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――ソラ――
「君の髪も瞳も、君と合っていて奇麗だと思うよ」
僕、こう言ったこと、上手く言葉に出来ないんだけどね、と恥ずかしそうにソラは言う。
私と合っていて? 私なんて、……私なんて。
「……そう」
これだけ返すのが精一杯だった。
本当に私はどうしたんだろう、今日は何だかおかしい。いきなり『ソラ』なんて名乗る人が出てきたし、私は何だか安心しているような感じだし、挙句の果てには普通に話をしているし。
「そう言えば」
混乱している私のことなど露知らず、ソラが私の方を向いて言う。何だか楽しそうだ。
「君のことは何て呼べば良いのかな?」
そうだ、名乗ってないんだっけ。どうしよう、ソラなんて絶対偽名だもんね。
あだ名をつける時みたい。少しわくわくしながら、顎に手を当てて考える時間を取る。それからゆっくりと、焦らすように口を開く。
「じゃあ、時雨。時雨って呼んで」
時雨。それは、私が一番好きな雨。