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作文
穴があったら入りたいって言うか、記憶から抹消してしまいたいと言うか……、とりあえず両手で顔を覆うことにした。
「面白い文章だよね。癖がないけれど、それが癖って言うか、目立ちたくないんでしょ?」
顔を覆っても聞こえてくるものは聞こえてくる。最悪だ。続けてもっと最悪なことは、それが正解だってこと。全て、ね。
「何を書いていいか分からないからとりあえず無難な風にしておく。まさか……」
最後の方はぼそぼそと独り言のようで聞き取れなかった。「何か言った?」と聞いてみるけれど、「何でもない」で終わり。終わらせたいのならそれでも良いけれどさ。
「授業参観で作文の発表があるの」
「へえ、それで下書きか。偉いな」
そこで話を切る。私はふう、と息をつき、ソラは勉強机近くの椅子に座り、俯いて何かを考えているよう。
開いたカーテンから入る昼の陽を反射するような、艶のある銀色の髪が視界に入って、私も考え事をしてしまう。銀色って光で何色にも染まるじゃない、羨ましいよ。私の髪と瞳はこんなに汚い水色なのに。
空のような空色には、もう、染まらないのに。