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彼女は
じゃあさ、なあに?
「幸せって、なあに?」
それを聞くと、ソラは哀しそうな顔をして、すぐに微笑む。何が哀しいの? 幸せって何? ただの疑問だよ、答えられないの?
「幸せって言うのはさ、人それぞれ違うものだから」
逃げるの?
そんな私の感情を感じとったのか、ソラは付け加える。
「人間に正解なんてないんだよ。時雨が幸せって感じればそれは幸せに成る」
そうなのかな? うん、そうだよね。
自分を落ち着かせて溜息。少しずつ変わっているけど、ほとんど変わらない空に目線をやる。そのほとんど変わらない感じが、私に安心をもたらしてくれるような。
「ごめん、変なこと言って」
何でこんなこと言っちゃうんだろうね。
「謝ることないよ。時雨も辛かったんだし」
だから、さ。
「……何で分かるの……?」
ソラに聞こえるはずもない小さな声で呟いて、目に溜まってきた変な水を拭う。なんだっけ、この水。操ることが出来ない唯一の水、って授業で聞いた覚えがあるんだけれど。