彼女は
「別に弱くいたって平気なんだよ?」
誰も気にしちゃいないんだから。
ソラが暗い顔でぼそっと呟いた一言は、誰に向けたものだったのだろう。私か、自分か、お互いか。
私はそれを気にすることはせず、先の言葉を掘るように言葉を紡いでみる。
「じゃあ、ソラもだよ」
私と同類、それはつまり、何かが有るってこと。
例えば――
「自分の心にも届かない」
私に近づきながら、ソラは呆れたように言う。少し俯いていて、表情が今一つ分からないのが嫌。
それに、今の言葉も嫌だ。ソラらしくない。
「時雨もあんまり考えすぎない方が良いですよ」
――違う。「ソラ」じゃない。
ぐるぐると廻る違和感と嫌悪感。
「……二重人格? 笑える」
沈黙で空気が重くなるけれど、それを払拭するために強気の行動に出ることにする。
「彼」を鼻で笑うことにした。
それから、「彼」に座るようにと近くの椅子を示す。
「別に笑うことにはなりません、二重人格じゃないですし」
「じゃあ何?」
間髪いれずに疑問をぶつける。
そんな私を、愛おしむように見つめる「彼」。それをベールにして、悟られないようにちらちらと銀色の瞳の奥から覗けるのは、淋しさ、寂しさ?