――ソラ――
「僕かい?」
楽しそうに笑う人物。一人称と声から男性だと思うけれど。
「あなたしかいない。もう一度聞く、誰」
私は――ポケットからあるものを取り出す。すると暗くて見えないけれど、彼の表情が変わったよう。
……ばーか。心の中でほくそ笑んでみる。
だけれど、彼の表情はすぐに戻ってしまって。勘付かれたか。
「それ、偽物だよね」
生ぬるい風が頬を撫でる。
「あなたは誰」
三度目。さて、これで三度目の正直とでもなってくれると嬉しいのだけれど。そろそろ部屋の電気もつけたいよ、星を見る気が削がれてしまったもの。
「僕は――そうだな、『ソラ』とでも呼んで」
このくらいで我慢してあげましょう。私は銃を持つ右手をひゅいっと振り上げて、くいっと振り下ろした。
「あっ……」
あらー、当たっちゃった。銃――いわゆるモデルガン――は庭の茂みにがさがさと突っ込んで行ってしまったけれど、それは置いといて。
いらつきは収まった。
だけど、この『ソラ』と名乗る人はどうしようか。こちらをジト目で見てくるけれど、私謝らないよ。勝手に入って来たのはそっちだから、通報しないだけ良いと思いなさい。