっても、理解できる脳ではないよな、怪物」
どちらにも該当しそうな一言を、その少年は放った。
今回の小説はどうでしたか?
あれ? いつもの前&後書きは?
という疑問がくるでしょうが、それに関しては次回からはじめます。
プロローグだしね。